第10話 オッス!

「フレアラッ!」


 今日私は街の周りのモンスターの退治をしています。そして今日は私1人じゃありません。


「てりゃーーっ!!」  「エレキラ!」


 新人さん2人もついてきています。というのも・・・


『今日のクエストだが、新人のサポートもしてもらうことになっている』


『新人さんですか?』


『ああ、今日付けでランク5に上がったばかりだから教育係が付く必要があるんだが今は人手が軒並み出払っていてな』


『そうなんですね、分かりました。引き受けます』


 と、いうことです。


「先輩っ!今の動きどうっすか!?良かったっすよね!?」


「う、うん!いい感じだったよ」


「オッス!ありがとうっす!」


 この体育会系の女の子がトウカちゃん。肉弾戦とその補助をするバフ魔法が得意。


「こらトウカ、あんまり詰め寄ると先輩が困ってしまいますよぉ」


 このおっとりとした女の子がマナカちゃん。魔法全般、特に補助魔法が得意。


「ここ周辺ではモンスターの気配は感じないですねぇ・・・」


「うん、でも気をつけて。デスワームとか陰湿ゴブリンとか気配を消すモンスターの目撃例もあるから」


「そんなのが出てもウチらなら大丈夫っすよ!」


 なんかスゴいフラグに聞こえるなぁ・・・


「あら?何だか地面が揺れてませんかぁ?」


「ホントだ。珍しいっすね、ここらへん滅多に地震ないっすのに」


 いや、この揺れは・・・まさか!


「2人とも伏せて!」


 ドオオオォォォォ・・・・・ン


「何すかこの音!?」


「まだ確信はないけど、多分スゴいのが現れたんだよ。行くよ!2人とも!」


「オスッ!」 「はいっ!」


 ・・・・・・


「・・・いた!やっぱりだ」


「ええ!何すかあれ!」


「トウカ、あれはギガントワームですよぉ。学校で習ったではありませんかぁ」


「ウチ、初めて見たっす!」


 私も存在をガルシアさんから聞いたくらいで本物どころか写真ですら見た事がなかった。にしてもデカすぎる!パッと見でも10m以上はあるよ!


 ギギ・・・ギギガガ・・・


「こいつ、こっちに向かってきてるっすよ!」


「いや、きっと狙いは街だよ!」


「ルリカさん、どうしますかぁ?」


 きっと戦っても倒せるような相手じゃない。でも方向的にこのままだと街にアイツが、こうなったら仕方ない・・・


「きっとしばらくしたら応援が来るはず。だからそれまでの間応戦するよ!」


「まずはマナカがシバリアで相手の動きを封じて、その間に私がトウカにバフ魔法をかけて、そしてバフのかかったトウカを前衛にして戦うよ!」


「分かりましたぁ、それでは、シバリア・・・きゃっ!?」


 シバリアを唱えるとほぼ同時にそれが弾け飛んでマナカが吹っ飛ぶ。


「大丈夫っ!?マナカ!」


「だ、大丈夫です。でも、シバリアがまったく効きません!」


 くっ、これは困った。一体どうすれば・・・


「こうなったら!自分が行くっす!」


「あっ!待ってトウカ!」


「とりゃぁぁぁ!!」


 ゴンッ!


「こ、こいつスゲェ硬えっす!?」


 ギギガ・・・ガガグァーーー!!


 危ないっ!こんなときは・・・


「マグネシア!」


 私がそう唱えるとトウカとマナカが私の元に引き寄せられる。


「た、助かったっす・・・」


「でも、どうしますかぁ?恐らくキズの1つのつけられませんよぉ?」


 そうだ、さっきは負傷を免れただけで状況は悪化してる。どうしたら・・・


 ギギグ・・・バボバァ!


 そうギガントワームが音を立てると酸の玉を吐き出してきた。


 ヤバイっ!防御が・・・


「「ディフェンシア!」」


 そう後ろから声が聞こえると、目の前に防御呪文が張られていた。


「ようやったなお前ら」


「ガルシアさん!」


「「ヴァル団長!」」


 防御呪文を唱えたのはガルシアさんとヴァルさんだった。


 2人が私たちのそばに駆け寄るとヴァルさんが私たちに怒鳴った。


「何故お前ら新人冒険者がここにいる!ここはお前らの管轄ではないぞ!」


 それを宥めるようにガルシアさんも続く。


「まあまあ、そんな怒るなよ。大方なの地鳴りに駆けつけてきたって所だろ。まあその動きの速さは評価する」


「だからこれから課外授業を行う。お前ら冒険者が目標とする存在の動きを目に焼き付けろ」


 するとガルシアさんはギガントワームの方を向いてヴァルさんに声をかける。


「おいヴァル、何分でやれそうか?」


「そうだね、5分かかればアウトってところじゃないかな?」


 5分っ!?私たちの攻撃が全く通用しない相手なのに!


「そうだな、じゃあ最初から飛ばすか!」


「了解、それじゃあ・・・スピーディア!」


 ヴァルさんがそうスピード強化魔法を唱えると同時にガルシアさんがパワー強化魔法をヴァルさんにかける。


「それじゃあ、これから君たちに女騎士団団長と騎士団長の合わせ技を見せてやろう。よろず斬り!」


 速っ!ていうか目で追いきれない!?


「ルリカ先輩!あれめっちゃ速いっすよ!ウチは目に自信あるっすけど、それでも攻撃するときの動きが遅くなるときに見えるだけっす!」


「これが、国の最高戦力なんですねぇ」


「これで・・・最後だぁ!!」


 そのヴァルさんが聞こえると同時に姿を現す。ギガントワームには多くの傷があった。


「やれてそうか?」


「さあ、思ったより頑丈だったからね。分からないよ」


 ギ・・・ギ・・・


「おや、ダメだったみたいだ」


「そのようだな、じゃあアレやるぞ、ヴァル」


 そう言うとガルシアさんは私たちの方を向いて言った。


「こっから先は参考にすんな。命賭けでもしねぇ限り辿り着けねぇ領域だ」


 そう言うとガルシアさんは魔法を唱える。


「特殊魔法!水籠城すいろうじょう!」


 するとギガントワームが水に包まれる。


「そんで、ソルタリア!」


 塩化魔法!?わざわざ水を塩水にしてどうするんだ?


「準備できたぞ!ヴァル!」


「ああ、それでは喰らうといい。エレカリア!」


 ギギギギギガァ・・・・・!


 そう音を立ててギガントワームが倒れた。


「これで、討伐完了かな」


「ああ、わざわざ来てもらって申し訳なかったな」


 するとマナカが2人に疑問を尋ねる。


「あの、ひとつ聞きたい事があるのですがぁ」


「お?どうかしたか?マナカ」


「最後の攻撃ですが、ワーム系統のモンスターには雷魔法が効かないと学校で学んだのですが何で効いたのでしょうかぁ?」


 その質問にガルシアさんが1つ咳払いをして説明する。


「確かに通常、ワーム系統は絶縁性の皮膚を有しているから雷魔法は効かねえ。だが、中は別だ」


「と、いいますとぉ?」


「皮膚一枚超えた先には雷魔法が効くってことさ。だから俺らはああやって塩水で奴をおおってそこにエレカリアを打ち込むことで傷口から魔法を通すって訳さ」


 なるほど、だからああやって・・・


「そういえばガルシアさん、あの水で覆う魔法は何なんですか?」


「あれは俺のオリジナルの魔法だ。使えるのも俺だけだから気にすんな」


「はい・・・」


 やっぱりこの2人、メチャクチャに強い・・・





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