第3話 たー君の誕生日
今日はたー君の誕生日だ。私は、たー君よりも朝早く起きて、いつもより気合を入れてお弁当を作っている。そして、誕生日ケーキも作る予定だ。たー君は甘い物が大好き。そして、私も甘い物が大好き。だから、2人でケーキをホール食いした事も何回もあって、スイーツ食べ放題にも行ったりした。たー君が好きなスイーツはショートケーキだ。私もショートケーキが好きなので、クリスマスや誕生日はいつもショートケーキを作っている。
たー君が「もう仕事行くんだけど、お弁当は?」
私は慌ててお弁当を包んだ。
「ごめんね。いつもより豪華にしたから、時間かかっちゃったよ。」
「そうなんだ。ありがとう」
「うん。行ってらっしゃい。気をつけてね。」
「うん。行ってきます。少し帰り遅くなるから。会社の飲み会。」
「うん。わかった。」
たー君がドアを閉めた。私は少し悲しかった。なぜなら、誕生日パーティが出来ないからだ。ケーキは作るけど、会社の飲み会で遅くなるなら、夜中に帰ってくるだろうと思ったからだ。
それでもケーキを今から作ろうと思って、ケーキの材料の買い出しに今から行ってくる。
時刻は朝の8時。まだスーパーが開いてない。私はお弁当の残りを食べた。その後少し横になって、ウトウトしていた。寝かけようとしたとき、私の携帯電話の着信音が鳴った。
「もしもし。」
「あ、ゆずの?元気にしてる?」
その声は、聞き覚えがあるなと思っていたが、誰かは思い出せなかった。
「誰ですか?」
「え、覚えてないの?私よ。せりなよ。一緒の高校だったじゃない。覚えてないなんて悲しいよ。」
せりな。ああ。確か同じ美術部の同級生だったかな。思い出した。でもなぜ、急に電話なんかしてきたのかな。
「せりな。思い出した。ごめんね。私、忘れっぽいから。何かあったの?」
「それがね、彼氏が病気になっちゃったの。それで、お見舞いにイラストを描いてほしくて。
私の彼、ゆずののイラスト好きだからね。お願いできる?」
「うん。いいよ。彼氏さん大変だね。早く良くなるといいね。」
「うん。でも、もう寿命もそんな長くないの。余命半年って昨日先生に言われたの。もう、ショックでショックで、泣きわめいたわよ。どうして私の彼が!って。でも、この現実を受け止めないと前に進めないしね。悲しいけど、彼が死ぬまでそばにいて頑張るわ。だから、ゆずのの描いたイラストで私も元気になりたいの。」
「そうだったんだ。いいイラストを描いて彼氏さんもせりなも元気になって欲しいよ。」
「うん。ゆずの、ありがとう。」
「うん。せりな頑張ってね。」
「うん。ありがとう。じゃあ、またね。」
電話は切れた。せりなは友達ではないが、同級生だし、一緒に部活も行っていたので、せりなの彼氏が余命半年なんて、ショックを受けた。さっそくイラストを描き始めた。テーマは幸せな日々。イラストを描き始めて3時間。ようやくイラストが完成した。
「よし、上手くできた。喜んでもらえるかな。」
時刻は昼の12時になっていた。昼ごはん食べてケーキの材料買いに行くかと思って、また弁当の残りを食べた。食べ終わってケーキの材料を買いに行った。
家に帰って、さっそくケーキ作りに、とりかかった。
私はショートケーキを作るのが得意だ。たー君にも上手だと言われている。それで、たー君は私が作ったショートケーキを会社の人にも食べさせたいと言ってケーキを会社に持って行ってくれた事もあった。
ショートケーキを作るのは慣れているので、すぐに出来上がった。
来年のたー君の誕生日には、違うケーキを挑戦してみようと思う。
ケーキも出来上がったので、仕事を始めた。今日の仕事の依頼は小学校の教室に飾る防災訓練のポスターだ。1時間かけて描きあげた。仕事も終わったので、夜ご飯を作った。今日は、たー君は遅くなるので夜ご飯はいらないと言われたので自分の分だけ作った。1人の夜ご飯も、たまにはいいかもね。そんな事を思いながら、少し休もうと思ってレモンティーを飲みながらテレビを見ていた。
ウトウトして、いつの間にか寝ていた。時刻は夜の7時を過ぎていた。わ、寝すぎた。と思って、お風呂に入って、たー君の帰りを待つ。またウトウトし始めた。ドアの音がガチャっと開いた。
「ただいま。あれ?寝てるの?」
ドアの開いた音で目が覚めて顔を上げてみると目の前には顔を赤くした、たー君がいた。
「あ、おかえりなさい。早かったね。」
「うん。今日は俺の誕生日だから、お祝いしてもらわなきゃなって。早くケーキ食べたい。」
「うん。早くケーキ食べようね。あ、プレゼント買うの忘れちゃった。ごめんね。来年は忘れないように気をつけるよ。」
「プレゼントくらいいいよ。作ってくれたケーキだけで十分嬉しいよ。ありがとう。」
「うん。さあ、食べよう。いただきます。」
「うん、やっぱり、ゆずのが作ったケーキが世界一だな。ははは。」
「もーう。酔ってるねー。恥ずかしいじゃん」
2人はケーキを全部食べた。そして、一緒に眠りについた。
ゆずのは
「今日も幸せな1日でした。明日も幸せな1日になりますように。たー君大好き。愛してる。ずっとずっと一緒にいようね。」と
心の中で願うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます