能力確認。



「海だぁー!」


 目の前に広がる青い海に白い砂浜。死にたて一発目で最高のシュチュエーションだった。


 海で釣りをしてたら不運ハードラックにハットトリック決められて死んだけど、なんか海の神様が転生させてくれた。


 転生して一発目に見るのが海だし、最高の転生だと思う。


「よし、現状確認!」


 まず記憶に不備が無いか。


 俺の名前は河野海人かわの かいと。あだ名はうみんちゅ。名前が海人かいとだから海人うみんちゅなのだ。


 年齢は十七歳。彼女無しの童貞。家族は父と母しか居なくて、二人とも浮気性で相手を取っかえ引っ変えしてる癖に伴侶のそれには文句を言う最悪の家庭だった。


 そのせいで常に喧嘩してて、でもお互いに浮気してるって点では色々と楽だから離婚はしないと言うクソみたいな地獄。


 そのしわ寄せが全部自分に来るので、正直死ねて良かった。転生最高。どうせ二人とも、俺が死んでも気にしないだろ。


「チートスキルも三つ貰えたし、めちゃくちゃ運が良かったな! 俺を殺してくれたクジラとサメ、ありがとう!」


 次は能力の確認だ。「ステータスオープン!」で出て来ないので、スキル的な奴出てこーいって念じたらスキルの名前と効果だけが脳内にインプットされた。


 スキルは全部で三つ。海神の七つ道具オーシャン・ギフト海神の強襲オーシャン・レイド海神の神術オーシャン・レア


 まず海神の七つ道具オーシャン・ギフトの確認だ。


「ふむ、俺が生前使ってた道具を五つまで登録して神器化する?」


 あと消耗品や周辺アイテムの購入と、インベントリみたいな効果もあるらしい。ショップ機能とインベントリ機能の二つに、神器五つを合わせて七つ道具って事なのかな。


「取り敢えず登録しちゃうか」


 まず釣り竿とリール。ラインは消耗品の方で買う感じか。竿もリールも大物相手でも折れないけど、ラインは切れる。


 流石は海神様、釣りってものをよく分かってる。糸切れラインブレイクの危険がないと釣りじゃないよな。それは漁だ。


 ほぼなんにでも使えるシーバスロッドを一本、愛用のアブガル製リールを一つ登録した。これで神器化出来るのは後三つ。


 本当はロッドとリールを纏めて登録したかったけどダメだった。まぁメーカー違うし別のアイテムだろって言われたらその通りだ。


「あと三つ? 使ってた船は確定だろ…………」


 ビッグ425って名前のカートップボートだ。車なんて持ってないから自転車にリヤカー繋いで運んでたけど。


「あぁ、エンジンも無いとダメだよな。となると残り枠は一つ」


 ボートを動かす二馬力船外機も登録する。中華製の安物だけど神器化したんだから壊れないよな? カスタムもメンテもしっかりしてるし。


 船体が3.3メートル以下でエンジン出力が二馬力以下の船は船舶免許が要らないので、高校生の俺でも使えたんだ。めちゃくちゃバイトして買ってやった。


「エンジンに入れるガソリンは消耗品だからショップで買えるよな? て言うかショップってどう使うの?」


 分かんないけど、海神の七つ道具オーシャン・ギフトに起動を念じたら右腕の手首に青白い模様が浮かび上がった。


 比喩では無く文字通りに浮かび上がったのだ。肌から少し浮いてる。SFチックなホログラムの腕輪とでも言えば良いか。


 試しに釣竿の出し入れを念じてみると、愛用の釣り竿がシュンッて出て来た。かっこいい。


「…………あ、ショップはこう使うんだな。インベントリは?」


 念じると腕輪のホログラムが分解されて目の前に再構築された。四角い枠になったホログラムの中にネットショップみたいな画面が見えた。タッチ操作らしい。


「インベントリもこの画面で操作なのか。ショップで買ったものはインベントリに直接入るんだな? …………あ、調味料とかもあるじゃん」


 画面に対してインベントリへ変われと念じればその通りになって、ゲームでよく見る感じのマスが並ぶインベントリ画面になる。


 まだ何も入って無いからインベントリは空っぽ。ショップ画面に戻してラインナップを見ると、釣りに関係ない物も結構買えるみたいだ。


 ただラインナップは生前に俺が自分で買った事のある物に限定されてるっぽい。どれもこれも見た事ある物ばっかりだ。


 さっそく買っておこうと思ったけど、どうやら購入する為の財貨が無いので買えないようだ。


「買い物は、経験値を消費するのか。つまりこの世界はレベル制?」


 さて、能力を確認出来たので残り一つの神器枠どうしようか。


「自転車にする? この世界のこと何も聞いてないけど、足は結構重要だよな?」


 でも良く考えろ俺。この俺が、水の無い場所に行くか? 水があるならボートで行けば良くね?


「うーん、悩む。他にもテントって手もあるよね。神器化してるなら壊れないだろうし、神器ってくらいだから寒さとか暑さもシャットアウトしてくれそう」


 でもショップで買えるし、勿体ないかな? それを言うなら自転車も買えるだよなぁ。俺が買った事のある種類に限るけど。


「よく見ると神器化した道具も全部買えるんだよな。…………まぁ良いか」


 一度登録すると外せないらしく、登録した四つは永遠にこのままっぽい。まぁ変える気ないから良いけど。


 神器ってくらいだから凄そうだし。折れない釣り竿に錆びないリールってだけでも助かるのに、ボートも転覆しない効果とかあったら最高だ。またクジラにひっくり返されたら困るもん。


「生前の所有物しか選べないから、こっちの世界で手に入れた武器とかを神器化出来ないんだよな」


 取り敢えず枠一つは保留にして置こうかな?


「他のスキルは、海神の強襲オーシャン・レイド海神の神術オーシャン・レアだな」


 海神の強襲オーシャン・レイドは俺が自分で釣って、そして食べて消化した生物を精霊として召喚、使役するスキルらしい。


 イメージとしては空中も水中も自在に泳ぐ水棲生物の幽霊みたいな奴を召喚して操れる感じか。


 要はサメを釣って食えばサメの精霊をミサイルとかビット兵器扱いに出来るんだろ? 流石チートスキルだな。


 そして海神の神術オーシャン・レアは、水に関する魔法が限界無く使えるらしい。ただ魔力は相応に使うから神様みたいな事をしたかったら神様みたいな魔力を手に入れる必要がある。


 要するに成長限界が無い水魔法の才能を貰ったと思えば良いのかな? どこでも使えるけど海の近くだと強くなるそうだ。


「ふむ、魔法が使えるのか。…………出ろ、水鉄砲!」


 俺がそう念じると、指先から勢いよく水がピューっと吹き出した。そして頭がクラクラして来た。


「あ、これ分かるぞ。魔力切れってやつ────」


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