やくみん! お役所民族誌
蓮乗十互
第1話 香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める
プロローグ
日記1
○月○日
あの時に死ねていたなら、こんなにも苦しまずに済んだのに。そう思うと、止めた両親が恨めしい。
○月○日
中学高校時代に、いい思い出はほとんどない。心の底から笑った時も、暖かく満たされたことも、あった筈だ。でもその気配は薄ぼやけて像を結ぶことがない。嫌なこと、憎悪すること、消えてしまいたくなることになら、すぐに記憶のピントが合う。それほど苦しい毎日だった。誰もそんな私の苦しみに気づいていない。気づかれてたまるか、そんなの、死んだ方がマシだ。
○月○日
地獄から逃れたくて、故郷のしがらみを全部捨ててしまいたくて、新しい自分になれると思って、明るい日々が待っていると思って、東京に出てきた。でも、ここも同じだ。結局、環境に適応できないのは私自身の生まれ持った資質の問題。どこにも逃げ場なんかなかったんだ。夢を見た分だけ、つらい。つらいつらいつらいつらいつらいつらいつらい。生まれて来なければ良かった。
○月○日
今日はいい日だ。
○月○日
くそっ。くそっ。こんなのありか。デート商法? 完全な詐欺、それとも恐喝。そんなことできる奴は人の心を持ってないだろ。
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