第12話 非合法ってこと!?

「今日も今日とてギルドでクエスト受注して稼ぎますか・・・ってあれは」


「んっしょと、あれ、ルリカじゃないかい。どうしたってんだい?ギルドに用事かい?」


 やっぱり、シュナさんだ。


「お疲れですシュナさん。はい、これからギルドに行くんですけど・・・随分と大荷物ですけど、お出掛けですか?」


「ああそうさね、珍しい食材を取りにちょっと山の方にね」


 するとシュナさんは私の方を見てニヤリと微笑んで言った。


「そうだルリカ、アンタも着いてきなよ。報酬も弾むさね?」


 ・・・・・・


「な、何ですかこの高さ!?」


 すごい高い山だ・・・普通の装備でくるような山じゃない!


「たしか、3,500mだったかね?でも山頂までは行かんさね」


「そうなんですか、それでこんな所に何の食材を?」


「それはズバリ、ミレニアムマッシュルームさね」


 ミレニアムマッシュルーム?聞いたことのない名前だ。そう思っているとシュナさんが解説を始める。


「1000年に一度特定の菌糸から生えるキノコさね。1000年分の自然の旨みがあって幻の食材とされているのさ」


「そうなんですね・・・でもそういうのって勝手に取っていいんですか?」


「何でさね?」


「だってそういう食材って、ギルドを通したものじゃないと販売できないって・・・」


 するとシュナさんは、あぁと呟いて言った。


「その心配は必要ないさね。だってアタイの店はギルドから承認を受けてないからねぇ」


「そっかなるほど!・・・ってええ!?」


 承認を受けてないって、つまり非合法の店ってこと!?


「それで怒られたりとかしないんですか!?」


「そりゃ最初は怒られたさね。でもアタイの店が街の荒くれどもを手玉に取ってコントロールするようになってからは何も言わなくなったさね」


 確かに荒くれてる人たちは非合法の店の方が色々と都合がいいような。


「まっ、それでも犯罪は犯罪さね。だからばれる前にこうやって行動してるさね」


 ですよねぇ・・・


「さっ、着いたさね。これが例のミレニアムマッシュルームさね」


「なるほどこれが・・・でっかぁ」


 思っていた100倍以上はある、だいたい5mとかそこら?


 ガサガサッ!


 茂みの奥から何やら音がしてそちらを見ると小さなサルがこちらを見ていた。


「何かねあのサル?まあいいさね、ディザスタ」


 ウキャーーッ!?


 シュナさんがそう唱えるとそのサルは黒い球に飲まれていった。


「って!?今のって違法な魔法ですよね!?」


「おっ、ちゃんと学んでいるようさね。偉いもんさね」


「あっ、ありがとうございます・・・じゃなくて!怒られたりとか、しないんで・・・すか」


 ウキャッ!ウキャキー!


 なんかメッチャいるー!?さっきのサルメッチャいるー!?


「あれ?さっきのは子供の個体みたいだったさね、だから群れの他の個体が来たみたいさね」


「えっ、ど、どうするんです!?」


 するとシュナさんはニヤリと笑って言った。


「こうなったら掃討するしかないさね。ルリカは黙って見てるといいさね。スピーディア!」


 スピードで撹乱して隙を見て逃げるのか?


「まだまだ!パワーディア!」


 バフを自分で二重掛け!?そんなの可能なの!?


「さあ、元騎士団長の私の力、見ておくといいさね!万斬り!」


 万斬り!?それって確かヴァルさんとガルシアさんの技じゃ!?それにさっき元騎士団長って言ってたような・・・


「これで、お終いさね!」


 ウキャーーッ!


「うわぁ・・・」


 何だろう、死屍累々の地獄絵図って感じだ。きっと電波に乗せたらPTAが黙ってないぐらいの奴だ・・・


「さっ、早いとこ収穫して帰るさね」


「あっ、はい!」


 ・・・・・・


 収穫を終え帰り道を歩いている途中、私は気になったことをシュナさんに尋ねる。


「そういえばシュナさん、万斬り使ってましたけどあれって・・・それに元騎士団長って」


 するとシュナさんは歩を緩めて私の横に来ると話を始める。


「あぁ、そのことかい?言葉通りアタイは元騎士団長さね。そして万斬りも元は私の技さね」


「そうだったんですね。ちなみに騎士団長っていうのは女騎士団の方ですか?」


「いやいや、騎士団の全体を統括するポジションさね」


 なんと!こんなアングラな人が・・・


「でも何で辞めちゃったんですか?」


 私がそう尋ねると歩みを止めて話し始める。


「実を言うと、まだ続けたかったさね」


「じゃ、じゃあ何で・・・」


「そうさねぇ・・・まず始めにアタイとガルが結婚してるのは知ってるかい?」


 えっ!?それは何と驚くべき・・・でもそれに手間を取られたくはないな・・・


「はい、でもそれが何か?」


「アタイとガルは互いに最強の座を欲しいままにしてたさね。そしてそんな中なんとなく結婚したさね」


「けど夫婦らしい事は何もしてなかったさね。でもある日、アタイの体に異変があって医者に診てもらったさね。そしたらバフ魔法と肉弾戦による身体へのダメージで内臓がやられて子供が出来ない身体になったさね」


 wow・・・なんと言えば良いやら。


「その時にガルに言われたのさ。『俺はお前に辛い目にあって欲しくない。俺の妻として勇退してくれ』ってね」


「そう、だったんですね・・・」


 するとシュナさんは重い空気を吹き飛ばすように笑って言った。


「でもそれも過去のことさね!気にすることは何もないさね!」


 そして私とシュナさんは街に戻った。ちなみにシュナさんは取った物が凄すぎたのかギルドマスター総出で怒られてました・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る