第39話 最終選考
妄想……もとい執筆が捗る一月末。
大寒どころかテンションがわけわかめになるほどホットなニュースが飛び込んできた。いや、飛び込んできたわけじゃなくて自分で検索したんだけど。
KODAIラノベ大賞の最終選考。私の作品が見事に残ってました。
思わず二度見した。
いやね、自信がまったくなかったと言えばウソになる。
ぶっちゃけ、KODAIラノベ大賞は前世でも受賞してるわけだし、可能性はあるとは思ってた。でも、それ以上には落ちる可能性があると思っていた。
これは何も謙遜してるわけじゃなくて、投稿するにあたって最近のラノベを勉強した結果だ。
なにせ私が書いていた時代とあまりにスピード感が違う。
細かい描写や設定よりも優先される物語の展開速度。
それによってもたらされるのは、まさに今のページが次のページをめくらせるような圧倒的な没入感。もはや中毒的と言ってもいいかもしれない。
それがインターネット上にこれでもかというほど無料であふれている。しかも、アマチュアの人でもプロと遜色ないレベルの人が多くいる。
小説もまさに日進月歩。私が書いていたころとは大違いだと思い知らされた。
その厳しさがわかってるからこそ、この結果の驚きと喜びはひとしおだ。
最終選考に残るのは、受賞とほぼイコールと思っていい。
ここまでくれば、まず作品間のレベル差なんて一部の天才の作品を除けばほとんどない。レーベルや編集者の好みで受賞か否かが変わる位の差だ。
場合によっては、受賞を逃しても担当編集者がついてデビューすることもあるし、そもそも最終選考の中で受賞する作品は半分以上。倍率で言えばもう二倍を下回ってる。
今回は私の作品を含めて六作品が最終選考に残ってるみたいだけど、例年の傾向を見ればこの中で四作品は受賞できると思う。
「ふぁあぁあー」
思わず変な声が出る。部屋の中で小躍りしそうだ。誰かにこの快挙を叫びたい変なテンション。
今日は眠れないかもしれない。
◇◇◇
最終選考に浮かれてた翌日。
冷静になった私は大いに慌てた。
早くDENGEKI大賞に応募しなければならない。
幸運なことに光栄なことに、受賞するということはイコールKODAI社からのデビューを意味する。
それが決まっておきながら他社の新人賞に応募するというのは、横紙破り、タブー。
当然だ。出版社は受賞者が自社に利益をもたらすからこそ、莫大なコスト、費用や労力を割いて新人賞を開催している。
その受賞者がライバル企業に利益をもたらすようじゃ何のために受賞させたのかわかりはしない。
そういう出版社の事情は大いにわかる。
わかるけど、作家側にも作家側の事情がある。
出版社ごとに売れ筋のジャンルは違うし、編集者の当たり外れもある。
複数の出版社の契約を知ることで、不当な契約を避けることもできる。
何より前世みたいにA社でクビになったとしても、B社で書ける。
何事においてもできないこととできるけど選ばないことには、結果は同じだったとしても意味が大きく違うのだ。
ということで、結果が出る前にDENGEKI大賞に応募しなければならない。
最終選考に残ってる段階でそれは不義理じゃないかと言われそうだけど、こっちだってこれからの未来がかかってるのだ。そこは申し訳ないけど、まだ受賞連絡も来てないわけだしご勘弁いただきたい。
だから、急げ私っ!
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