第10話 長く熱くキス
扉の向こう側から物音がした。
それでも、俺と星奈さんはキスを止めなかった。
気づけば、六限の予鈴が鳴っていた。
今の俺の口の中の唾液はきっと星奈さんのものでいっぱいだろう。
「……やりすぎちゃいましたね」
ニコリと微笑みながらそう言う星奈さん。
そんな一言では片付けられないほどに俺たちはキスをしてしまった。
でも、星奈さんが喜んでくれればそれでいい。
「ですね、今日は七限がないから……もうショート
ルームが始まっちゃいますね」
星奈さんは自身の唇を人差し指で触りながら。
「……ショータロー、放課後までキスしよ?」
結局、俺たちは放課後の予鈴が鳴っても熱くキスをし続けた。
やめたのは放課後になってから一時間ほど時間が経過してからだった。
星奈さんとのキスはざっと二時間弱していた、ただ体感では一分にも満たなく感じた。
当然、下腹部も興奮していたわけだが、ヤることはなかった。
本能より罪悪感が勝ったのだ。
教室には一緒に帰った。
さすがにテストも近くないため一時間も経てばみな、部活やら帰宅で人がいなかった。
「今度はここの教室の掃除ロッカーで授業をサボってキスし続けたいですね」
掃除ロッカーを指しながらそう言う星奈さん。
「……ですね」
星奈さんが喜ぶなら、罪滅ぼしのためになら、俺は何でもする。
「もっとショータローとキスがしたいです、でも……今日はこのくらいにします」
俺は自分の席の横にかけられているスクールバッグを手に取る。
星奈さんもまた、自分の席にかけられているスクールバッグを手に取った。
「キスだけで幸せで死にそうになるなら、子作りをしたら私、身体ごと消滅しちゃう自信があります」
自身の身体を抱きしめながらそう言う星奈さん。
「人もいませんし一緒に帰りましょう」
「お、おう……」
○
「キスって不思議ですよね……」
「?」
帰り道、俺と星奈さんは並列で歩く。
途中途中、人とすれ違うたびにみんな星奈さんを見てその美貌に驚く。
俺たちはカップルに見られているのだろうか……。
きっと、男の方しょぼくない? 、とかいうお決まりのパターンだろうけど。
「キスは時間を忘れさせてくれるんです……。二時間弱が一分にも満たなく感じちゃいました」
えへへ、とニヤけながらこちらを見る星奈さん。
「ショータローはどうでしたか?」
「俺も……一瞬だった」
俺に口の中を見せて。
「きっと、今の私の唾液は全部ショータローの唾液な気がします」
「俺も口の中が星奈さんの唾液でいっぱいだ」
「私の中もショータローでいっぱいにしてほしいです♡」
「それは……まだ先かな」
俺の右腕に抱きつく星奈さん。
「はい! 絶対お願いしますよ? ……その、右手の傷、ごめんなさい……痛かったですよね? 我に返ってみると大切な人の身体を傷つけた私が許せないです……」
「いや、俺の方こそごめん。星奈さんを傷つけるようなことをしちゃって……身体の傷より心の傷の方が治りにくいし、こんなのへっちゃらだよ。それより、星奈さんが心配だ」
「キスで完全回復です、お釣りが出るくらいですよ。今日のことはなかったことにしましょう」
「ありがとう」
よかった、本当によかった。
星奈さんの傷が治ってよかった。
家に着き、スマホの電源をつけるとラインの通知が来ていた。
西園寺さんからだ。
多分、クラスのグループから追加したのだろう。
『柚木くん、いきなり追加しちゃってごめん。突然だけど明日、放課後に屋上に来てもらってもいいかな? 話したいことがあるの』
……?
一体なんだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます