第62話
「花音ちゃん。久しぶりだね。髪、伸びたね。ずっとショートだったのに」
「うん。まぁ、私も大人の女性として髪を伸ばすのも良いかなって思って」
「うんうん。ロング花音ちゃんも良いと思うよ。私、好きかも」
「ありがとう。ところで相変わらず裸族の癖は治らないのね」
「へへ。家では服なんて必要ないのだよ」
「ここはあんたの家じゃないでしょ。よくもまぁ……別にいいけど」
花音は呆れている様子で口籠った。
「と・こ・ろ・で。花音ちゃんの彼氏さんです」
ニヤリと明日香は細目で俺を睨んだ。
その後、三百六十度。俺の周りを直視する。
「な、なに?」
「普通だね」
「え?」
「てっきり花音ちゃんの彼氏だからマッチョでイケメンかと思っちゃった。ずっと写真見せてくれなかったからなんだか拍子抜けしちゃった」
「こら。明日香ちゃん。本人の前でなんてことを言うの」
「だって本当のことだもん」
「たっちーは……カッコイイよ」
花音の声が小さくなる。
「え?」
「たっちーはカッコイイの! 明日香ちゃんには分からない良さがあるんだから!」
花音はムキになりながら否定してくれた。
なんだかその発言が俺の胸に突き刺さった。
「ふーん。花音ちゃんは大好きなんだ。立川さんのこと」
「そ、そうよ。だ、大好きよ」
「立川さんは?」
「え?」
「花音ちゃんのこと好きなの?」
「あぁ、そうだけど」
「じゃ、花音ちゃんの過去を知っても好きでいられるかな?」
「それってどう言う……」
「私、花音ちゃんのヤバい秘密を知っているんだよね。知りたい?」
「明日香ちゃん。何を言おうとしているの?」
明日香から花音の秘密が暴露されようとしていた。
知りたくないはずなのにどこかで知りたい自分がいた。
冷静を装っているが、聞き耳を立てる自分がいるのだ。
「明日香ちゃん。何を言うつもりか分からないけど、余計なことは言わないでくれるかな?」と、花音はトーンを低くして言う。
「何ってあのことだよ。好きなら知っておくべきじゃない? 花音ちゃんの秘密。立川さんも知りたいですよね?」
「確かにきになるけど、花音が言いたくないって思っているなら知りたくない。ただ、花音にどんな秘密があったとしても俺は花音を好きで居続ける。それは保証するよ」
「たっちー……」
「ふっ。私から秘密をバラすのは野暮ってところだね。分かった。私からは言わないよ。後は二人の問題だね」
分かってくれたと言わんばかりに明日香は身を引くように言う。
話せば分かる人であることが証明された。
だが、明日香はわざとらしく躓き、俺の足元に何かを落とした。
「何、これ?」
俺が拾った瞬間、明日香は不敵な笑みを浮かべたのが分かった。
拾ったのは写真である。
その写真を見た俺と花音は表情を曇らせた。
「こ、これって……」
「はっ……」
花音の口は大きく開いた。
そう、これが花音の秘密である。明日香は言葉で言わずとも行動で花音の秘密をバラしたのだ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
花音は壊れたように頭を抱えて蹲み込んでしまう。
この世の終わりのように酷く落ち込んでいる。
そう、この写真は幼い頃。おそらく花音が小学生の頃のもので明日香と一緒に映った写真だ。
だが、その写真は今とは正反対の姿であり、花音はぽっちゃり系の女の子だったのだ。
出会った当初は高スペック女子であるが、その過去はわがままボディの女子だった。
「どう? 花音ちゃんの昔の姿。醜いでしょ? あの頃はプニプニだったよね」
小馬鹿にするように明日香ちゃんは言う。
だが、花音の耳には届いていないようで身を丸くしたままだ。
「立川さん。これを見てまだ好きって言えますか?」
「可愛い……」
「え?」
「へー小学生の頃の花音もまた良いな。新鮮と言うかなんだかちょっと感動かも」
「もしもーし。立川さん。問題はそこじゃありませんよ」
「うん。可愛い。やっぱ花音は最高の女の子だよ」
「たっちー。私のこと、否定しないの?」
「え? なんで?」
花音は救われたような顔で泣いてしまった。
それは嬉し泣きというやつだろうか。
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更新ストップ申し訳あリません。
この作品は完結まで持っていきます。
カクヨムコン挑戦します。
新作準備中ですので宜しければそちらも
読んでいただければ嬉しいです!
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