第2話 王都にて
王都への道は馬車で向かう。野宿で二泊するものの、街道は大した危険はないのでのんびりとした道行だ。休憩する時には上着の胸元のポケットに入れたマリンカの絵姿をみてほっこりした気分になっていた。そうして漸く王都の門が見えてきた。相変わらずの検閲の列が続いているなか、最後尾に馬車を着けた。列はゆっくりと進み、夕方になる前には王都への入場ができた。関所では顔なじみの門番の衛兵が声をかけてきた。
「今回は随分と間が空いたな。具合でも悪かったのか?」
「いや、結婚したんだよ。で、しばらくは買い付けに来てなかったんだ。」
「なんだそうだったのか。そりゃ良かったな。」
門番のスタンと少し話をして、王都にいる間に一度飲みに行く話となった。都合の折り合いでジョンが街に帰る前の夜に決まった。ジョンは王都で様々な仕入れや頼まれた買い物をこなしてその日を迎えた。勿論、マリンカへの土産も買った。
スタンがよく行くという店は安くて美味い店だという。まずは再会を祝して乾杯をし、久々なので色々な話がはずんだ。王都の噂話なども色々と聞いた。それからスタンにとってはメインの話を切り出した。
「どんな嫁さんなんだ。」
そう聞かれて、ジョンは絵姿を取り出した。
「すげえ、美人じゃないか。」
そうだろう、そうだろうと話をしているといつの間にか今日のお代はスタンが持ってくれるという話になった。結婚祝いだそうだ。
楽しく飲んで、楽しく食べて二人共良い心持ちで、店を出た。この夜は少々風が強い日だった。魔が差したのだろう。外に出てもう一度マリンカの顔が見たくなってジョンは懐からマリンカの絵姿を出して眺めた。その時、通りすがりの酔っぱらいがよろけてぶつかってきて、思わず絵姿を持っていた指が緩んだ。折り悪く強い風に吹き上げられ、あっという間にマリンカの絵姿が風によってさらわれた。
「ああー。」
ジョンが慌てて絵姿を追おうとしても、夜の暗闇もあってあっという間に見えなくなってしまった。
翌日の朝、どんよりと落ち込んだジョンが門に来ていた。丁度その朝も門番の当番だったスタンはそんなジョンに
「知り合いに声を掛けといた。俺も探してみるからそう落ち込むな。」
「よろしく頼む。」
ジョンはしょぼくれたまま、馬車で帰途についた。街にたどり着くまでの二日間はジョンにとっては辛い時間だった。
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