十三話
助けられたのは、これで何度目だろう。絶体絶命の、死を覚悟した時に目の前に現れるなんて、ただあたしの運がいいだけじゃないはずだ。
「ありがとう。助けてくれて……でも、何でここにいたの?」
あたしは歩み寄って聞いた。ティルは倒れて動かないアンドリューの様子を確認すると、こっちに顔を向けた。
「それは俺からも聞きたいね。何でエドナがこいつと一緒にいるんだ」
「ティルはこいつのこと、知ってんの?」
「ああ。頭のブリスの側近の一人だからな。都に来てこいつを見つけてから今日まで、ずっと見張っていた。そうしたらいきなりエドナが現れた。まったく、驚きを過ぎて少し焦ったよ」
すでにティルもアンドリューを見つけてた。それであたしを助けることができたわけか。
「だったら、もうちょっと早くに助けてほしかったよ。首絞められて、意識が飛ぶとこだったんだから」
「すまなかった。だがこいつは凶暴だからね。片腕だけの一対一じゃ押されると思って、不意打ちをさせてもらった」
確かに左手一本で闘うのは大変だろう。相手は人殺しもいとわない悪人だ。助けに入って返り討ちに遭うのだけは避けなきゃいけない。でも、何度も吹いた指笛に反応されなかったらどうするつもりだったんだろう。まあ、助かったからいいけど。
「……それで? エドナはなぜこいつといたんだ」
「その、酒場で偶然聞いたんだよ。ブリスが仲間を集めてるって。それでこいつの居場所がわかって、情報でも聞き出そうかと……」
「情報を? 何のために? まさか、一味の仲間に入ろうと――」
「そんなわけないだろ! そのふりはしたけど、仲間に入る気なんてこれっぽっちもないよ」
「じゃあなぜ……もしかして、俺のためか?」
あたしは小さく頷いて見せた。これにティルは呆れたように頭上を仰いだ。
「……俺の手紙は読まなかったのか」
「ちゃんと読んだよ。読んだけど、やっぱり……」
その先の言葉を言うべきか迷った。あたしの正直な気持ちを伝えていいのか……。
「……一緒に、いたいんだ。力になりたい」
思い切って言ってみた。ティルを見ると、困った青い目があたしを見てた。そんな顔、しないでよ。
「わかった……その話はまた後で聞かせてくれ。今はこいつが目を覚ます前に急いで移動させたい」
そう言ってティルはアンドリューの脇に膝を付いた。
「こいつ、生きてるの?」
「ダガーの柄で殴っただけだ。殺せばブリスの居場所を聞き出せないからな」
ティルはマントの下から縄の束を取り出して、それをアンドリューの足に巻き付けようとする。でも左手だけじゃ何ともおぼつかない動きだ。
「縛るの? なら貸して。あたしがやってあげる」
受け取った縄で足をぐるぐる巻きにして、後ろ手に組んだ両手も同じように縛り上げた。
「すまない。手伝わせて」
「あたしはやりたくてやってんだから、何でも言って。こいつ、どっかに運ぶの?」
「ああ。俺が担いでいく」
あたしの手も借りながら左肩にアンドリューを担いだティルは、周囲の人目を警戒しながら人気のない道を選んで都の外へ向かった。夜空の星のわずかな明かりを頼りに、街道から外れた林の奥へ入ったティルは、細い木の前にアンドリューを下ろすと、幹に寄りかからせた姿勢で座らせて、その木に縛り付けた。
「……どうすんの?」
「目を覚ましたら尋問する」
「居場所、吐くかな」
「吐くまで聞くさ」
風の音も、生き物の声も聞こえない、薄闇に覆われて静まり返った空間。そこで眠る男と、それを見つめる二人の呼吸だけが存在感を発してる。そのうちあたしの心臓の音まで聞こえるんじゃないかと思って、長い沈黙に耐えきれず、隣のティルに話しかけた。
「……亡くなった恋人、見つからなかったの?」
あたしをちらと見てからティルは言った。
「残念ながらね」
「こいつは知ってるかな」
「知らないだろうな。あの時こいつは見なかった」
「襲ってきたやつらの顔、全員憶えてるの?」
「全員じゃないが、主要なやつだけは。だがほとんど捕まっていたり、死んでいる」
「じゃあやっぱり、行方を知ってそうなのはブリスだけってことなのか」
「そういうことだ」
「あたし、ブリスを吐かせるまで、恋人が見つかるまで――」
ティルが軽く手を上げてあたしの言葉をさえぎった。その青い目の視線をたどれば、うなだれて寝てたアンドリューがわずかに頭を動かしてた。やっと目を覚ましたみたいだ。
「う……うう……」
苦しげな声を漏らして頭が左右に揺れる。そして周りを見ようとゆっくり顔が上がってくる。
「っつう……てめえ、ら……!」
右側を赤く腫らした顔がティルとあたしを見つけて怒りの形相に変わった。つかみかかろうとでもしたのか、足や腕を動かすけど、きつく縛った縄で自由を奪われてると知って、唇を噛みながら無駄にもがき始めた。
「アンドリュー、お前に聞きたいことがある」
名前を呼ばれて驚いた様子で、アンドリューはティルの顔を見た。
「誰だてめえは。そっちのごみの仲間か?」
なめた目があたしに向く。殴ってやりたいけど、ここはティルのために我慢しておこう。
「俺の顔に見覚えはないようだな」
「どこかで見てたとしても、そんな間抜け面、いつまでも覚えてる意味ねえだろ」
挑発的な態度でも、ティルは表情一つ変えずに続ける。
「昔、俺の恋人はお前達一味に殺され、俺は右腕を失った。このことを知っているか」
アンドリューは笑みを浮かべて言った。
「へえ、そりゃご愁傷様だな。さぞ辛かっただろうね」
「知っているのかどうか、答えろ」
「さあ、どうだろうな。そんなの多すぎていちいち覚えてねえよ。でも俺は泣きわめく女殺すより、勝つ気満々で向かってくる男殺すほうが楽しいけどな。ははっ」
これも挑発だろうか。身体を縛られてんのによく言えるもんだ。
「やはり知らないか。ならばこの質問だけ答えてくれればいい。……ブリスはどこにいる」
笑ってたアンドリューの目に、ぴりついた色が浮かんだ。
「はあ? ブリスだと?」
「ブリス・ガルト。通称ウルフ。お前のいる盗賊団を率いる頭だ。と言っても、今は盗賊団という体を成していないようだが」
「知ったふうな口きくじゃねえか……まさか警察隊の人間か?」
「昔の話など興味ないだろう。質問に答えろ」
「知るかよ。てめえが言ったように、盗賊団はばらばらになった。それから頭には一度も会ってねえよ」
「信じられないな。ブリスは離れた仲間を集めようと声をかけているらしいじゃないか。それを一番近いお前が知らないはずはないし、当然連絡も受けているはずだ」
「連絡してるのは……他の仲間とだけだ。頭とはしてねえよ」
初めてアンドリューの口調が鈍った。こいつの嘘はわかりやすい。
「じゃあその仲間だけがブリスと連絡し合っているのか? お前を差し置いて?」
「俺は知らねえって言ってんだろ!」
「ブリスが重宝していた男は四人。一人はお前だ。だが他の三人はそれぞれ牢屋か地獄へ行った。頼れる仲間で残っているのはアンドリュー、お前しかいない。俺がブリスの立場なら、仲間を集めるために真っ先に連絡を取りたいのはお前だ。お前の代わりになるような者は――」
「聞こえなかったのか! 俺は知らねえんだよ! さっさとこの縄解きやがれ!」
嘘を見抜かれたくなくて、アンドリューは苛立ってる。素直に話しそうにはないけど……。
「ブリスの居場所を教えれば解いてやるさ。それまではこのままだ」
「こんなこと、他の仲間が見逃さねえぞ。俺が消えれば、いずれ頭がてめえを見つけて八つ裂きにする」
「向こうから来てくれるなら手間が省ける。じゃあお前はここにつないだままにしておくか」
「調子に乗りやがって……なめんなよ」
「俺は真剣だ」
アンドリューは、けっと小馬鹿にした笑いを漏らす。
「それがなめてるんじゃねえか。腕を一本取られたとか、恋人を殺されたとか、それを恨むのは勝手だけどな、相手を間違えるなよ。頭は小バエでも容赦しねえからな。自分の周りでうるさくするやつは叩き潰していくぞ。兵士だろうと警察隊だろうと関係ねえ。引き返す気がなきゃ、てめえはもう死んだも同然だ」
これにティルも薄い笑みで返した。
「そんなこと、わかっているさ……だが俺は恨みでブリスを捜しているんじゃない。聞きたいことがあるだけだ。役人に突き出そうとは考えていない」
「はんっ、そんなことができると思ってんのかよ。随分と能天気な頭だな。大丈夫か?」
「大丈夫かどうかは、お前が居場所を教えるかどうかに懸かっている。俺もいつまでも悠長に話し続ける気はない。そろそろ教えてもらおうか」
「何度も言わせんな! 知らねえもんをどう言えってんだよ」
「知らないはずはない。お前は知っている。それだけブリスと近い存在だ」
「てめえは俺の何を知ってんだよ。ええ? 脳みそ正気に戻してやろうか?」
アンドリューはにやけた顔で言う。嘘は下手だけど口は堅いみたいだ。これは聞き出すのに時間がかかりそう……。
するとティルはアンドリューの横にかがむと、顔をのぞき込みながら言った。
「お前こそ、素直に教える気持ちにしてやろうか。その減らず口がなくなるようにな」
「殴りたきゃ殴れよ。それで殺したっていい。そうなりゃお前も俺と同じ殺人犯だ」
「殺すわけがないだろう。教えろと言っているのに。……エドナ、悪いがこいつの手の縄を解いてくれないか」
「え、あ、うん……」
ティルは何をする気なんだろう――わからないまま、あたしは言われた通りアンドリューの手を縛ってた縄を解いた。
「左手は木に縛ってくれ」
自由になったばかりの左手を木にくくり付ける。でも右手はまだ自由なままだ。その手はティルがつかんでる。
「何だよ。そのまま全部の縄解いてほしかったのに」
「それはお前次第だ」
そう言うとティルはアンドリューの右手のひらを地面に付けると、その甲を足で強く踏み付けた。
「はっ、うっ……てめえ!」
ブーツのかかとが押し込まれて、その痛みで吊り上がった目がティルを睨んだ。見た目にも痛そうだ。
「これくらいで痛がるのは早いぞ。本当の痛みはこれからだ」
アンドリューの押さえた右腕の袖をまくって白い肌をあらわにさせると、ティルはマントの下からダガーを取り出して、その切っ先を二の腕に向けた。
「お前には俺と同じ痛みを感じてもらおう」
あたしは息を呑んだ。まさか、こいつの腕を切るの?
「へっ、こ、こんな脅しで――」
「でも使うのはこのダガーだ。俺の場合は大振りの剣ですぱっと切られ、痛みは一瞬だったが、ダガーとなるとそうはいかない。何度も肉を切り、骨を叩き切ることになるだろう。その痛みは正確には俺と同じとは言えないが、まあ辛いものだと感じてもらえればいい」
「おい、てめえ、正気か? 腕一本落とされたって、俺は何も――」
「どうした? 肌寒い夜なのに、すごい汗だな。風邪でもひいているのか?」
アンドリューの額からは次々と玉の汗が流れ落ちてた。挑発して余裕のある態度でも、内心はかなりびびってるみたいだ。誰だって腕を切り落とされると言われたらこうなるだろう。こいつは悪人ではあるけど、度胸は至って平凡なものらしい。これならもしかすると……。
「だ、黙れ! こんなことすりゃ、頭が黙っちゃいねえぞ!」
「またそれか。つまり、自分の力じゃ成す術がないということだろう。ならば好きにやらせてもらうさ」
「ゆ、許さねえからな! 後悔させてやる!」
「先に後悔するのはどっちだろうな。大人しく話せば、両手両足を失わずに済んだかもしれないのに、と」
ちらりと向けたティルの視線に、アンドリューの表情が強張ったのがわかった。
「な、何を……」
「心配するな。死なせはしない。ただ死にたくなるような痛みが続くだけのことだ」
右手を踏み付ける足に力を入れたティルは、構えたダガーを白い二の腕に近付けた。
「お前も腕に力を入れろ。俺は左手だけしか使えないから、上手く切れるかわからない。余計な傷を付けるかもしれないが、それは勘弁してくれ」
「や、やれる、もんなら、やって、みろよ……」
アンドリューの声は震えてる。最後の強がりだ。
「それじゃあ、痛みを感じてくれ」
冷静な視線が押さえた腕に向くと、すっとダガーが振り上げられた。そして次の瞬間――
「やめてくれっ! 教えるから! やめろ!」
寸前で大声を上げたアンドリューに、ティルの手も止まった。
「痛みを感じないつもりか? せめて右腕は切り落としたい」
ティルがダガーを振り下ろそうとすると、アンドリューはすかさず叫んだ。
「都の北の森だ! 頭は今そこにいるっ!」
ついにしゃべった。ブリスは森の中に隠れてる……。
「……嘘だ」
「嘘じゃねえ! 街道から入って二十分くらい歩いたとこにテントを張ってる。一昨日会いに行ったばっかだ!」
「そうか……」
「お、俺は教えた! だからやめろ!」
強がった態度はどこへいったのか、アンドリューは怯えた顔でティルを必死に見つめてる。
「いいだろう。やめてやる。痛い後悔をせずに済んだな」
そう言ってティルはダガーを振り上げた。
「やめるって、今言った――」
ゴツ、と鈍い音がしてアンドリューの頭が大きく揺れた。そのままうなだれると、また意識を失ったのか、動くことはなかった。その様子を確認してティルはダガーをしまう。
「話した居場所は本当だろう。ブリスは北の森に潜んでいる」
「こいつ、どうするの?」
「木にくくり付けた縄だけ解いてやってくれないか。そうすれば自力で帰れるだろう」
あたしはその通りに縄を解いた。その拍子にアンドリューの身体が傾いて地面にばたりと倒れる。誰かが見たら死体と勘違いしそうだ。
「ティルは、本気でこいつの両手両足切るつもりだったの?」
「さすがにそこまでする気はなかったよ。強めに脅せば口を開くと思ってそう言っただけだ」
「何でそう思ったの? あたしは口が堅そうに見えたけど」
「他の犯罪集団と比べて、ガルト一味の結束は弱い。ブリスの側近とは言え、忠誠心が強いわけじゃない。自分の身に危機が迫れば、あっさり手のひらを返す隙はあると踏んでいた。でもその読みが外れた場合には、右腕を落とすこともやむを得ないと思っていたけどね」
あたしはアンドリューを見下ろした。袖をまくられた白い腕が冷たい空気にさらされてる。
「ティルは右腕を失ったこと、今もやっぱり……」
これにティルはうっすらと笑みを浮かべた。
「復讐する気持ちはないと前に言ったはずだ。俺はローズさえ見つかればそれでいい。……さあ、都へ戻ろう」
あたし達は暗い中、来た道をたどって都へ向かった。二人だけの足音を聞きながら、遠くに見える小さな灯りを目指す。ブリスの居場所はわかった。あとは遺体をどうしたか聞くだけだ。だけど相手は盗賊団を率いる男。手下のアンドリューほど簡単にはいかないだろうな……。
「エドナ、話の続きだが……」
「続き? ……ああ、助けてくれた時の?」
そう言えば酒場を出た路地で、話が途中で終わってたっけ。
「力になりたいと言ってくれたが……」
「そうだよ。あたしはティルの側で、ティルの力になりたいんだ。だから何でも言って。ブリスから聞き出すために――」
「もういいんだ、エドナ。もう、俺に付き合わなくていい」
「その言葉こそ、もういいよ。あたしに気を遣ってんならやめて」
「そうじゃない。俺はエドナに、この先何もしてやれることがないんだ」
思わず首をかしげてティルを見た。
「ちょっと。それってあたしが見返りでも待ってるって思ってんの? それは違うから。あたしは金も世話もいらない。そんなもののために力になろうってんじゃないよ。あたしの意思で、気持ちでそう言ってんだ」
「ありがたいが、俺は凶悪犯でもあるブリスを捜しに行くんだ。これ以上危険なことに巻き込むことはできない」
「じゃあまたあたしを置いてく? 達者で暮らせって手紙書いて、それでどっか消えるつもり? 危険だなんてわかってるし。わかった上で力になりたいって言ってんの」
「エドナ……」
困り果てた顔がこっちを見つめる。わがままを言ってんのは自覚してる。でも心は離れたがらないんだ。あたしが新しい恋人になろうとか、そんな贅沢までは言わない。ティルの目的が果たされるまで、その間の時間だけ、側にいて手伝わせてほしい。それであたしがどうなろうと、それはティルの責任じゃない。わがままなあたしが望んだ結果でしかない。
「もう黙って置いてかないで。足を引っ張ったりしない。恋人が見つかるまでの間だけだから。その最後まで、あたしは手伝いたいんだよ。お願い……もうちょっとだけ、一緒にいさせてよ」
ティルの青い目に困惑が見える。
「俺を手伝って、何の得になる」
「損得じゃない。気持ちの問題だ」
「それはどういう気持ちだ」
「どういうって、だから……」
自分の中の複雑な気持ちをまとめて、あたしは言った。
「ティルに、死んでほしくないって気持ちだ」
これに一瞬真顔になったティルだったけど、次には切なげな微笑みを見せた。
「死は、誰も避けられないものだ」
静かな声でそう言う様子に、あたしは何だか不安を感じた。いつかもこんな感覚があった気がする。
「だけど、ティルは今じゃない。そうでしょ?」
見つめると、ティルはふっと笑った。
「まるで俺がブリスに殺されるみたいな言い方だな」
「そうは思ってないけど、でもそうなったっておかしくない相手でしょ? あたしに何ができるかわかんないけどさ、精一杯力になるから」
ティルの望みが叶う最後まで見届けないと、この気持ちも得体の知れない不安も治まらないんだ。
「悪いけど、帰れって言われても付いてくから。その代わり何でも言って。あたしの心配はいらない」
「エドナ、ブリスは本当に危険な男なんだぞ」
「わかってるってば! だから心配はいらない。あたしはティルを手伝うの。そう決めたんだから!」
ティルは困り果てた様子でしばらく黙ってた。引かない気持ちでそれを見てたあたしに、ティルはゆっくり目を向けた。
「……危ないと感じた時は、無理をせず逃げるんだぞ」
「悪党に命をやる気はないよ。その時はティルを助けて一緒に逃げ――」
「俺はいい。まずは自分の身を守ることを考えろ。それができないのなら連れて行けない」
困り果てた様子から一変して、突き付ける目がこっちを見据える。有無を言わせない迫力に言い返す言葉が出ないあたしは、ただ頷くしかなかった。
「……わかったよ」
素直に返事をすると、ティルの眼差しは普段の穏和なものに戻った。そしてまた二人で都へ向かって歩き始める。今度こそ力になって、足手まといからは脱却だ。そして最後まで見届けるんだ――うつむくティルの横顔を見ながら、あたしは自分にそう気合いを入れた。
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