第6話 解体と作成と合成。鉄の剣を超強化
宿に帰ってきたアオイは、洞窟で手に入れたアイテムを部屋に並べて腕組みする。
「軽い気持ちで潜ったけど、想像以上に色々と手に入っちゃったな。こんな簡単にアイテムが集まるなら、もっと混雑しそうだけど。誰とも会わなかったのが不思議だ……」
そう呟いてから思い直す。
簡単だったのは、アオイが加護で防御力を強化しているからだ。
それに無限収納がなければアイテムを持ち帰るのだって大変だ。
「転生者はとても強いはず」と受付嬢は言っていた。
逆に言えば、この世界の普通の人たちはアオイほど強くない。
「今は他人より、ボク自身がなにをできるのか確かめるのが先だな。ゲームのスキルをどこまで再現できるのか……それ以前に、運動をちゃんとしたことないし。一人で生活するのだって初めてだし」
不安はある。
しかしワクワクはその何十倍もある。
アオイは積極的に生きたくても、病弱な体がそれを許さなかった。
それが異世界転生して、まともな体になれた。
今度こそ積極的に色んなものにチャレンジしていきたい。
「とりあえず『解体』を試してみよう」
アオイの目の前には、鉄の剣や鉄の盾など、洞窟の宝箱から入手した装備が並んでいる。
冒険者が捨てていったと思わしき、折れたナイフなども回収してきた。
それらに手をかざして「解体」と念じる。
だが、なにも起きなかった。
「……加護と鑑定は使えるのに、解体は駄目なのか? けど、なんでもかんでも解体できたら、念じただけで敵の装備を消せちゃうし、壁に穴を開けられるし……どんな攻撃スキルより強いスキルになっちゃうか」
ゲームだと、自分のアイテムしか解体できなかった。
自分のアイテムというのはつまり、メニューのアイテム欄に入っているもののことだ。
「……鞄に入れたまま解体したらどうなるかな?」
試しに、並べたアイテムをまた鞄にしまう。
それから鞄に腕を突っ込む。
アイテムが収納されているのが感じ取れた。不思議な感覚だが、とにかく分かるのだ。
解体したいアイテムを思い浮かべながら、念じる。
「あ。上手くいったぞ!」
頭の中にゲージが現れ、それがぐぐっと伸びた。
素材ゲージだ。
解体したアイテムの種類や数に応じて増えていくのだ。
今は鉄の剣を解体したから、鉄の素材ゲージがぐぐっと伸びた。
木製のものを解体すれば、木の素材ゲージが増える。
ほかにもセラミックとか紙とかガラスとか、素材ゲージは何種類もある。
そして『レシピ』が追加された。
アイテムを解体するとレシピが手に入り、素材ゲージを消費して、同じものを作成できるのだ。
鉄の剣のレシピは、ゲームで入手済みだった。
しかし、ゲームのとデザインが違うせいか、改めてレシピが手に入った。
「次は『作成』だ」
手に入ったばかりのレシピを使い、鉄の素材ゲージを消費し、鉄の剣を作成。
これも成功。
アオイの手に、新品の鉄の剣が握られた。
――――――
名前 :鉄の剣
攻撃力:+5
加護枠:なし
――――――
「鉄のゲージにはまだまだ余裕がある。もっと作れるぞ」
ゲージを全て使って、十本の鉄の剣を完成させた。
「こうなったら『合成』も試さないと!」
合成とは、二つのアイテムを一つにするスキルだ。
同じアイテムを合成すると単純に強化される。
別のアイテムを合成した場合は、新しい別のアイテムになる。
たとえば鉄の剣に、なにか炎属性のアイテムを合成すると、ゲームでは『炎の剣』になった。
今は持っているアイテムの種類が少ないので、鉄の剣同士の合成から試す。
まず鉄の剣を全て鞄にしまう。
そのうち二本を選んで、合成する。
すると再び、アオイの手に鉄の剣が現われる。
――――――
名前 :鉄の剣(+1)
攻撃力:+6
加護枠:なし
――――――
それを鞄に入れて、また合成。
――――――
名前 :鉄の剣(+2)
攻撃力:+7
加護枠:なし
――――――
それを繰り返して、十本あった鉄の剣を、一本にまとめてしまう。
――――――
名前 :鉄の剣(+9)
攻撃力:+14
加護枠:残り1
――――――
「やった。攻撃力が上がっただけじゃなく、加護枠が追加されたぞ」
――――――
名前 :鉄の剣(+9)
攻撃力:+14
加護枠:攻撃力+200
――――――
これで接近戦がかなりマシになる。
魔法師なので剣技系スキルを覚えないが、ただ剣を振り回しているだけでも、この町周辺のモンスターなら簡単に倒せるはずだ。
魔法を撃つときは杖、MPを節約したいときは剣、と使い分けるのだ。
「ビルダーのスキルは、ゲームと同じように使えるってハッキリした。装備を自分で使うのは当然として、売ってお金にするのもいいな。けど、あんまりやり過ぎると、この世界のバランスが崩れそうだから、ほどほどにしなきゃ」
アオイはスキルの使い方だけでなく、どうやって生活費を稼ぐかを考える。
今までは死ぬのを待つだけの人生だった。
生きることを真剣に考えなかった。
だから未来に思いをはせるのは、実に楽しかった。
「あとは……このアイテムがなんなのか調べなきゃなぁ」
それは、モンスターの死体が消えたあとに残っていたものだ。
形は正六面体。一辺の長さは五センチほど。
つまり少し大きめのサイコロという風のシルエットだが、数字を表わす記号は描かれていない。
ただ不思議な模様が刻まれている。
「ゲームでこんなの見たことないし。鑑定しても情報が出てこないんだよなぁ」
明日、冒険者ギルドで聞いてみよう。
そう決めて、アオイはベッドに横になった。
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