この作品リストになんらかの意味が?

 それにしてもこのコラム、……と、便乗させてもらったコラムの話についついもどってしまうわけですが、「このコラムでは『『ライトノベル』とは何か?』の問いに対して、『ライトノベル』の歴史を振り返ることで名興文庫の考えを提示したいと思います。そのため、実際に出版された『ライトノベル』作品をいくつか紹介します。読みやすさを重視するため敬称を省略させていただいています。また、出版年は Wikipedia を参照させていただきました」ということで、名興文庫が考えるラノベのリスト、あるいは略年表のようなものを掲げているわけですが、そのリスト自体は深読みを誘ってくると言いますか、巷で言われているほど悪くない、といったものになっているような気がします。友野詳は落ちているわけですが……。

 たとえば初っ端から──。

 著者名・高千穂遙に続きその著作名。『ダーティペア』を挙げてくる点など、なかなか意味深なのではないでしょうか?

 ここは出版年などから言って『クラッシャージョー』を挙げてくるほうが普通なような気がするのですが、何やら、コラム執筆者のコダワリを感じます。高千穂遙は確か『ガンダム・エース』誌上かどこかで、上記二作の映像化作品に対し、『ダーティペア』はSFにならなかった、『クラッシャージョー』のほうはちゃんとSFとして成立していた、といった趣旨のことを言っていたような気がするのですが、そうするとこのコラム執筆者、『クラッシャージョー』はラノベではなく正統なSFのリストに加えられるべき作品、同著者のラノベとしては『ダーティペア』のほうを挙げておくほうがベター、といったように考えたのかもしれません。案外SF的煩型なのでは?

 ごく私的にもっと面白い推測、あるいは妄想としては、このコラムの執筆者はプロレス好きなのでは? という推測があります。『クラッシャージョー』と同じソノラマ文庫にのちに収められた朝松健の初期作品などを見ると、プロレス好きって本当、熱いですからね。

 また、折原みとの著作として『真夜中を駆けぬける』を挙げているところは、ここは直球勝負にでてきたな、と感じさせます。なんと言ってもドラマ化作品ですし、そのドラマの出演者たちも葉月里緒菜、水野美紀、奥菜恵など、のちになん世代目になるのかは分かりませんがある時期のトレンディドラマを牽引した俳優さんたちです。どちらかと言えば刑事ドラマ、2時間ドラマなどへの出演が多かった櫻井淳子などもでていたようです。

 CD『ティーンズハートコレクション』などでの取り上げられ方も割り合いウェイトがかかっているタイトルだったなと記憶しています。

 その『ティーンズハートコレクションⅡ』のほうでは上記著者の大型シリーズ、『アナトゥール星伝』シリーズの初期の巻、『金の砂漠王<バーディア>』などがフィーチャーされていたわけですが、異世界もの、物語世界への転移・転生などの要素を考慮しつつ最近のいわゆる「なろう系」なども視野に入れ、ラノベの歴史を提示するという趣旨なら、むしろこちらのタイトルを挙げたほうがよかったような気がするのですが、とはいえ、「名興文庫は『ライトノベル』という枠組みにとらわれた発想はしません。特定の人々にだけ届くような物語ではなく、多くの人が読んで楽しいと感じてくれる物語を求めています」、ということなのでしょう。

 2000 年代に入ってからのリストに関しては私には正直追い切れていないなという自覚があります。

 問題のコラムのリストのほうもまさに膨張し切ってしまっていますね? そうすると「現在の子どもたちは冒険をしないのです。そして、朝読のために書籍を購入するであろう小学生・中学生は、面白いとわかっている作品しか購入していません」といった点が問題なのではなく、むしろ彼らの悩みは、すでに出会ってしまったコンテンツをフォローし続けるだけでいっぱいいっぱいだ、という点になってくるのではないでしょうか?

 私自身映像化作品だけでもフォローしておきたいなと思っているのに、それさえももう無理! という状態なのです。

 この膨張し切ったリストに対しそれなりのコメント力を有しているだろう同コラムの執筆者には、本当に頭が下がる思いです。あのオタキング=岡田斗司夫でさえ全新作アニメのフォローを諦め、到頭倍速再生で観始めてしまった、などとボヤいているくらいなのですから……。

 それでも冲方丁、谷川流などに関しては私にもまだまだ触れておきたい点があるのですが、本文書のなかでの私の関心は友野詳はどこへ行った? という一点なのですから、その問いに対する答えはもう、このコンテンツの海のなかに沈んでしまった、ということにしてしまっていいのかもしれません。

 とはいえラノベ黎明期のひとたちであっても水野良、あかほりさとる、神坂一などはまさにリストアップされているわけですから、友野詳だけがなぜ? という問いは、消えないような気がします。

 そういえば斉藤英一朗、火浦功、中村うさぎなども落ちていると言えば落ちているわけですが、たとえば『ハイスピード・ジェシー』は『クラッシャージョー』に対し、オリジナリティを主張できない「柳の下に泥鰌」のような和製スぺオペだ、などとといった判断にでもなるのでしょうか? ゴメンなさい! 斉藤さん! 私がそう思っているというわけではないのです! いややはり私がいまそう思った、という話にしかならないのでしょうか? どうもよく分からなくなってきてしまいました……。

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