対面

『夢だとお思いのようですので。

 今宵はひとまず、お休みになられては、いかがでしょうか』

そう、提案されたから、このベットにいるのだろう。


ひと眠りして。

目が覚めても。

ほほをたたいて、つねっても。

夢から覚める気配はなくって。


洗顔用に用意された水は冷たくって。


「お前は、オレの息子だ」


あの玉座の男が、ボクを訪ねてきた。


「息子?」


「お前の母は、***だろう?」


!!


それは、間違いなく、母の名だ。

けれども、その名を知るのは、ボクと、母自身しか、いないはず。

それは、母の隠し名だから。


「***は、オレの大切なだ」

「……」

「そして、お前は、オレの息子だ」


「証拠は?」


男は、そっと近づいて、ボクの頭上に手をかざす。


すると、

ボクは、なんだか、知らないけれど、

体中に力がみなぎって。

ふわふわと、

うずうずと、

まるで、魔法が使えるかのような気分になった。


「#$%・・・・・・」


口から出た、呪文と共に、

ボクの体は、軽くなって。


「これが、証拠だ」


男は、部屋を去っていく。


ボクは、額が熱くなって。


後から鏡を見て気付いたんだけど。

ボクの目、以前より色素が薄くなってた。

もともと少し薄くって。ちょっとだけ、気にしていたのだけど。

さらに薄い色になっていた。

そして、

髪も。

それから、

額に、

まるで第三の目が開眼したかのように、

何かの模様が浮き出ていた。


う~ん。

これは、信じるしかないのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る