第4話

 水の滴る音がする。意識を取り戻した後、気づいたのは、僕が身動きがとれない状態に置かれている、つまり腕を縛り付けられて椅子に座っているということ、そして真っ暗で薄ら寒い空間にいるということだけだった。頭がクラクラする。訳が分からない。誘拐された……ってことでいいんだよな。よくない。

「目が覚めたかい? いい子だね」

 ガチャリと音がして、右横から光が差し込んだ。スイッチを入れる音がし、部屋全体が明るくなる。入ってきた男は、恰幅の良い体を僕の目の前に晒した。

「……ビリー……」

「ずっと君をここに招待したかったんだ。中々居心地のいいところだろう?」

「どうしてこんなことをするの?」

「その質問には、すぐに答えることができるよ。でもその前に……」

 手を触られる。ゾッとして引っ込めようとしたけど、縛られていて動かせない。

「可愛いお手手だね……この手でナタが持てるかい?」

「ナタ……!?」

「君みたいな不憫な子に来てもらってね、害悪な人間を殺させてあげてるんだ。スカッとするだろうからね。その後でその子も殺しちゃうんだけど……」

 今度は髪を触られる。頭をそらして逃げようとしたが、椅子が邪魔をして動けない。

「綺麗な髪だね……死んだ後も綺麗に残ったらいいのにね……せめて整えてあげるんだ、目一杯美しく見えるように」

 なるほど。だから髪を整えた人間とそうでない人間がいたんだ。吐き気を抑えながら訊いてみる。

「僕に用意したその人って」

「今から持ってくるよ」

 ビリーが奥の扉に向かい、そこを開くと、猿ぐつわをされ、手足を僕のように椅子に縛られた女性が目に飛び込んできた。

「エバンズさん」

 エバンズさんの目は恐怖に見開かれている。声は言葉にならず、うめき声として部屋に響いていた。

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