第4話 謝罪と和解
「こら! 顔を見せなさいって言っているの」
「い、いやだぁ!」
花音は必死に俺のフードを剥がそうとする。
ここで彼女に俺の顔を晒すわけにはいかない。
もし俺だと分かったら言い訳ができない。
「いいから見せなさい!」
ガバッと花音は無理やり俺のフードを剥ぎ取った。
「……!」
「え? あなた、たっちー?」
目と目が合い、完全にバレてしまう。
「や、やぁ。偶然……だね」
「偶然? ここは予備校よ。どうしてあなたがここにいるのよ?」
「ちょっと、見学というか」
「もしかして私のあとをつけて来たんじゃないんでしょうね?」
グイッと花音は俺と距離を詰めた。
言い訳が苦しい。それに下手な言い訳をして嫌われでもしたら俺たちの関係を解消されかれない。今、俺が取るべき行動はこれしかない。
「ごめんなさい! 君のあとをつけていました。本当に申し訳ない」
ビシッと俺は誠意の土下座をした。
頭を地面に擦り付けながら媚びるように言う。
「……ふーん。そう」
終わった。せっかく信用を半分もぎ取ったところで一気に信用を無くしてしまった。もう取り返しがつかない。
「顔、上げて。別に怒っているわけじゃないから」
「え?」
「まぁ、確かに人を付け回す行為は許し難いところだけど、それを認めた上で謝罪をするのであれば怒る気にもなれないよ」
「許してくれるのか?」
「うーん。どうしようかな。許してあげてもいいけど、タダって訳にはいかないかな」
「いくらだ? 言い値で構わない」
「別にお金を取ろうって意味じゃないよ」
「じゃ、俺は何をしたらいいんだ?」
「……ッドで……して……」
「え? なんて?」
「ベッドの上で尽くしてって言っているの!」
「それで許してくれるのか?」
「勿論、私の希望に沿った行為をすること。それで許してあげる」
「分かった。ありがとう」
とりあえず俺たちの関係は継続ということが分かりホッとした。
その時であるガチャガチャとドアノブが回る。
「やば! 誰か来る。隠れて」
「隠れるってどこに?」
「こっち来て」
花音は俺の手を引いてゴミステーションの裏へ隠れた。
出て来たのは男性教員だ。
タバコを吸うために裏口へ出てきた様子だ。
「フゥー」と美味そうにタバコを吹かす。
その間、俺と花音は密着した状態で息を潜めていた。
普段、密着はしているが公共の場で密着することは緊張が伴っていた。
一本キッチリ吸い切った男性教員はビルの中へ戻っていく。
「一つだけ守ってもらいたいことがあるの」
「お、おう」
「私たちの関係は誰にも知られる訳にはいかない。それだけは何が何でも守ってもらう。いい?」
「も、勿論だ。あっ……」
俺は生徒たちが会話していたことを思い出した。
「どうしたの?」
「いや、実は……」
本人に話すか悩んだが、一応報告しようと俺は聞いた話を話した。
「は、はぁ? そんな噂が流れているの? 誰よ、そんなことを言ったのは!」
「いや、トイレの個室越しで聞いたから誰かまではちょっと……。でも確実に知られているってことだよな?」
「くっ!」
ガンッと花音は壁に向かって拳を叩きつけた。
正体不明の密告者に対して怒りをどこにぶつけたらいいか分からない様子だった。ギロリと花音は俺を睨んだ。
「お、俺じゃないぞ。そんなこと言う相手いないし」
「あなたじゃないっていうことは最初から疑っていないから。警戒しながら密会していたのに。これからはもっと警戒が必要かもね」
「あ、あのさ。こんなことを聞くのはおこがましいかもしれないけど、他にもそう言う相手がいるとか?」
「はぁ? いないわよ。そう言う関係はたっちーだけなんだから」
否定するように花音は少し音量を高めに言い放つ。
少し嬉しい気もするが、そんなことで浮かれているようじゃダメだ。
「と、なれば情報源が分からない以上、警戒は必要だな」
「えぇ。あ、そう言えば……」と花音は何かを思い出すように言う。
「どうした?」
「一人いる。私たちの関係を知っている人物が」
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厳しい感想もお待ちしております。
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