第14話 ✖️✖️✖️で勉強
「大丈夫。帰らないよ」
そう言うと花音はホッと胸を撫で下ろした。
「でも、勉強する場所がなくなっちゃったな。どうする?」
「そこなのよね」
フードコートは満席で知り合いに見つかるリスクが高い。
そのほかに都合のいい場所はあるとは思えない。
勉強する場所がないなら解散するしかないと思い始めていた時である。
「良いことを思い付いた。あるじゃない。私たちならではの勉強場所」
「え? そんな都合いいところって」
「行きましょうか。いつものところ」
「はい? 花音、まさかとは思うけど」
「そのまさか」と花音はキメ顔を決めた。
花音は迷いがなくなったようで堂々とした足取りでショッピングモールから移動してラ○ホ○ルの一室に入り込んだ。
それはまるで家に帰るような当たり前の感覚だった。
「うん。ここなら誰にも見つかる心配はない。完璧じゃない?」
「確かにそうだけど、こんなところで集中できるか。入るんだったらカラオケボックスで良かったんじゃないの?」
「それもそうだけど、こっちの方が近かったし、いいじゃない?」
「花音がそれでいいならいいけど」
勉強の場所がないからと言って普通男女でラ○ホに入るだろうか。
完全に○りに来ているみたいだが、目的は違う。
「部屋代は半分出す。それで勘弁して」
「まぁ、そういうことだったら」
何故か俺たちはラブ○の一室で勉強することになった。
周囲を見渡せばその気になってしまう誘惑が広がっている。
平然と勉強する花音だが、これは誘っているのか。
だが、もしこれで違っていたらこれくらいの誘惑も我慢できないなら勉強向いていないと軽蔑されかねない。
どっちが正しいか分からない中、俺はテキストを見ながら過去問を解いていた。花音も同じく勉強モードだ。エッチな雰囲気なのに全然そんな気配を感じない。
「なぁ、花音」
「何?」
「いつまでここにいる?」
「休憩プランのMAX五時間までかな」
「そっか。頑張ろうな」
「うん。頑張りましょう」
その後、三時間ほど○欲と戦いながら勉強に集中した。
その気になれば一瞬で○○に発展する状況の中、ずっと待てをさせられる飼い犬の気分である。落ち着かない。
「トイレなら行って来なさいよ」
「え? なんで?」
「さっきからずっとソワソワしている。我慢は身体に良くないよ」
尿意の我慢ではなく別の我慢をしているのだが、花音は全然察していない。
なんとか誤魔化すため、素直にトイレに行く。
それにしても花音の集中力は凄まじい。
勉強を始めて休憩もせずにずっとペンを走らせている。
場所がどこだろうと関係なく勉強を続けている。
その鋼のメンタルはどこから来ているのだろうか。俺も見習わなければならない。
部屋に入って対した会話もなく追加料金が発生する三十分前にようやく花音はペンを置いた。
「ふー。疲れた」
肩が凝っているのか、腕や手をほぐす。
「もう終わり?」
「とりあえずね。キリがいいから続きは家でやろうかな」
「身体、凝ってそうだね」
「まぁね。ずっと同じ体勢だったから凝っちゃったかも」
「……あの、マッサージしてあげようか?」
「マッサージ?」
「あ、いや、変な意味じゃなくて普通に。色々勉強を教えてくれたし、せめて何かしてやれたらなぁ、と思ってさ」
「……じゃ、お願いしようかな。肩、揉んでよ」
「はい。仰せのままに!」
俺は花音の後ろに回って肩を揉み出した。
ほっそりした身体に弾力のある肉質。触れた瞬間、柔らかく温かいものを感じた。
「うん。良い感じ。たっちー、マッサージ上手いね」
「本当? 良かった」
「もっと強くできる?」
「これくらいか?」と、俺は先ほどより握力を強めた。
「あー効く。背中の中心もお願い」
「ここか?」
「ヒャン。いい。凄く気持ちいい」と、急にエッチな声が飛び交う。
しばらく背中や肩周りを揉んでいる時である。
「ねぇ。次、前もお願いできる?」
「前?」
「肩よりちょっと下あたりが凝っちゃって」
「前で肩より下ってそれ、もう胸じゃ……?」
「うん。胸、揉んでよ。そういうの得意でしょ」
「いいのか?」
「早く。マッサージするって言ったのはどこの誰よ」
「どうなっても知らないぞ」と、俺は花音の胸を後ろから揉んだ。
花音からいやらしい声が飛び交い、俺の興奮はピークに達した。
「たっちー。いいよ」
その合図が興奮を一気に加速させた。
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