第6話 話し合い


「歳はそんなに変わらないと思っていたけど、同い年だったんだ」


 と、俺は思ったことを口にしていた。


「何を言っているの。私が五月生まれ。あなたが七月生まれ。つまり私が歳上ってこと」


 細かい。花音の内心って実は狭いのかもしれない。

 幼い見た目だが、派手な茶髪で多分歳上かとは思っていたが、俺と数ヶ月違いというのは意外だ。


「そう言えば気になったのが花音って頭良かったんだね」


「何? 見た目がバカそうに見えるって言いたいの?」


「いや、そういう訳じゃないです」


 怒らせたらまずいと思い、俺は必死に否定する。


「まぁ、実際頭は悪い方だと思うよ」


 何故か花音は認めるような発言をした。


「何を言っているんだ。塾で成績優秀の教室にいるじゃないか」


「私は努力するタイプだから辛うじてついていけているだけ。自分の将来のために」


「根は真面目なんだな」


「セ○レ相手がこんなに真面目ちゃんだったのは意外でしょ? 言っておくけど、私は誰でもいいって訳じゃないの。息抜きも大事だからそういう行為もするだけよ」


 俺が花音にとって息抜きの相手と考えると少しもどかしい気持ちだった。

 しかし、悪い気はしない。むしろ有難いとさえ思えてしまう。


「私からも気になることがあるんだけど、聞いていい?」


「どうぞ」


「あなたは私以外にもその……そういう相手っているの?」


「そういうってセ○レのこと?」


「ストレートに口に出すな。公共の場でそんなこと言ったらぶっ飛ばすわよ?」


「言わないよ。俺も花音以外にいないよ」


「そ、そう……。ふーん」と花音はモヤモヤしたように顔を赤めた。


「それがどうかしたのか?」


「いや、別に。もし他の相手がいたならどうなのかなって」


「どうって?」


「いちいち言わせるな。あなたはなんでも言われなきゃ分からないの?」


 少しキレ気味に花音は反論した。

 俺は興奮を抑えるためにとにかく謝り倒す。


「まぁ、いいわ。時にたっちー。お互いのことをベラベラ喋るのはいいけど、今後どうするつもり?」


「今後?」


「セ○レっていう関係上、割り切ったものでしょ。お互いの内情を知った今、どういう付き合い方をしていくかってことよ」


「俺は別に今まで通りで構わないと思っているけど」


「今まで通り? それはちょっと虫が良すぎるんじゃなくて?」


「え? 何を怒っているんだ?」


「怒るも何もあなたが私の内面を知ろうとしたんでしょ。それなのに今までと変わらないならあなたの行動に矛盾があると思わないわけ?」


「それはまぁ、○○だけじゃ寂しいという思いから出た行動ですけど」


「だったら今までと違った関係を取り入れるのが普通のことじゃないの?」


 身体以上の関係って他にあっただろうか。

 いや、それ以前に俺たちの関係は普通の段階を踏んでいない。

 階段の一段目から登るべきことが俺たちの場合はエレベーターでいきなり頂上に辿り着いてしまうようなもの。間の苦労が一切ない状況だ。


「ごめん。俺、彼女とか居たことないからどういう風に接していけばいいか分からないんだ」


「彼女? 何を言っているの? 普通のフレンドになりましょうって話じゃないの?」


「あぁ、そっか。そうだよね。それよりも友達になってもいいの?」


「今更って感じだけど、いいよ。ただし友達とセ○レは分けて考えてね。一緒のノリで接するのは恥ずかしい。と言うより絶対に嫌」


「わかった。うん」


 よく分からないけど。と心の中で呟く。

 何が違うのか分からないけど、ここは話を合わせようとした。


「そう言えば広まっている噂の出どころは判明したのか?」


「それがさっぱり。例の事情を知っている友人にも聞いたけど、そんなことしないって否定されちゃった」


「嘘をついているっていう線は?」


「それはないんじゃないかな。あの子、嘘を付く場合は分かりやすい反応するし」


「そっか。それは困ったな」


「そこで噂が立たないように今まで通りじゃダメだと思うの。そこで少し捻った密会の方法を取らない?」


「捻った方法?」


「勿論、誰かに付けられていないか警戒はこれまでと同様にする。今後、セ○レ目的で会う場合は変装をして会うってことにしない?」


「変装か。悪くないかも」


「でしょ。これは一種のミッション。誰にも見つからずに○ることを○る。これは私たちにとって今後、大きな課題になるからよく自覚してね」


 なんだか会うだけでもよりハードルが上がった気がする。

 だが、そこまでしないとお互いに不都合が生じる。これは安全を考慮した結果なので仕方がないことだった。


「と言うかそこまでして○りたいんだな」


「はぁ? 私が○りたくてしょうがないみたいに言うな! 全部あなたのために言っているんだからね!」


「ご、ごめん。そんなつもりで言った訳じゃ……」


「じゃ、どう言うつもりよ!」


 俺の発言は火に油を注ぐに等しい。

 だが、花音の興奮は収まらない。


「もうバカアアアァァァ! 私が変態女って思われたらどうするのよおおおぉぉぉ!」


 終始、花音はポカポカと拳を叩きつけながら興奮をぶつけた。

 俺はただそれに耐えるしかない。余計な一言を言う癖をどうにししなければならないと俺は反省した。


⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

★★★(>人<;)

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