第2話
「おう、明日いよいよだな!」
「紫色の島だろ? 俺は別に行きたくねぇな」
「あの島毒が蔓延してるから嫌なんだよな。町に入っただけですぐ吐き気と腹痛が止まらなくなる」
「あっちの島民はよく平気だよな。知ってるか? 紫の島の島民は自力で毒を分解するんだぜ」
下校時間になると大勢が明日のことで騒ぎ出す。
明日はここカカ島と紫色の島が急接近する日だ。みな紫色の島の話題で持ちきりの様子。
「ミコシバ、ササキ、お前ら紫色の島にはいくのか?」
一緒に下校していたうちの一人、タニヤマが訊ねてくる。その問いに先に返答したのは一緒にいたもう一人のササキだ。
「俺はパス。欲しいもん無ぇし、どうせ混雑すんだろ」
「俺も。あの島にいるとすぐに体調崩すし」
俺も答え終わると「そっか~だよな。どうせなら赤色の島とか黄色の島が良かったよな」とタニグチは納得する。
紫色の島は島全体に毒が蔓延している。
生活区域の毒は大したことがないらしいがそれでも島民じゃない人は体調を崩しやすい。
俺たちの住むカカ島の島民は特にこの毒に弱い。育った環境の違いか他の島民よりも重症化しやすいみたいだ。
逆に原住民である紫色の島の島民は毒への耐性が強く、毒が強い島の中心部へ近づいても平気な人だっているらしい。他の島民なら絶対にアウトだ。
だからカカ島から紫色の島へ出かける人は少ない。特産品の薬や化粧品を求める人が行くくらいだ。
逆にあっちからこっちに来る人は多い。ウチの島は六つの島の中でも一、二を争うほど住み心地がいい。らしい。島民の俺からしたら何もない島なんだけどな。
「じゃあ俺こっちだから。休み明けにな」
「おう、さいなら~」
「また来週!」
くだらないことをしゃべっているとあっという間だ。帰る方向が違う俺は一足先に二人と別れる。
帰ったら何するかな……
「よっ」
「うおっ!? ……なんだウヅキか」
「何だって何?」
「深い意味はないよ」
角を曲がると顔見知りがいた。
サクマ ウヅキ。隣に住んでる小中高ずっと同じ学校に通っている同級生。
所謂腐れ縁。幼馴染って言う奴だ。
やる気のない眼とかったるそうな態度そのまま。見たまんまのめんどくさい星人。
しかしながらその容姿は端麗であり、十年以上の付き合いがあり見慣れた、というより見飽きたとも言える俺からしても美人。そこはかとなく残った幼さもかわいく思えるほど。
当然学校の連中からも人気の女生徒で、何なら女子からの人気も高い。公然で平気に告白する女子に面倒くさそうに対応している姿を見たことがある。
「で、お前何してたの?」
「ケンタロウを待ってたんだよ」
「え?」
「ちょっと面倒な奴がいてさ」
そう言うとウヅキは俺の腕を引っ張って歩き出した。
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