漁業権と商業権。



 俺は釣りが好きだ。基本的に釣りさえしてれば他に何も要らないって人間である。


 だから逆に言うと、釣りが出来る環境に居ると目的もなにも放り出して釣りに走る。それが俺、カイト・カワノって人物だ。


 なので目標がブレッブレにならないようにしっかりと再設定する。ここは港町だから、気が付くと釣りに行ってしまう。


 冒険者組合、もう面倒だからギルドと呼ぶけど、チビドラの皮を売り払って冒険者登録も済ませた俺達は、ギルドの酒場でインベントリから唐揚げ定食を出して二人で食べながら、今後の事を話し合う。


「まず俺達の目的は神殿だ。ステータスを上げて、より釣りを楽しむ為に」


「あと夜を楽しむ為に」


「……往来とか大衆の面前でそう言うの止めろ。マジでお預けにするぞ」


「…………………肝に銘じる」


 チビドラの皮は二匹分。金貨七枚で売れて、俺とポロの登録に銀貨五枚ずつなので、残りは金貨六枚だ。


「この国にある神殿は二箇所。王都と────」


「──迷宮都市」


 神殿は凄まじい力を持った施設なので、その周りには当然人が集まる。そうして長い年月を掛けて街になる訳だが、この国の王族はそこに遷都したらしい。


 あとこの世界、ダンジョンがあるらしい。迷宮都市って言うのはダンジョンから産出する資源で経済が回る都市の事だろう。そこにはダンジョンと神殿がどっちも揃ったハッピーセットがあるらしい。


「そのどっちに行くにしても、金が掛かる」


 これは路銀もそうだが、神殿の利用料も含む。神が作った施設なのに、何故か人間が金取ってんだよな。納得行かない。


「さぁ問題だポロ。俺達はどうやって金を稼ぐべきだ?」


「もちろん、釣りでは?」


「正解」


 魔物の討伐? やってらんねぇよそんな事。


「でもカイト、魚売りたくないって」


「うん、正直すごい嫌。でも俺、他に稼ぎ方を知らん」


「…………カイト、ポロに良い考えがある」


 その入り方は不安しか無い奴だろ。それフォームをトランスしちゃう奴らのリーダーが言うと毎回クソ展開になるやつだろ。


「カイト、釣った魚食べたい。でもお金も欲しい」


「うん、そうだね」


「なら、食べながら売れば良い」


「………………なんて?」


 ダメだ理解できんかった。食べたら売れねぇだろ。食べ終わった骨でも売るのか?


「露店で魚の料理、売る。売りながら、自分の料理を食べる」


「…………なるほど、それなら釣った魚をちゃんと味わって俺の血肉にしつつ、人に振舞って金を稼げるな!」


 ごめん一瞬うちの子バカだなぁって思ってホントごめん。マジでごめん。


「そうすると、この港で釣りと販売が出来るように、漁業権と商業権が必要だな」


「料理の心配は、要らない。カイトの料理、必ず売れる」


 そんな事は無いと思うけど、まぁアドバンテージがあるのは認める。


 でも露店で出すとなると、提供する形を工夫しないとな。


「竹串なら買ったことあるし、ショップでも買える。でも他に露店で使えそうな物ってあんまり無いよな……」


 しかも竹串なんて千円もしない。買えば買うほど損をする。


「…………もう少しこう、ラインナップをカスタマイズ出来ないかな。流石に百円の物を1ポイントで買うの辛すぎる」


「カイト、クシくらい普通にこっちで買う」


「それもそうか」


 何でもかんでもショップ使わなくても良いよな。と言うか依存し過ぎると供給が切れた時に困る。


 今は経験値が手に入るから良いけど、体壊してモンスター倒せなくなったらショップが使えなくなるのだ。そうなる前に必須調味料である醤油とかをコッチでも手に入るようにした方が良い。


 ルアーや鈎は頑張れば鉄と木材で自作出来るから別にいいや。釣り糸は問題だけど、最悪は身内権限で牙羊毛を分けてもらって蜘蛛糸の樹脂とかでコーティングしたらクソ強いPEラインになるんじゃない?


「ふむ。でも取り敢えずは宿探しするか? 寝るとこ無いもんな」


「ん。さっきの人に聞く」


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