魔王の昔話

***は、それは可愛らしい娘だった。


どこから迷い込んだのか、

娘は、この世界の住人ではなくて。


娘は、明らかに、迷子で。

でも、

「わたしは、迷子なんかじゃないわ」

そう言って、きかなかった。


そんな強気なところにかれたのかもしれない。


まわりの者は、オレにかしずく者ばかりだったから。

彼女のりんとした姿がまぶしかった。


だから、

手に入れたかった。

そばにおいておきたかった。

いつまでも、

一緒に居たかった。

それなのに……


あの日、彼女は、消えてしまった。


いなくなったのは、彼女の意志ではないと、

それだけは確かに、わかったのだが。

どこへ消えたのかまでは、わからなかった。


捜索することは、許されなった。当時のオレには。


だけど、

忘れたことは、なかった。

彼女のあの笑顔を。

オレだけにほほ笑んだ、あの姿を。


―――その輪郭りんかくを、

あの子どもは、うつしていたのだ。

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