第9話 口移し
少し、気持ち悪い回になっている可能性があります。ご了承ください。
───────────────────────
保健室で包帯とガーゼだけ星奈さんにもらってきてもらい、俺は右手に巻いた。
キンコンカンコンと次の授業が始まる予鈴が鳴る。
五限の屋上にいるのは俺と星奈さんだけだ。
初めて授業というものをサボった。
罪悪感は自然となかった。
「私は静香に調子が悪いから保健室にいると伝えてきましたが……ショータローはただのサボりになってしまいますが、いいんですか?」
「ああ、俺、友達いないし……頼れるのは星奈さんだけだから」
もう、俺は星奈さんを傷つけない。
俺は作り笑顔で。
「どうせ俺なんて教室にいなくても誰も気づくことないですし」
お弁当箱を開く。
「そういえば、星奈さんはお弁当ないんですか?」
教室にあると思っていたが、星奈さんの手にはお弁当がない。
「ああ〜、私、いつも購買で買ってるんです」
なるほど、そういうことか。
「じゃあ、一緒に食べましょ」
お箸を手に掴み、卵焼きを半分に切り口に入れる。
そして、少し噛んだところで星奈さんは目を瞑り。
「……きてください」
その合図で俺は星奈さんの唇に唇をくっつけ、星奈さんの口の中に噛んだ卵焼きを舌で押し出して入れた。
唇を離す。
星奈さんは噛まずにゴクリと飲み込んで。
「甘くて美味しいです……♡」
虚な目が治っていく、そんな気がした。
「それならよかった」
「次は私がしますね……」
ゴクリと唾を呑み込んだ。
星奈さんにお箸を渡すと、残り半分の卵焼きを口に入れて噛む。
目を瞑った。
すると、唇に柔らかい感触──星奈さんの唇の感触がする。
口の中にぬるっとした物体と柔らかく湿った物体が入ってきた。
星奈さんの舌と噛んで柔らかく粉々になった卵焼きだ。
卵焼きを残し、舌が離れていく。
ゴクリと卵焼きを飲み込んだ。
目を開けると、星奈さんの目がさらに少し虚ではなくなっていた。
気のせい……、いや、そんなはずない。
それから、俺と星奈さんは交互にお弁当の中身を口に入れて噛み砕いてお互いの口に移し続けた。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
口移しするたびにどんどんと星奈さんの目に色がついていく。
星奈さんの口移しされたお弁当は不思議といつもより美味しかった。
お弁当箱の中身が空になったのは五限終了の予鈴と同時だった。
「はあはあ……♡。ショータロー、このまま子作りがしたいです♡」
「ごめん、それは……」
俺への罰はこんなことで消えるものではない。
ダメだ、絶対に。
「なら、ゴムありなら……どうですか?」
上目遣いで俺を見る星奈さん。
「それも、まだ……そ、それより教室に戻らなきゃ……」
「それもそうですね……じゃあ、最後にキスだけ……♡」
俺を押し倒す星奈さん。
俺の上に跨いで、顔を近づけた。
唇に星奈さんの唇が当たる。
舌が中に入ってくる。
俺たちは熱くキスをした。
星奈さんの幸せは俺の幸せだ。
星奈さんの不幸は俺の不幸だ。
「いつか絶対、子作りしましょうね♡」
「………………うん」
○
「失礼しました」
保健室にいない……香澄、サボったな〜。
おかしい、香澄が授業をサボるなんて。
色々と回った。
屋上の入り口に来て、扉のガラス部分から屋上を除いた。
「え……」
そこには香澄も柚木くんが倒れ込み、ディープキスをしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます