第4話 スライムとの戦闘
アオイが転生したこの町は、ラディクスの町という。
暮らしやすそうな田舎町という印象。
町の中心にある領主の城は、城というより大きめのお屋敷だ。
ゲームで見た豪華絢爛な王城と比べると質素に思えた。
大通りは活気にあふれているが、路地に入れば静かで緑が多い景色が続く。
病院暮らしが長いアオイとしては、いきなり大都市に放り出されては目が回るので、このくらいが丁度いい。
少し散歩をしてから、町の外に出る。
周りには草原が広がっていて、石畳で舗装された街道が延びている。
冒険者ギルドで受けた説明いわく、街道をひたすら歩いて行くと別の町に着く。
街道にはモンスター避けの術式が刻まれている。領主が雇った兵士などが定期的な見回りをしているので、盗賊もあまり出ない。
もちろん日本に比べれば治安が悪いのだろうが、それでも治安をよくしようという努力をしているらしい。
だがそれは街道沿いに限った話だ。
わずかでも外れると、そこは恐ろしいモンスターが蠢く、人間の法など通用しない場所となる。
アオイは街道から草原に入り、ひたすら真っ直ぐ進む。
すると草むらから、水色の丸い物体が飛び出してきた。大人の頭部ほどのサイズ。
プルプルしたゼリー状の体で、アオイに体当たりしてきた。
「スライムか。どのゲームでも弱いけど、この世界でも弱いんだなぁ」
何度体当たりされても、少しも痛くない。
アオイの防御力が高いからなにも感じない、というわけではない。
防御力が高くても、そよ風や、踏みしめる土の感触は分かる。
よって、このプニプニな体当たりにはゴミ箱をひっくり返す程度の威力しかない、というのも分かるのだ。
スライムに木の杖を振り下ろす。
むにっと潰れた。そしてシュワシュワと泡になり、蒸発してしまう。
二匹目のスライムが現われる。
また杖で倒そうとして、思い直した。
「そうだ。ボクは魔法師なんだ。だったら魔法を使ってみよう」
あのゲームだと、魔法師は最初から『マナボール』という攻撃魔法を使えたはず。
魔法師でプレイしたことはないが、攻略サイトを眺めていたらそう書いてあった。
「鑑定や加護は念じたらできた。なら攻撃魔法だって……マナボール!」
叫びながら杖をスライムに向ける。
すると杖の先端から、光の球が飛び出した。
なんの属性にも変換されていない、魔力の塊だ。
それは瞬く間にスライムを押しつぶし、そのまま貫通して地面に激突した。
轟音と衝撃。
まるで戦車砲が直撃したかのように土がめくれ上がって、周辺に飛び散った。
「凄い威力だ! 杖に魔力+200の加護をつけただけはある! ……けど、いつもこの威力だと使いにくいかも。調整できないかな」
弱いマナボール出ろぉ、と念じて撃つ。
すると地面を少しヘコませるくらいの威力になった。
「いい感じだ。威力が落ちた分、なんだかMPの消費も減った気がする。というかMPを消費したっていうのが感覚で分かるんだなぁ」
考えてみると当然かもしれない。
MPというのはつまり、魔法の持久力だ。
自分がどのくらい疲れているか体感できないと、体力がなくなって倒れてしまう。それと同じように、MPだって自覚できないと困る。
ゲームのように画面に表示されているわけではないのだから。
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