第12話

 右腕を断ち、次は左腕か脚だという時にドラゴンは大きく息を吸い、首を後ろに下げた。


 事前の訓練の時に、このドラゴンもブレスを吐くのだろうと予測されていたため、しっかりと対処をした。


 しかし、そのブレスの威力は予想を大きく超えていた。


 ドラゴンのブレスは炎のもので、予想の2.5倍の広さを焼き尽くして、盾部隊が持っていたとても分厚く、超高温にも耐える盾を元の2割ほどの厚さにまで溶かした。


 氷や水の魔法を使える者たちが全力で場を冷やしてもなかなか冷えず、炎の魔法を使える者たちが炎の除去を試みるが、炎を弱めることさえできない。


 ブレスに耐えたものたちであっても、この熱さの中での長時間の戦闘は無理だろう。


 さすが歴戦の冒険者だというべきか、ほぼ全ての冒険者が次の行動に向けて動き出す。


 しかし、冒険者が動くよりも先にドラゴンが動いた。


 そしてもう一度、首を後ろに下げる。


 口の端から水がこぼれたのを見たと同時に、僕は近くの塹壕に飛び込み耳を塞ぐ。


 ドラゴンがブレスを吐く音を聞いた瞬間、大きな爆発音と衝撃波が僕を襲う。


 小規模ではあるが、水蒸気爆発が起きたのだ。


 ドラゴンがこの現象を知って居たかはわからないが、冒険者たちを一掃するための威力は十分にあった。


 音と衝撃波の影響ですぐには立てなかったが、少し時間が経ってなんとか立ち上がることができた。


 周囲はあまりにも悲惨な光景が広がっていた。


 ほとんどの冒険者は塹壕に逃げ込むことができたが、一部の逃げ遅れた冒険者は見るも無惨な姿となっている。


 塹壕に逃げ込めた冒険者の中にも、衝撃波のせいでまだ立ち上がれていない者も多い。


 これでは、作戦の続行は不可能だろう。


 僕は最後の手段を取ることにした。


 周りにいる冒険者に地面に文字を書くことでそのことを伝え、僕は1人でドラゴンに向かって進んでいく。


 体の大部分はすでに石に置き換わり、残りのまだ置き換わっていないところは頭の半分と目だけだ。


 まだ残っているバフを強引に右腕に集め、ドラゴンの腹に向かって走っていく。


 上からは爪が、前からは脚が行く手を遮ってくるが、通り抜けることができるところを瞬時に見定め、なんとか目的の場所に辿り着く。


 鱗が剥がれているところを見定め、助走をつけて思いっきり殴りつける。


 その反動で視界が全て無くなり、僕の意識はドラゴンの悲鳴を聞きながら深く、深く落ちていった。

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