第6話 犯す約束

 ん……。


 重い……明らかに布団の重さではない。


 目を開けると、星奈さんが俺の上で寝ていた。


 そうだ、俺はうなじを思いっきりぶつけて気絶してたんだった。

 となると……。


 下半身が反応していた。


 いかん、いかん!


 星奈さんは先ほど? までの格好と同じ格好で眠っていた。


 っと、今は何時……。

 おっ、手錠から外れてる!


 スマホを手に取り、時刻を見ると午後三時を迎えていた。


 めちゃくちゃ時間経ってるな。

 って、なんか布団がびしょびしょな気がするんだが……汗か?


「ん……おひゃようぼひゃいましゅ」


 目を擦りながら、目覚める星奈さん。


「おはようございます、星奈さん……というか、今はもう夕方になりつつあるんですけど」


 結局、電話もせずに無断欠席をしてしまった。

 まあ、俺なんて誰も見ていないわけだし……ただ、皆勤賞がこれでなくなった。


「ははは、寝過ぎちゃいました……それで、ショータロー……」


 ワイシャツのボタンを外し、黒のバラ柄ブラジャーを見せる星奈さん。


「今から……子作りとかどうですか♡」

「いや……」


 俺の下半身を見る星奈さん。


「大きくなっていますよ?」


 慌てて隠す。


「いや、これは……違っ!」

「違くないですよ、さあ、私と子作りを……」


 今は朝とは違う、身体が拘束されていなく、自由に動かすことができる!


 上半身を上げる。


「星奈さん、俺には星奈さんとその……そういうことをする資格はない」

「資格ってなんですか……子作りに資格なんて……昨日、私はいきなり犯されかけたんですよ」


 下を見る星奈さん。


 ダメだ、ヤっちゃダメだ。

 俺が星奈さんをこうしたんだ、それを忘れちゃダメなんだ。


「ごめん……」

「なら、ショータローは挿れるだけでいいんです。あとは全て私が動きます……だから」

「そういうことじゃないんだ、ごめん」


 理由を言えばいいものを言わない俺は卑怯だ。


「なんでですか……私とショータローは運命なんですよ?」

「……ごめん、とにかくダメなんだ。だから、どいてくれ……」


 ポロポロと星奈さんの目から涙が溢れ出す。


「無理です、子作りするまでは無理です……絶対に離れません」


 俺は星奈さんを抱きしめた。


「──!?」

「ごめん、理由も言えない卑怯なやつでごめん。今はそんなことできない」


 本当は一生できる日など来るはずがない。


「なら、いつか……」

「ああ、近いうちに……」


 こうやって、解決させようとしている自分が嫌いだ。

 でも、これしか思いつかなかった。

 そう言い訳する自分が大嫌いだ。


「わかりました♡」


 星奈さんから手を離して、顔を見る。


 すると、星奈さんはニコリと微笑み。


「約束ですよ♡」


 心が痛む。

 いっそ、星奈さんを抱くのが星奈さんのためになるのかもしれない。


「高校生だし、まだ子作りは……その時はゴムは付けさせてもらうよ」

「高校を辞めて子供を養えばいいだけじゃないですか♡」


 胸が締め付けられて苦しい。


 俺のせいだ。


「流石にそれは……」

「本当は子作りがいいですが、私も初めてですし……わかりました、最初はゴムありにします♡」


 星奈さんは立ち上がる。


「約束ですよ、絶対に私を犯してください♡」


 いつか、そんなのは来るはずがないに決まっている。


「お、おう……」

「じゃあ、私はお風呂に入ってくるとします」


 そう言って、部屋を立ち去っていった。


 まだ下腹部が大きい。


「……身体は正直って本当なんだよなあ……」


 俺は下腹部に手をやった。


「俺のせいだ──」

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