転……(4-3)

 そして僕達の活動室に天野さんが到着した。大急ぎで僕が普通科から連れて来たのだった。まだ普通科は授業がある。しかし依頼を受けると話したら、すぐに相談したいと付いて来た。授業は休むのだろう。

 ――状況的には昨日の続きだ。

「さっき言ったように、やっぱり依頼を引き受けさせてもらう。事情を話してもらえるかな?」

「ありがとうございます。えっと、何から話そうかな……まずは、行方不明の生徒ですけど。とりあえず、名前は瓦田双太(かわらだそうた)です」

 知らない名前だった。普通科だろうか。

「いえ、物語科ですよ? 知りませんか? Bクラスなんですけど……」

「いいや、物語科は基本的にクラス同士の交流は少ないから」

「そうですか。他に特徴というと……背が高くて、髪は短く刈っています」

 ――なるほど、運動選手みたいな人なのかな。

「あとは……強面で、見た目は凶悪ですよ」

 ――悪人っぽい雰囲気……あれ? 見たような気が……

「それから、最近顔に大きな怪我を――」

「ちょっ、ちょっと待って」

「はい? 何ですか?」

「その人って、Bクラスの六班?」

「そうですけど……」

 僕は顔を覆う。見れば、歩も同様だった。ただ、紗智だけはぷるぷると笑いを堪えていた。覚えてろよ。

 ――そうか。短髪の彼は瓦田双太って言うのか。

「ごめん。その人なら知ってる。特徴も大体分かるからいいよ」

 不思議そうな表情を浮かべ、天野さんが見つめてくる。僅かな罪悪感。彼の顔の怪我は僕のせいでした。

「話を進めようか。彼……瓦田君が消えた経緯とかは分かってるの?」

「実は……ほとんど分かっていないんです。ちょうど一週間前から消息不明なんですけど、その日も授業は受けたそうです。それから家に帰ってないという状況で……」

「なるほど……学校帰りに消えたことしか分からないってことか。なら、場所は?」

「私の家とアイツの家は近いので、通学路はほとんど一緒ですけど……正直、見当が付きません」

 紗智が天野さんに気付かれないよう、口端を吊り上げて皮肉げに嘲笑う。そんなことも分からないのか、と。正直腹は立ったが無視することにした。

 歩の方は真剣に考えているようだが、名案はなさそうだ。

「よし。じゃあ、実際に街まで出てみよう。君の通学路で怪しい場所を見て、軽く聞き込みまで出来るかな。天野さんは来ますか?」

 何度も頷く天野さんを連れて、僕達は街へ出ることにした。

 ――校則違反の始まりだった。

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