転……(4-8)
「玩具会社【トイトイ】?」
「ええ、その会社の倉庫に連れて行かれそうになったらしいです」
四人で足早に倉庫区画へと向かいながら、僕は紗智に事件の概要を訊ねていた。
「……どんな会社? 誘拐事件に関わってるのかな?」
「いいえ、それはないですね」
「どうして言い切れるのよ?」
歩の質問に紗智は露骨な表情を浮かべ、
「……倒産してるから」
なるほど。そうなると、倒産した会社の倉庫が犯罪の温床になったわけか。
――ん?
「あの、さ」
ふと、どうでもいいことが気になった。
「なんですか?」
「その会社……どうして倒産したんだ?」
重要な話題ではないが、興味深い質問だとは思う。というのも、この街では貧富の差が激しい。それは貧しい物は貧しいままであることを意味するし、富める者が裕福なままであることも意味する。つまり、会社を立ち上げたならば……そう簡単に倒産なんてしないものなのだ。
「それは……その……」
しかし、紗智は口を濁らせた。噂だけで、知らない部分だったのだろうか。
「いえ、知ってるんですけどね……。言いにくいというか……街の汚点というか。簡単に言うなら、会社の運営方針が失敗だったのです。その……固執? して」
「固執? 何に固執したのさ?」
「ぬいぐるみしか生産しなかったそうです。それも……【ポチャゴリ】などというわけの分からないキャラクターだけに総資産の八割をつぎ込んだと聞きました」
……なるほど。馬鹿だったわけだ。
全員が納得し、同時によく分からない空気が漂った頃――倉庫区画へと差し掛かった。
ここからは気を引き締めて、慎重に目的の倉庫へと向かわなくては。
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