親友の妹に彼氏ができたらしいのですが、ごめんなさい。それは俺です。

楠木夜空

第1話 妹さんとお付き合いさせて頂きました

「なぁ、聞いてくれよ!沙月の奴、彼氏ができたんだよ!!」


とある学校の教室で俺こと二ノ宮和人は親友の健太の愚直を聞いていた。


ついにこの話題がきたか…。


「別に付き合ってること自体はいいんだよ?でも誰と付き合ってるのかは全然教えてくれないんだぜ?」


健太は妹が誰と付き合っているのかとても気になっている。

すまん、健太。俺は妹の沙月ちゃんが誰と付き合っているのか知っている。


いや、厳密に言うと俺が沙月ちゃんとお付き合いさせてもらっています。ごめんなさい。


そう先週の話、俺は学校の屋上で沙月ちゃんに告白し、なんとお付き合いする事になった。正直自分でも驚いた。なにせ沙月ちゃんは学校二大美女の一人なのだから。


親友の妹、近衛沙月このえさつきは俺たちが通う高校の一つ年下の高校一年生で、成績優秀、スポーツ万能、また誰にでも優しく接していることから多くの先生・生徒から人気だ。


また、彼女の容姿にも多くの男子・女子生徒から人気がある。

彼女は一言で言うとアイドルの様な可愛さ。いや、それ以上かもしれない。

彼女が登校している際は、何人かのアイドル事務所のスカウトの人からお誘いが数え切れないほどあった。道を通るたびに通行人からの視線も凄かった。


まぁ、確かに健太の気持ちは良くわかる。どこの馬の骨かも分からない奴(俺)に可愛い妹が付き合うことになるのは怖いよな。


でも、安心してくれ。その彼氏は俺だからな。


「はぁ、妹と付き合ってるのがお前だったらいいんだけどな~」

「え?」

「和人だったら沙月を安心して任せられるしな」


まじか!?お前の口からそんなこと言う日が来るなんて…。

もう一生付いて行きますお義兄さん!


「ま、噓だけどな」


おい、こら。さっきまでの俺の涙返せよ。


「兄さん」


ふと教室の入り口から誰かの声がしたのでそちらに振り返った。


そこに立っていたのは、今丁度話していた我らのアイドルそして俺の彼女の近衛沙月だった。


いつ見ても可愛いなぁ。べ、別に惚気ではないぞ!


彼女は俺から健太の方に視線を向けるとこちらに近づいてきた。


凛として歩いてくる彼女につい見惚れていると、気がつけば俺たちの前に立っていた。


近くで見ると本当にアイドルかの様な顔立ちに自分が彼女と付き合っていることをつい疑いたくなる。


「和人さん、おはようございます」


そこで沙月ちゃんは俺のほうを見ると、丁寧な振る舞いで頭を下げた。


「あぁ、おはよう。沙月ちゃん」

「お、おい。実の兄に対して挨拶はなしかよ~」


嫉妬しているのか健太の顔は少し膨れ上がった。

まるでフグだな。


「何言っているの兄さん。家で毎日挨拶しているでしょう?」


そうだ!そうだ!俺の彼女に毎日挨拶もらっているだろが!

なんと羨ましい!


「で、でもよ~」

「でもじゃ無いです。ほら、体操着忘れてたから届けにきたよ」


そう言い、沙月ちゃんは手に持っていた体操着を健太に差し出した。


妹に忘れ物を届けてもらって嬉しいのだろう。健太の顔は少しニヤけていた。

俺も届けてもらいたい…。


手に取った所で健太はふと何かを思い出したのか沙月ちゃんの方を見下ろす。


「な、なぁ。もう一度聞くが、お前は誰と付き合っているんだ?」


やっぱり気になるようで本人を目の前にもう一度その質問をする。

その彼氏がすぐ隣にいることを健太は知らない。


「はぁ、またその事ですか…。もうしつこいですね」

「頼む!教えてくれ!ヒントでもいいからさ!」


何度も迫ってくる健太に沙月ちゃんは諦めたのかそっと溜息を吐く。


「分かりました。そんなに知りたいならヒントをあげますよ」

「おぉ!まじか!」


と沙月ちゃんは俺のほうを見てニコリと笑顔を向けた。

嫌な予感がする…。


「では、ヒントは貴方のすぐ隣にいます」


いやヒントじゃなくね?それはもう答えだよね!?


「ま、まさか」


すると、健太は驚いた顔をしてこちらに視線を送る。


「ど、どうも~。お付き合いさせて頂いていますぅ~。お義兄さん☆」



こうして俺たちの関係がバレた。
















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親友の妹に彼氏ができたらしいのですが、ごめんなさい。それは俺です。 楠木夜空 @taiko2129

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