まさかの同い歳。



 食事の後片付けをして、寝る前の準備を始める事にした。


 使った食器は海水で洗った後に真水で洗って拭き、油はキッチンペーパーで拭き取ってビニール袋に入れておく。これは後で焚き付けに使うので無駄にはならない。


 クッカーもメスティンも全部洗ったらコンテナに片付けて、ボートを召喚する。


 コンテナを消したりボートを出したりする様子にポロが驚いてるが、「海の神様に貰ったチカラ」だと言えば、素直なポロは海に向かって祈り始めた。多分ポロは貰えないだろうけど、俺は嘘言ってないし。


 ボートからエンジンを外したらそれだけ消して、船の中に海水を限界まで汲む。


 森から薪を集めて大きな焚き火を作ったら、森に転がってる石を集めて海水で洗ってから焚き火に投入する。


 次にショップでステンレスの網を買って折り曲げ、カゴにする。そこにカンカンに熱した石をどんどん入れて、海水でいっぱいになったボートの中に入れる。


 これを繰り返してお湯を沸かしてお風呂にする。


「ほら、これで体を洗うと良い。さすがにそのままじゃテントに入って欲しくないからな」


「………………脱げと?」


 俺が風呂を用意するとポロが絶望顔をして自分の体を抱き締めた。


「子供相手になんもしねぇ────」


 バチコーンとビンタされた。


「ポロ、もう十七……! 大人の淑女れでぃ……!」


「十七ぁ!? お前、俺と同い歳なの!?」


「……カイトも、十七? …………十五くらいだと思ってた」


 どうやら俺たちは、お互いに歳下だと思って内心で上に居るつもりだったらしい。


「マジかよ、同い歳なのかよ」


「人族、分かりにくい……」


「お前に言われたくねぇわ」


 あまりの驚きでビンタされたムカつきが海に吹っ飛んだ。撒き餌くらいにはなってくれるかな。


「まぁ良いわ。じゃぁコレとコレとコレを順番に使って体洗え。俺はその間、テントに居るから」


 雑貨のコンテナからシャンプー、コンディショナー、ボディーソープを取り出して並べると、ポロが伺うように俺を見る。


「…………覗かない?」


「誰が除くか。せめてそのバケモノみたいな状態を卒業してから言え。今のお前を覗くくらいなら、猿の裸を見た方が楽しいわ」


「し、失礼……! カイトすごくしつれい!」


「……コレ見てもそれ言えるか?」


 俺は鏡と言う文明の利器を見せてやった。そこに映るのはクリーム色の毛玉から顔だけ出てるモンスターだ。


「ま、魔物っ……!?」


「映ってんのお前だよ」


 ピシャーンと雷に打たれたように固まるポロは、しばらくすると「ポロ、魔物……」としょんぼりして大人しく風呂に入り始めた。


 さっきまで気にしまくりだった癖に、急に服を脱ぎ始めるから慌てた。見ても何も思わないけど、見ないと言った手前ちょっと困る。


「洗う液の順番間違えるなよー? 体を洗うのは青いヤツ、髪を洗うのは金から白だからな。体拭く布もそこに置いてあるから」


「…………わかった」


 テントの中から声を掛けると、よほど自分の見た目がショックだったのか元気が無い。


「…………カイト」


 暫く放置してたら、ポロから声を掛けられた。テントのすぐ側まで来てるらしい。


「あー? どした、なにかあったか?」


「ポロは、着替えが無い……」


 言われてみればそりゃそうだと納得した。仕方ないので最後のポイントを使って三枚セットのワイシャツを買う。制服用の奴なのでやっすい徳用だが、小さいポロだったらワンピース代わりになるだろう。


「ほれ、これ使え」


「恩に着る」


 少しして終わったと声が掛かったのでテントから出ると、そこには見違えるような女の子が居た。


「もうポロ、魔物じゃない…………?」


 伺うような上目遣いで聞くポロは、見事に美少女になっていた。いや美幼女か。


「おう、めちゃくちゃ可愛くなったな! これなら覗いても楽しそうだ」


「……よかった。………………いや良くない。覗くの良くないっ」


「覗かねぇよ」


 一応、心配するポロにまた鏡を見せてやると満足してた。彼シャツ的な見た目になってるから少しだけドキドキしたのは内緒だ。


 ポロをテントに押し込み、湯船に焼き石を追加して追い炊きする。


 シャンプーなどを流した水は申し訳ないが砂浜に長す。環境的にバッドだけど今だけは許してくれ。まだポイント足りなくて排水設備を整えられない。


 自分もシャカシャカと体と頭を洗って、湯船に使って海を見る。はぁ異世界の露天風呂サイコー。


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