第8話 イタミノワカチアイ

 指定された空き教室にやってきた。

 外は天気予報が外れ、雨が降っていた。

 多分、一緒にご飯を食べよう、みたいなものだろうから手にはお弁当を持っている。


 中に入ると、誰もいなかった。

 どうやらまだ、星奈さんは来ていないらしい。


 俺は一番前の窓際の席に座り、星奈さんがくるのを待った。

 星奈さんが来たのはそれから数分経ってからのことだった。


 ガラガラと扉が開き、星奈さんが入ってきた。


「すみません、少し待たせてしまいましたね」

「いや、待ってないよ」

 

 星奈さんの手には何もなかった。


 お弁当を一緒に食べる感じじゃないのか……。

 ならなんだろうか。


 俺の隣に座る星奈さん。


「ショータロー、右手を机の上に置いてもらってもいいですか?」

「?」


 何をしようとしているのだろうか。


 そんな疑問を描きながら、俺は星奈さんが言う通りに右手を机の上に置いた。


「こ、こうですか?」

「はい、そのまま目を瞑ってください」


 何かサプライズでもするのだろうか。

 わからない、ただ星奈さんの言われるがままに俺は目を閉じた。


「は、はい……」


 次の瞬間、右手に激痛が走り出した。

 痛い、そんな言葉では表されないほどの痛みが身体に走り出した。


「があああ……っ」


 目を開け、俺は目を大きく見開いた。


 右手にカッターが突き刺さっていた。

 カッターを持っていたのは星奈さんだった。

 ポタポタとカッターから真っ赤な血が垂れている。


 恐怖で身体中が震えだす。


「なんで、私以外の女の子と仲良くするんですか……」


 星奈さんの目は助けた時のようにいや、それ以上に虚になっていた。

 死んでいた。


 ゴクリと俺は唾を飲み込んで。


「い、意味がわからない……」


 カッターが右手から抜けた。

 そして、再度右手に突き刺した。


「ぐああああああ……っ!」


 死にそうだ。

 涙が溢れ出している。


「惚けないでくださいよ……ショータロー……」


 何がどうしてこうなってるんだよ。

 俺がいつ、誰と仲良くしたっていうのさ……いつも通り……はっ。


 そこで思い出した、今朝の出来事を。


 思い出すと冷たい汗が溢れ出す。


「もしかして……西園寺さん……」

「他に誰がいるっていうんですか」


 ああ、そういうことか。

 俺はまた、星奈さんを傷つけてしまったんだ。


 ポロポロと星奈さんの目からは涙が溢れ出す。

 鼻水と涙で顔がぐちゃぐちゃになっていく。


 俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は。

 ごめん星奈さん、ごめん星奈さん、ごめん星奈さん、ごめん星奈さん、ごめん星奈さん。

 星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、星奈さん、ホシナサン!!

 

「痛いですよね、私もショータローが傷つくのを見ていると痛いですでも、私もそのくらい傷ついたんです」


 無意識に星奈さんを傷つけてしまったんだ。

 何が星奈さんの心を癒すだ。

 逆じゃないか……。


 気づけば、俺も涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。


「ごめんなさい、ごめんなさい……」

「私もショータローを傷つけてしまって、ごめんなさい……」


 俺は星奈さんを抱きしめた。


「何でもするから、許してください」


 星奈さんを守る。

 それが今の俺の生きる理由だ。

 今までは平凡にすぎるいつも同じような目標もない毎日を俺は星奈さんのために使う。

 星奈さんを傷つけた分だけ守る。


「間接キス……」

「?」

「そのお弁当を口付けでください……♡」


───────────────────────


書いてるのが少しきつい回でした。

ぜひ星やハートをお願いします……。

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