第11話 スイの1日

「あっ、マリア!今日も家に来るの?」


「今日はお父様直々に許可を頂きましたの!」


 そうワタクシが言うとルリカは急に私に手を合わせて・・・


「ごめんマリア!今日は外せないギルドの仕事があって!」


 あら、そうでしたのね。しかし、でしたらどうしましょう?


「でも丁度良かった、今日スイ1人で留守番だからついててあげてよ」


「ワタクシでよろしくて?でしたらお任せくださいまし!」


 スイと、密室で2人きり・・・ウフフフフ


「マリア、大丈夫?」


「ハッ!だ、大丈夫ですわ。それではワタクシはスイのお世話に向かいますわ。ルリカもお仕事頑張って下さいまし」


「う、うん。よろしく・・・」


 ・・・・・・


「スイー、ワタクシが遊んで・・・ハッ!」


 今って実はスイのプライベートを覗く最大のチャンスじゃなくって!?扉の向こうには完全プライベートのスイがいるんですのよ!?


「そうと分かれば手段を選んではいられませんわ・・・ルカザ!」


 ブワンッ!


「よしっ、これで中を覗けますわ!見つかれば一撃で逮捕ですけれど、まぁバレなければ犯罪じゃないですわよね」


「・・・・・」ペラ


 あら、スイが絵本を読み始めましたわね。あれは・・・グーリグーラーですわね。ワタクシも小さい頃は母上によく読んでくださってましたわ。


 特にグーラーが親指を立てながら巨大なカステラに沈んでいくシーンは涙なしでは見られませんわ!


「・・・・・」シュンッ


 あっ、悲しんでますわ!きっとグーリの目の前でグーラーが射殺されてシーンですわね


「・・・・・」パァッ!


 あっ!明るくなりましたわ!きっとグーラーがサイボーグ化して復活したシーンですわ!


「・・・・・」ポロポロ


 泣いてしまってますわ!絶対にグーラーが親指を立てながら巨大なカステラに沈んでいくシーンですわ!


「・・・・・?」パタン


 首を傾げて本を閉じましたわ。恐らく最後のカステラと一体化したグーラーをグーリが切り分けるシーンですわね。


「・・・よく分からなかった」


 ワタクシも改めてそう思いますわ。


「でも、何だか面白かった」


 ワタクシもそう思いますわ!


「・・・・・お水、あげなきゃ」


 あっ!外に出てきますわ!ワタクシも隠れないと!


「えっと、最初はトマトさんから・・・トマトさん、たくさん育ってね。スイ、楽しみにしてるよ」


 あら^〜お野菜に話しかけてますわー!ピュアッピュアですわねー。お菓子をあげたくなってしまいますわー!


「・・・やってみましょう。えっと、スウィーティア!」


 ポポンッ!


「・・・アレ?お菓子、落ちてる。食べたい。でも、今日もう食べた。だから、食べれない。食べると、ルリカ、怒る」シュンッ


 ああ!!我慢できて偉すぎますわー!きっと将来はいいお嫁さんになるに違いありませんわ!でも生半可はスライムではワタクシが許しませんわー!


「あっ、お買い物・・・しなきゃ」


 あら?お使いに行くんですの?偉いですわねーホンットに立派ですわねぇ・・・


「買うもの、ニンジン、ジャガイモ、エレキビーフ、スパイスセット・・・うん。覚えてる」


 今日はきっとカリーですわね。王宮で出ることはありませんが、城下町で見た事がありますわよ!きっと美味しいものですわ!


「鍵、閉めて、いってきます」ペコリ


 あっ!どこかへ行ってしまわれますわ!追跡開始ですわ!


 ・・・・・・


「ようスイちゃん!今日は1人かい?」


 これは・・・野菜屋さんかしら?ワタクシ、初めて見ましたわ!


「うん、お買い物、お姉ちゃんに、頼まれた」


「そうかそうか!偉いなぁスイちゃんは!」


 そうですわよそうですわよ!スイはとても偉くってよ!


「そんなこと、ない・・・えと、今日買いに来たのは、ニンジン、ジャガイモ、エレキビーフ、スパイスセット」


「あーっと、悪いなスイちゃん。この店八百屋だからよ、ニンジンとジャガイモしか売ってねぇんだよ。だから残りの2つは別の店行ってくんな」


「そう、分かった。じゃあ、ニンジンとジャガイモ。ください」シュンッ


「あー!そんな顔すんなって、スイちゃんならなんとかなるって!」


「うん、スイ、頑張る!」グッ!


 ・・・・・・


「ただいま、あっお姉ちゃん」


「おかえり、スイ。あれ?マリアちゃんは一緒じゃないの?」


「・・・ん」ピッ


 あら、何やらこちらを指さしましたわね。もしかして・・・


「マグネシア!」


「きゃっ!?」


 お2人の前に引き摺り出されてしまいましたわ。


「マリア、どういうことか・・・説明できる?」


「あ、えっとですわね・・・」


 ・・・・・・


「つまり、今日1日スイのストーキングをして観察してたと」


「うう・・・」


 まさかバレていたなんて、何だか悔しい気分ですわ!


「ですがスイ?いつから気づいたらしたの?」


「んっと、多分、最初から」


「えっ、そうでしたの!?でしたら言ってくだされば良かった出したのに・・・」


 するとスイは少し考えた素振りをしておっしゃいました。


「んーと、ファンサ」ブイッ!


「・・・ヒュッ」パタッ


「マリア?マリアーッ!?」

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