第23話
花音との連絡はいつも素っ気ないと言うか、必要最低限のやりとりしかしない分、素っ気なくなりがちだ。
会いたくなった時に呼び出すだけのツールでしかない。
元々、連絡する相手は親と花音くらいしかいないので俺としてもマメにメッセージのやりとりをすることはまずない。
だが、この日のメッセージの内容で必要最低限という訳にはいかなくなっていた。それは花音からの一通のメッセージから始まった。
いつものように花音からの呼び出しメッセージと思って内容を読んだ俺は目を疑った。
『3○って興味ある?』
3○ってあの○○為をする時のプレイって意味だよな?
この返しを間違えると花音に変な風に思われたら溜まったものではない。
じっくり考えた後、一番下手な「なんで?」と質問に質問で返すことだった。
『男の人って複数でヤりたいとか思うのかなって』
これは答えないといけない。参考という意味なのか、花音が複数でしたい願望があるのか定かではないが、俺の意見を求められている。
これは正直に答えるべきだろう。悩みながら俺は文字を打ち込んだ。
「興味はあるかな。○○でよく見る光景だけど、実際は難しいと思うけど」
この返しでどうだ。するとすぐに花音から返信が入る。
『それは男二人に対して女が一人なのか男が一人に対して女が二人なのかどっちが興味ある?』
「男一人に対して女二人が興味あるかな。男が二人だと絶対気まずいと思うから」
『それは逆でも言えると思うけど』
「確かに」
『まぁ、ハーレムって男の理想だよね。たっちーもそういう願望あるんだ』
笑いのスタンプも一緒に送られて完全に面白がっている。
結局、花音の質問の意図が分からない。ただの暇つぶしか。
人の性癖を文章でやりとりするのはどうも気恥ずかしい。
相手のことを聞くなら自分はどうなんだと言いたい俺は聞いてやった。
「そういう花音はどうなんだよ」と。
するとすぐに既読が付いて返信が来た。
『女の子にそれを聞くのはセクハラだぞ』だった。
なんとも言えないモヤモヤした感情が湧き上がった。ずるい。
だが、連続で一文が添えられる。
『興味ないと言えば嘘になる』と。意外にも花音は複数プレイに興味がある様子だ。
しかし、興味があるだけで実際に○るとは限らない。あくまでも会話としての話題作りに過ぎないものだと認識していた。
『お互い興味がありそうだね。経験のために一回ヤっとく?』
最後に添えられた文面に俺は膠着した。
花音は一体何を考えているのだろうか。我慢できずに俺は相手の許可を得る前に無料通話で通話をした。すぐに花音は応答した。
『はい。どうしたの?』
「どうしたのじゃない。どういうつもりだよ」
『○○プレイの件? 新しいものを取り入れたら楽しいかなって思って』
「いや、俺と花音以外でもう一人加えるってことだろ? 意味わかっているのか?」
『あ、やばい。先生来ちゃった。また連絡するね』
肝心なところで電話が切れてしまう。
折り返しの電話が来るまでモヤモヤした気分でいる俺は苦痛の時間だった。
空白の時間に対して俺は気を紛らわせるために小説の構成を悩ませていた。
それでも考えつく先は花音のことばかりだ。
花音が次に連絡をくれたのは三時間後のことだった。
『やぁ。今大丈夫かな?』
「待ったぞ。花音」
『わざわざ待っていたの?』
「当たり前だ。あんな文章送られて気が気ではなかったぞ」
『ふーん。たっちーそんなに3Pしたかったんだ。いやらしいなぁ』
「誰のせいだ」
『ごめん、ごめん。じゃ、事情を話すね。実は相談されてさ。その子、エッチに興味があるんだけど、実際にしたことがないって言うの。つまり処女だ。そこで一回経験を積んでおきたいって話なの。私がセ○レいるよって言ったら一緒に混ざりたいって聞かなくてさ。どうかなって思って』
「どうって言われても俺は構わないけど、その子俺のこと知っているのか?」
『うん。よく知っているよ』
「知っているってなんで」
『私が唯一セ○レ事情を話している友達だから。いつも話はしているんだよね』
「何を話しているんだよ。変なこと言っていないだろうな?」
『変なことって何よ。仕方とか始まり方とか終わり方など事細かく言っているだけだよ』
「それだよ。勝手に変なこと言うなよ」
つい、興奮してした俺は声を荒げていた。
『ごめん。ごめん。でもさ、たっちー優しいからいいよね? 一回その子と会ってくれる? 悪い子じゃないからきっと気にいると思うよ。練習台みたいになっちゃうけど、そこはメリハリつけてくれたらいいから』
「分かったよ」
『ありがとう。じゃ、日程は追ってメールする。よろしく』
要件を言って花音は通話を切った。俺は喜んで良いものか頭を悩ませた。
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