第10話 攻撃魔法の練習
魔法道具屋で五冊の魔導書を買った。
キューブをアイテムにする無属性魔法、アペリレ。
炎属性魔法、ファイア。
風属性魔法、エアロ。
水属性魔法、ウォーター。
土属性魔法、ロックショット。
覚える属性は厳選したほうがいいらしい。
とはいえ全く使ったことがなければ、どれを選んでいいのか分からない。
要は、どの属性のスキルツリーを延ばしていくかを絞ったほうが効率がいいという話である。
基礎となる初級魔法を覚えるだけなら、何種類覚えても時間の無駄にはならないはず。
「よし。これで五冊とも契約したぞ」
町の近くの草原で、アオイは買ったばかりの魔導書を消費した。
あんなに分厚かった本なのに、契約すると跡形もなく消えてしまう。
使い終わったアイテムが消えるなんてゲームでは珍しくもないが、こうして肉眼で見ると実に不思議な光景だ。
「さて。早速、魔法を試してみよう」
アオイは攻撃魔法の試し打ちに相応しいモンスターを探して草原を歩く。
アペリレも使ってみたいが、今はキューブの持ち合わせがない。モンスターに攻撃魔法を撃っていれば、そのうち一つくらいドロップするだろう。
「お。スライムだ。喰らえ、ファイア!」
木の杖の先端から、炎の塊が飛んでいく。
スライムは当然として、その周りの草にも燃え移った。というか巨大な火柱があがった。一軒家を丸ごと飲み込めそうな大きさだ。
おかしい。ファイアは炎魔法の初歩なのに。こういう魔法は、もっと小さな炎が出るものではないのか。
このままでは火事になって、この辺の草原が消えてしまう。
アオイは慌ててウォーターを使った。無事に火が消えたが、水が出すぎて眼前の一帯が沼地みたいになってしまった。
「や、やばいな……今の火柱、かなり遠くからも見えたかも……誰か来る前に逃げようっと」
まだ魔力のコントロールが上手くできていない。
何度も同じ魔法を使えばその魔法が上手になって魔導書に認められる、と老婆が言っていたが、そういうゲームシステム的なこと以前の問題な気がする。
狙いがズレているというか、ボタンを押すタイミングが合っていないというか……。
「このくらいならどうだ……ファイア!」
杖からシュオオオオオと炎が出る。
ガスコンロよりやや強いくらいだ。これではモンスターと戦えない。
もうちょっと魔力を込める。射程距離が伸びた。
炎の長さが十メートルほどになる。
「いい感じにコントロールできてるぞ。この感覚を忘れないようにしよう」
満足したアオイは、ほかのモンスターを探して進む。
やがて森に辿り着いた。
強いモンスターがいそうだ。
火事を起こしたら草原よりずっと大変なことになりそうなので、そこは注意したい。
「次は風属性と土属性を使ってみるか」
森を歩いていると、クマ型のモンスターが現われた。
アオイは動物園に行ったことがないので、実際のクマの大きさを知らない。
しかしこれは、巨大で知られるヒグマよりも更に大きいのではないだろうか。
大きいだけではなく、目が三つあるし、ナイフのような牙が口から飛び出している。あれで噛まれたら、どんな大男でもひとたまりもない。
「森を破壊しないように威力を抑えて……ロックショット! あれ、弱すぎたか……」
地面から小石が浮かび上がり、クマへと飛んでいく。
しかし分厚い毛皮に跳ね返されて、ころんと落ちてしまう。
「これならどうだ!」
今度のロックショットは、クマの胸元を貫通した。
クマは倒れ、死体が消える。
「お。キューブが落ちてる。やったね」
アオイはそのキューブを鞄に入れる。
「それにしても、なんだか疲れてきたな……体力は余裕だけど……精神……というか魔力……MPか。MPがなくなる感覚ってこういうのか」
魔力は加護で強化しているが、MPはそのままだった。
ならこれだけ魔法を撃てば、枯渇するのも仕方がない。
「あと一発は撃てるかな。キューブをアイテムにするのはあとでいいか。今は攻撃魔法を試したいな。MPがなくなったら剣で戦おっと」
再び森を探索。
ガサゴソと草を踏みつける音が聞こえた。
モンスターだろうか。さっきのクマよりは小さい気がする。
どうやら向こうもこちらの気配を感じたらしく、ドンドン近づいてくる。
「あれ? モンスターかと思ったら男の子? なんでこんなところに一人で……」
現われたのは女性だった。それもアオイより少し年上なだけの、少女であった。
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