第4話 お勉強(ステータス編)

ユリスが前世であり普通のサラリーマンだった水瀬悠久みなせゆうきの記憶を取り戻した時、今まで自分を育ててくれていた師匠サラ・フローウェンが天界で手伝いをしていた相手である女神ヴェルサロアの依代である事が判明した。

ただ、天界の仕事が忙しいのかあまりこちらに降りてくることはなく、基本的にはサラが転生後のサポートをする事になった。そして記憶を取り戻したユリスにサラがみっちりと修行をつけると宣言してから3年経ち、グリズリートレントから特定のドロップを周回して手に入れるという課題をクリアしたところでヴェルサロアからこの世界についての説明が始まる。


「さて、久しぶり…かしら?まだ天界との時間の流れをうまく合わせられてないからいまいちそっちの感覚が分からないのよねー

 まあいいわ、今日は転生してから初めての解説だし、気になるところがあればそこから説明するけど何かある?」

「ああ、久しぶりヴェル。こっちは記憶が戻ってから5年ってところだな。

 にしてもようやく解説か…天界で聞いても教えてくれなかったし、師匠も修行に関する事以外は教えてくれなかったし。

 気になるところね…なんとなくでわかったものも多いが…まずはステータス関連かね」


そう言いながらユリスは自身のステータス画面を開く。


―――

【名前】:ユリス

【年齢】:10歳

【種族】:狐獣人(2尾仙狐)

【レベル】:17

【HP】:E

【MP】:EX

【STR】:I+

【VIT】:H-

【INT】:SS

【RES】:C+

【AGI】:G


【紋章器(Lv.1)】

①[仙狐(無)]

 スキル:『魔力充填(尾)』、『身体変化』、『隠密』、『魔力収束』

 アビリティ:MP+3、INT+3、RES+2、AGI+2

②[調律]

 スキル:『調律』、『操作』、『干渉』、『制限強化』

 アビリティ:MP+6、INT+4、RES+4

③[魔化]

 スキル:『魔化』、『付与』、『魔纒』、『変質』

 アビリティ:MP+6、INT+4、RES+4

④[創造]

 スキル:『創造』、『障壁』、『結界』、『封印』

 アビリティ:MP+6、INT+4、RES+4


【紋章効果】

①[魔神の愛し子]

 スキル:『魔力還元』、『魔の化身』

 アビリティ:MP+6、INT+6


【ユニークスキル】

『神の指先』

【パーソナルスキル】

『鑑定(EⅩ)』、『収納』、『合成』、『紋章術』、『武技』、『移動法』


【奥義】

兜割かぶとわり』、『覇王一陣はおういちじん』、『魔龍招来まりゅうしょうらい


【加護】

『世界神の祝福』

―――


「そうだな、まずは種族か。

 そういえば種族ランダムって言ってたが、狐獣人なんだよな。

 これってどうなんだ?初期ステータスが見るからに魔法系に偏っていたが」


(確かに何度か狐獣人が好きだとは言ったような気がするが、自分がなるとは。っていうか本当にランダムだったのか?)


「狐獣人は魔法系の獣人の一種ね。進化先によっては物理型にもなれるけど」

「進化があるのか。しかも、その言い方だと色々種類がありそうだな?」

「まあ進化自体は色々条件があるから、それは自分で探してちょうだい。簡単なやつもあるけどね。

 後は…これは他の種族でもそうなんだけど、分岐っていうか別の種族に進化できることがあるわね。

 ま、それはあとで説明するわ…この進化以外はする人がほぼいないし」


ヴェルサロアはユリスに聞こえないレベルの声量で呟きながら視線で次を促す。


「んー…能力関連はランク制みたいだが、レベルアップで成長しないのか?あと【DEX】はないのか?」

「成長はするわよ?まず、ベースレベルアップ時に種族や個人の才能によって決まった適正を元に確率で各能力…アビリティのランクが上がる仕様になっているわ。ランクはI〜EXの全部で32段階ね。ただ成長確率はかなり低いし結構運が絡んでくるから適性が高いものでも1ランク上がるのに10レベルとか余裕でかかるわね。比較的初めの方は上がりやすいけど、段々上がり辛くなっていくわ。

 それと【DEX】についてはゲームではよくあるステータスだし、どうしようか迷ったんだけどね。もし【DEX】があったら紋章を付けたり魔物を倒すだけで器用になっていくでしょ?それだとみんな試行錯誤しなくなって、技術進歩が停滞しそうだったし【DEX】関連はステータス外の能力ってことにしたわ。

 スキルにも覚えるだけで達人級になれるなんてものはかなりレアだから、基本的にはこつこつ修行あるのみよ」


(紋章関連は…メインっぽいし最後でいいか。

 ユニークスキルは個人ごとにいくつか覚える特別なスキルだったよな。で、パーソナルスキルはユニーク以外の個人所有スキルと…)


「なら…次は加護のところだな。

 師匠から聞いた内容に間違いがなければ、5歳の時に貰えるのは加護のはずなんだが…なんか祝福ってなってたぞ」

「ん、加護についてね。

 祝福になってるのは、天界であなたが言ってたでしょ?チートスキル云々ってやつ。あれを入れるために色々手を加えたせいよ。肉体を作ったのも私だし、流石に加護のままは無理だったわね。内容についてはステータスウィンドウに対して鑑定してくれれば見れるから見ておいて。

 ちなみに、他の神なら祝福を持ってる人はいるけど、『世界神の祝福』を持ってる人はあなたと私の依代になれるサラくらいなものよ。

 教会関係者にバレたら大ごとになるかもしれないから、公開は慎重にね。

 あ、祝福の効果ではないけど頭の方も強化しておいたわ。他にもいろいろ付けてみたかったんだけど、やり過ぎてもつまんなくなるだけだしやめといたわ。

 まあ、気が向いたら付け足していくかもね」

「なるほどね…」


(つまらないっておい…途中でやめてくれて良かったと言うべきかどうか。まあこれでも充分チートか。現段階で出していた要望は満たしてくれてるしな)


早速鑑定をしつつ相槌を打つユリスが見た内容は


―――

【名前】『世界神の祝福』

【効果】

世界神に特定の個として認識され、気に入られた証。

ステータス付与、紋章器付与(強)、転送、ステータス確認、幸運、技能最大付与の効果がある。

―――


であり、天界で希望していた鑑定と収納スキルと幸運効果の付与に加え、加護で付与される紋章器にも(強)の表記が付け足されている。


「鑑定と収納はエクストラ技能も含めて最大でつけてあげたけど、そこまでいってるのは世界中探しても数人いるかどうかってところじゃないかしら?

 エクストラ技能っていうのは特定のアイテムを使うことで追加される技能や効果のことで、追加されるとスキルに『〜(EX)』って付くわね。もっとも初期紋章によっては最初から付いている場合もあるけどね」

「そうかそのレベルなのか。…気をつける必要がありそうか?」

「広めるつもりがないならエクストラで解放される技能を使う時は気を付けた方がいいわね。それも鑑定すれば分かるわよ」

「ふーむ…信用できる貴族以上に繋がりが出来ればってところか」

「そうね。万全を期すなら王族か宰相辺りがいいけど貴族にも信用できるのはちゃんといるから自分で見極めるといいわ」

「なるほど…

 そういやユニークスキルなんだけど…」


そう言ってユリスは自身のユニークスキルを鑑定する。


―――

【名前】『神の指先』

【効果】

器用さが大きく上昇する。また、指が関係する行為に大きく上昇補正がかかる。

―――


「指が関係する行為ってなんだよ!?」


鑑定結果を見た時から気になってしょうがなかった説明に遂にツッコんでしまった。


「あ、神の指先が付いたんだったわね。

 ユニーク…というかスキルはものによって差はあるけど、効果を得やすくするためにわざと説明を曖昧にしているものがあるの。私が作ったのはそんなタイプが多いわ。まあ、あなたが作ったスキルもあるし複雑な条件たっぷりなものもあるけれど。

 ちなみにユニークと言っても他人と同じスキルの場合もあるし、加護を得ると同時につくスキルってだけで普通のスキルがつく場合もあるわ。まあその場合はあなたの鑑定みたいに最大技能になるから基本的には強力になるわ」

「あー…そういえば手分けして作ったんだったな。思い返してみれば最終確認の時にリストで見たわこのスキル」


(まあ器用さが上がるってよく考えたらかなりやばい効果だし、ネタスキルが付くより何百倍もいいかな)


「ちなみにユニークスキルは特定の条件を満たすと増えていくからね。次に増えそうなのはレベル30の時かしら」

「ほう…」


レベル30でユニークスキルが増えると聞いたユリスは俄然レベル上げにやる気が出てくるのであった。


「次は紋章ね。

 ただ、ちょっと長くなるかもしれないから先にご飯を食べてみたいわ。こっちでの食事ってどんなものなのか気になるし。

 ああ、食後にお茶もお願いね?」

「はいはい、わかりましたよ」


ヴェルサロアのお願いに肩透かしを受けたユリスはしぶしぶ席をたち、昼食の準備を始める。


「ありがと……ふう。

 予想以上にレベルが高かったわね。この世界の食のレベルは結構低いって聞いていたんだけど…あなたの腕のおかげかしら?

 まあいいわ。それじゃあ紋章について説明しましょうかね」


昼食を食べ終わり、食後のお茶を飲んで一息ついたヴェルサロアは説明を再開した。

彼女の感想をスルーしてしまったために後々苦労する事になるのだが、そんな事は知る由もないユリスは説明の方に集中してしまうのであった。


「紋章はね、んー…スキルを覚えたりアビリティを強化するアクセサリーみたいなものかしら?」

「まあ確かにそんな感じだな」

「紋章は4つまで…といっても1つは種族専用の紋章だから実質宿せるのは3つまでね。

 紋章には段階があって紋章器のレベルによって習得スキルやアビリティの上昇量が増えていくの。紋章器のレベルはベースレベルや上位進化、祝福の付与とかで上がっていくけど、今のところは最大で5ね。

 あ、そうそう。とりあえず貴方に合っていそうな紋章はサラ経由であげたけど、もし他のがよければ自分で頑張って探して頂戴」

「ああ、だから師匠が渡してきたのは使いやすくて強力なものばかりだったのか。感謝してるよ、ありがとうヴェル」


(相性がいいかつ強い紋章で固めるのは大変そうだし、用意してもらえて助かったな。もっともそのラインナップが結構特殊なせいで、戦闘スタイルの確立に苦戦してはいるんだが)


「ふふん、どういたしまして。

 ついでに言うと紋章を外すと対応する紋章スキルは使えなくなるわ。エクストラ技能の有無なんかは個人に記憶されるからまた宿せば元に戻るけどね」

「なるほど…」

「ダンジョンで手に入るレアアイテムのスキル石を使った場合も同じね。基本的に反映されるのはスキルだけだから空のスキル石とかで人から貰ったスキルにはエクストラ技能は付いていないわ。

 紋章についてはこんな感じかしらね…ああ、注意し忘れたけどスキルもエクストラ技能も覚えていれば全員が同じ水準で使えるようになる訳じゃないわ」

「…その辺は師匠に少し聞いたな。スキルや技能には発動条件が存在するから自在に使いこなすにはセンスが要求されるって話だったか?

 そのせいで属性魔法は諦めるように言われたんだよな」

「そうね。一定ラインまでは修行していけば修める事ができるでしょうけど、やっぱり向き不向きがあるでしょうね。例えば鑑定なら魔力操作…特に集中がキーポイントになるから操作が苦手な人は大した内容を見る事が出来ないって事になるわ。

 属性魔法がダメって事は属性変換かしら?」

「いや、魔力射出の才能が絶望的なんだとさ。遠隔発動も普通より遥かに下だと…もう諦めたよ」

「ああー…」


(……にしても鑑定って魔力を集中させると内容が増えるのか。いい事を聞いた…後で試そう)


思わぬところで予想外の収穫があったユリスだが、一先ずは全部の説明を聞いてからと気持ちを抑えて続きを待つ事にする。



「そうそう、あなたが宿してる紋章だけど全部かなりのレア物よ。合成もしたみたいだし中級以上のダンジョンを一生攻略し続けても揃うかどうかってレベルね」

「………ヴェル様ありがとうございます」


自身の紋章の貴重さを聞いたユリスは思わず平伏してしまう。属性魔法が使えない事などどうでも良くなる程の情報だったようだ。


「ふふ、さてと次は紋章効果ね。といっても簡単だけど…言うなればセット効果ね」

「あーはい、だいたいオーケーだ」


(特定の組み合わせで装備するとボーナスがあるやつだな。昨日発現したばかりで確認してなかったけど、MPとINTがかなり上がってたし、能力アップとスキルの付与ってところか。

 ああいや、なんか他にも特殊効果もあるみたいだな)


「やっぱり話が早いわね。1つ特徴があるとするなら、特定の紋章効果には発生させることでどの種族からでも同じ種族…魔人族に進化できるようになるものがあるわ。見た目は元の種族に準拠するものが多いけどね。

 あ、これが初めの方で説明を飛ばしたやつね。人間族はそのままだと進化するのがかなり厳しいから、魔人族を目指す人がほぼ全てね」

「獣人族にはあまりいないのか?」

「いなくはないわよ?ただ獣人族はそのままでもレベルを上げるだけで進化できるからね。進化すると魔人族にはなれなくなるし、進化用の紋章はレアだから通常進化を目指す人が多い印象ね。

 ああ、基本的には魔人族に対する差別とかはないから安心しなさい」

「基本的にはね…まあそんなもんか」


(僕も前世での種族知識は捨てないとな。魔人って聞くだけで既に悪側っぽい印象にかられてるしな)


サラの言葉から一部では差別があることを察するが、仕方ないと割り切る。


「あとは、魔人族に進化すると種族紋章が変化するわ。大体は強力になるけど、元の紋章にあったスキルは全部使えなくなるから欲しいものがあったらあらかじめ抽出しておく必要があるわね」

「それがさっき言ってた物理型に変更する進化ってやつか」

「そのひとつってところね。普通の進化でも構成が変わることもあるからね。

 さて…これでステータス関係は大体説明したかしら…?」

「そうだな…あ、まだ奥義ってやつが残ってるぞ」

「え!?もう奥義が解放されてるの?」


ユリスの発言があまりに意外だったのか、ヴェルサロアはステータスを慌てて確認している。


「ほ、ほんとに覚えてる…しかも3つも。

 …こほん。なら、気を取り直して説明するわ。もうちょっと後で説明するはずだったのに…」


確認を終えたヴェルサロアは少し拗ねた様子で説明を始める。


「奥義は最低ひとつは自力で覚えないとステータス欄に表示されない隠し要素…って扱いだったんだけどね。

 基本的にはアーツの発展系で習得方法は似てるわね。決められた条件を満たすことで突然閃くように使用方法が頭に浮かぶのよ。

 ただその条件が少し特殊というか難易度が高いの。アーツは基本的に使用回数とか熟練度とかで習得できるけど、奥義は特定のアーツやスキルを同時発動とか特殊な使い方をする必要があるわ。まあ、その分威力や効果は高いから覚えて損はない、というか上級の魔物相手だとないと辛いレベルになってくるわね。その辺でヒントになるアイテムがドロップして解放される予定だったのに…誤算だったわ」

「ははは…なんか適当に色々やってたら覚えちゃったからな。初めは兜割だったけどそれで何となく条件にも予想がついちゃったんだしまあ仕方ないだろ。最後のは魔力操作で遊んでたら覚えただけだけど」

「…いつまでも気にしてもしょうがないわね。

 ちなみに他にも隠し要素みたいになってるのはまだあるから、色々好きに試してみるといいわ。

 それじゃ、今日はこのくらいにしておきましょうか。

 あ、明日も続きをやるからね!」

「了解、じゃあ明日もよろしく」


そう言うとサラの体が淡く光り、収まった時にはサラが眠った状態で佇んでいた。

どうやらヴェルサロアの意識が天界へ戻っていったようだ。


「んぅ…ん、ああユリス終わったの?」

「うん。ただ今日はステータス関連だけで明日もやるって言ってたよ」

「あら、そうなの?分かったわ。これ結構疲れるんだけどね…ユリス、私は休むから残りの時間は自由にしていていいわ。それと夕飯ができたら呼んで頂戴」

「りょうかーい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る