結……(5-8)

 僕が歩と一緒に遊んでいる。楽しくて、楽しくて。でも歩は変わってしまった。悲しむ僕は目標に向かって歩き出す。

 そこに疑問が浮かんだ。

 ――忘れている存在がいるんじゃないのか?

 そうだ。歩は変わった。ならば、変わった先の歩は僕と無関係なのだろうか……それでいいのだろうか。

 ――ずっと考えなかった。考えないようにしていた。

 理由は分かりきっている。

 ――だって、変わった歩を見るのは辛いから。

 そして今、歩は去ろうとしている。僕はまた問う。それでいいのか。

 ――昔と変わらず、孤独に誰かを助け続けた少女を失っても構わないのか?

「駄目だ」

 情景が浮かんだ。歩が背中を向けて離れていく。どんどん距離が開いて……ふと、後ろ姿が振り返った。

 その顔は、さっきと同じ。今にも泣き出しそうだった。

 ――【常無歩】が記憶を失った後、僕は【飛剣歩】の側にいるべきだったんだ。

「僕は、馬鹿だ……」

 ――当たり前だ。生まれ変わった歩の隣で一緒に進むだけでよかったんだから。

「なら、」

 ――失っちゃいけない。否、失いたくない。

 だから僕は手を伸ばす。記憶を失っても、優しいままでいてくれた少女に。

「……痛……ッ」

 現実でも伸ばした腕が砕けた肋に響く……その痛みで目が覚めた。

「痛ってー……歩め」

 周囲を見回すが、歩の姿はない。傷の痛みに耐えながら、出来るだけ早く窓から校庭を確かめる。ここは一階だから見通しはよくないが、見ないよりはマシだろう。

 約束の場所に二人の姿はない。さらに遠くへ目を遣ると――

「いた……!」

 異常に広い校庭の遥か遠く、どうにか視認出来るくらいの位置を二人は歩いていた。しかしその背中は離れる一方だ。

 僕は眠気と痛みを無視して、保健室の窓から校庭に飛び出した。

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