第2話 予備校へ
本屋を飛び出すと茶髪のボブカットのあの子は商店街を歩いていた。
何とか見失わずに済んだ俺はホッと胸を撫で下ろした。
街中を歩く彼女は一際輝いて見えた。スタイルがよく歩き方も美しい。
何より周囲の男は彼女を二度見するほどだ。
「さて。次はどこに行くのかな」
近すぎず遠すぎず距離をキープしながら彼女の後ろを歩く。
すると、彼女の前方で手を上げながら近づく男の存在が目に付いた。
「お、男? 俺以外の男と待ち合わせしていたのか? なんかショック」
彼氏彼女でもないのに無駄にショックを受ける俺は異常か?
相手はただのセ○レ相手だ。別に彼氏がいたとしても俺には関係のないこと。
それでも俺は何とも言えない感情だった。
彼女が止まったと同時に俺も足を止める。
相手の男はアクセサリーをジャラジャラして全体的にチャラ男だ。
あれが本命の彼氏か。あんな奴が彼氏だと考えたらかのんってギャル寄りの子かもしれない。そんな風には全然見えないけど。
その場で何やら立ち話をしている最中である。
セフレのあの子は持っていたトートバッグを男にぶつけて攻撃した。
それと同時に走って逃げて行った。
男はショックだったのか、その場で呆然としている。
「何だ。ただのナンパか」
ざまぁと思いつつ、俺はチャラ男の横を素通りして彼女を追いかける。
今のは事故と思いつつ、まだまだ彼女のことを知れていない。
迷うこともなく一直線に歩く彼女は次の目的地を決めてあるのかも知れない。
ただ適当に街をぶらりではなさそうだ。
「ん? どこかに入って行くぞ」
スッと入って行くビルに俺は確認に向かう。
「ここって予備校か」
【〇〇大学の合格者〇〇名!】【新学期生徒募集!】【夢は叶う。体験入学受付中】など入口の前にはポスターがズラリと貼られていた。
ここに入ったということは少なくとも学生。いや、浪人生であることも考えられる。
どのみち彼女は遊び人でも何でもなく勉強に熱を加えている真面目な人であることが窺えた。
どうしよう。中に入ってあとを追うか?
いや、そこまでして鉢合わせてしまったら何と言い訳をすればいいのだろうか。入口のまで悩んでいた時である。
中から扉が開き、スーツを着た女性が出てきた。
「あの、どうかされましたか?」
ガラス張りなので中から俺の様子が丸見えだったことから心配で声を掛けに来た様子。
「えっと。その……」と、何て答えたらいいか分からず視線をガラス張りの方に向けていた。
「ん? あぁ、体験入学をご希望の方ですね」
「えっと。まぁ、はい」
「そうですか。こちらへどうぞ」
俺は成り行きで女性職員に連れられて塾の制度や内容などの説明を受ける。
ひたすら上の空で「はい、はい」と聞き流すように受け答えをすることしかできなかった。
「こちらの記入用紙に名前や住所などを書いて下さい」
「はい」
なかなか解放されない。早くこの場を切り抜けたいのに説明がやたらと長い。
そんなことよりも早くあの子を見つけなくてはならない。
そう思った俺は女性職員の話を遮るように言った。
「あ、あの! 授業風景を見学させてもらってもいいですか?」
「見学? はい。構いませんよ。ただ、授業中ですので邪魔になるようなことはご遠慮して頂きたいのですが」
「はい。後ろでコソッと見るだけでいいですので」
「はい。それでしたら……」
「ありがとうございます」
最後まで話を聞かずに俺は教室へ向かった。
あの子は? あの子はどこにいるんだ?
各教室を走り回り、かのんがいる教室を探し回った。
ここか、ここかと探した俺はある教室で立ち止まる。
「居た!」
後ろ姿でも分かる。あの茶髪のボブカットは間違いなくあの子だ。
「立川さん! 困りますよ。勝手に校内を走り回ったら」
息を切らしながら受付を担当してくれた女性職員が俺のあとに追いつく。
「廊下を走ることは厳禁です。小学生でも習いますよ。誰かとぶつかったら大変じゃないですか!」
「すみません。あ、あの。ここの教室って……」
「あぁ、ここは特進クラスですね」
「特進?」
「えぇ。うちの塾で一番ランクの高いクラスです。まだ説明が不十分でしたがD、C、B、A、Sと四クラスありますが、特に優秀な生徒はその上の特進クラスというのを設けてあります」
「じゃ、天才の集まりってことか」
「まぁ、そういうことなりますね」
「あの、あの子は?」
「あの子?」
「茶髪のボブカットの女の子」
「あぁ、
「えぇ、まぁ……」
しかも名乗っていた名前は本名であることも同時に分かってニヤリとする自分がいた。
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毎日投稿続けます。
★★★下さい。
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