10話 プリクラ撮影

「さて、これからどうする?」


 無事にテーブルの上に置かれた食べ物がほとんどなくなり、残すはデザート用に深玖流が買ってきていたドーナツだけになった頃、俺は話を切り出した。


「んー、どうしよっか?メジャーなゲーム系はわりとやっちゃったしね」

「……他には何があるの?」

「マップとしてはこんな感じで……やってないので言うと体を動かすのが多いかな」


 スマホを操作し、施設の情報が書かれたページを表示してテーブルの上に置く。すると、自然と三人でそれを覗き込む形となる。


「明莉ちゃん、運動って大丈夫?」

「……そこまで激しくないなら大丈夫」

「そこは大丈夫。がっつりスポーツみたいなのはそんなにないし、そもそも」

「……何よ」


 そこまで言った俺の視線は深玖流へと向く。

 それだけで言いたいことはバレたのか、深玖流は頬を膨らませて不機嫌アピールをしてくる。


「言いたいことはわかってるくせに」

「わかるから怒ってるの!」

「……何かあるの?」

「意外かもしれないけど、深玖流は運動が得意じゃない」

「最低限はできるもん!!体力がないだけだから!」

「……それは意外」


 深玖流のカミングアウトに無透さんは驚いた表情を見せる。普段の深玖流のイメージから考えると体を動かすのが好きな元気っ娘みたいな感じが強いだろうから、よく驚かれる。

 学校での体育の授業も始まったばかりということで、体力がそこまでいらないものしかなかったから去年の深玖流を知らないクラスメイトにはバレていないだろう。


「明莉ちゃん、やっぱり私って運動できるイメージあるかな?」

「……うん。できるかは置いておいても、好きそうなイメージがある」

「うぅ、そうだよね……」

「……そのイメージってだめ?」

「別に悪くはないよ?でも!でもだよ!皆が微笑ましく見てくるの!!」


 いつもクラスですぐに人気になる深玖流が運動が苦手なことが広まると、体育で少し頑張るだけでも皆から応援される。

 深玖流的にはそれがマスコット的な感じがして嫌とまでは言わないもののむず痒くて居心地が悪いらしい。


「でもお前、結局この後バレることなんだから今更だろ」

「うぅ、それはそうなんだけどさぁ」

「……それじゃあ、インドア派?」

「んー……どっちかって言われたらインドア派、かな?だよね、彩人?」


 深玖流が確認のためにこちらを向きながら尋ねてくる。言葉としては確認だが、その視線は明らかに別の意図が含まれている。

 おそらく、余計なことは何も言わずに話を合わせろとそういうことだろう。


「まあ、そうだな」

「逆に彩人はアウトドア派?……っていうレベルでもないよね」

「部屋にがっつりいるような趣味は今ないしな。部屋の中にいてもやることがないから外に出る、レベルだからぶっちゃけインドアと大差ないとは思うけどな……まあ、そういうわけで。体を動かすにしても軽いのにしかならないよ」

「……わかった。それなら安心」

「あ、プリクラ撮ってない!!忘れる前に先に行こうよ!」


 体を動かす何かをやる前提で話を始めていたというのに、深玖流が突然思い出したのはそれとは全く関係ないものだった。


「お前なぁ……こっち来る前に思い出しとけよ」

「忘れてたのは仕方ないじゃん!」

「それはそうなんだけどな……無透さんはそれでもいい?」

「……大丈夫。やったことないから気になる」

「じゃあ決まりだね!これ食べ終わったら行こっか」



 ドーナツもなくなり、再びゲームコーナーへと戻ってきた俺たち。

 深玖流が先頭となってプリクラが並ぶ場所へと向かえば、そこに近づくにつれて明らかに男女比で男が少なくなっていく。

 その少なくなった男のほとんどがどう考えてもカップルにしか見えず、女子二人とここに来ている俺はかなり浮いた存在に思えてくる。


「空いてそうだし、ここでいいかな。はーい二人とも入って入って」

「というか、今更だけどこれ別に俺どこかで待ってても良かったんじゃないのか?」


 無透さんに続いて筐体の中へと入る直前にふと考えが頭に浮かぶ。

 深玖流が無透さんとプリクラが撮りたいのだから俺はここまで着いてくる必要はなかったはずなのだ。


「ここまで来てほんとに今更なこと言いすぎじゃない?あと、三人でここまで行動してるんだからその選択肢は元々なかったからね。ほら、入った入った」


 深玖流に無理矢理手を引かれ、筐体の中へと入る。

 中で三人は少しだけ狭く感じるが、そこまで問題があるわけじゃない。


「それじゃあ、お金入れてっと。二人ともフレームとか希望ってある?」


 テキパキと写真を撮るための操作をしていた深玖流がこちらを振り返ってくる。


「特にないから任せる」

「……私も同じ」

「はいはーい。それじゃ適当に選んじゃうね」


 ほぼ同時に答えた俺と無透さんの言葉を聞いて深玖流はもう一度パネルへと向き直る。


「じゃあ、これとこれと……これでいっかな」


 選び始めてから一分も経たない内に操作を終わらせた深玖流が俺たちのところへと戻ってくる。


「さて、どうやって撮ろっか?」

「……普通はどうやるの?」

「んー……皆で同じポーズしたりとか?8割くらいその場のノリと勢いな気がする」

「……まずはそれ?」

「オッケー、それじゃあ……」


 どうしょっかなー、と言いながら少しの間俯いて考えた深玖流は何かを思いついたのか顔をあげる。


「これなら可愛くて、やりやすいんじゃない?」


 そう言った深玖流は全ての指を軽く曲げて右手を上げた後、左手も同じことをして右手よりも少し下になるように上げた。

 そのポーズを見るとがおー、という擬音が勝手に頭に浮かんでくる。


「……たしかに簡単」


 無透さんも深玖流の真似をして同じポーズをとる。それを見て普段のイメージとは少し違って なんことを考えていると、深玖流に体をつんつんとつつかれた。


「ほら、彩人も早く。撮影されちゃうよ?」

「これでいいんだろ?」

「うん……ぷふっ、それでいいよ」


 言われた通りにポーズをとれば目の前で深玖流が悪びれる様子もなく吹き出す。


「ふふっ……彩人、抵抗なくやるよね」

「このくらいのことはずっとやらされてきたからな」

「それは、ふふっ、そうなんだけどね」


 自分で思っていた以上にツボに入ってしまったのか、深玖流の返事は全て笑いが混じったものとなってしまう。


「……そろそろ?」


 無透さんの声に合わせたかのように機械音声によるカウントダウンが始まる。


「うん。カメラはあれだから、そろそろあっち見といたほうがいいかな」


 そして、カウントダウンが0となりパシャリという音と共に一瞬だけ視界が白く染まる。

 ポーズをやめ一息ついて最初の撮影が終わったと認識したときには、次までのカウントダウンが画面に表示されていた。


「……次はどうするの?」

「んー。彩人、何か案は」

「あるわけないだろ、お前が考えてくれ」

「だよねー。あ、そうだ。せっかくだから、こういうのも欲しいよね。ぎゅー!」


 そう言うと深玖流は無透さんに抱きつく。

 今日既に一度抱きつかれていて慣れたのか、無透さんもそれを特に動じることもなく受け止めていた。


「……これなら仲良し?」

「うん、これならすごく仲良しだよ」


 二人が仲良しそうに映るのはいいことなのだが、それはそれとして一つ問題が発生する。

 そんな仲良しが写真に映っている状態で取り残された俺は一体どうしろと深玖流は言うのだろうか。

 正直、そんなことまで考えてないが正解な気はするが。


「それで深玖流、放置された俺は?」

「あ、えーっと……どうしよ?」


 予想通り、深玖流は俺がどうするかについて何も考えていなかった。


「とりあえず、さっきと同じポーズでもする?」


 二人が仲良く映っている傍で一人だけポーズを決める自分をひとまず想像してみると、あまりにもシュールというかその場で浮いている。


「お前……それはないだろ」

「だよねー……彩人がそれでも気にしないメンタルの強さならそれでいいんだけど」

「はぁ……とりあえず今回は外に出てるから二人で撮っててくれ」

「えー、三人で撮ろうよ」

「もう時間ないぞ。早く二人でどう映るか決めたほうがいいだろ」


 それだけを言い残し、深玖流が何か言うのを聞く前に外に出る。

 そうすると、ゲームセンターらしい騒がしさが自然と戻ってくる。その音によって筐体の中の音はほとんど掻き消され、深玖流が無透さんと何か話しているということだけが辛うじて聞こえてくる。


 そうして一分程待てば、筐体から深玖流が顔だけを出してきた。


「お待たせ、次撮るから入って入って」


 言われるがまま中に戻り、次はどうするんだと聞こうと深玖流に視線を向けるとなぜか俺のことを見ていたのか深玖流と視線がぶつかる。


「せっかくだし……うん、決まり!」


 俺を見て何かを思いついた深玖流は俺が無透さんと深玖流の間の立ち位置になるように移動した。


「……おい、何するつもりだ?」


 少し嫌な予感がしながら深玖流に尋ねると、その答えは言葉ではなく体を襲う軽い衝撃となって返ってきた。


「んー?こうするつもりなだけだけど?」


 そちらを見るとにこりと笑って俺に抱きついている深玖流の姿があった。


「おい深玖流、ほんとにどういうつもりだ?」

「べっつにー?両手に花とも思えない私がこんなことしてもなんともないでしょ?」

「お前、さっきのあれ根に持ってるのか……」


 抱きついてきた理由を全く隠さず、むしろそれを前面に押し出してくる深玖流。

 深玖流の雰囲気からは何かへの対抗心のようなものは感じられるが、それが俺の言った言葉へのものなのかそれ以外のものへ向けられたものなのか、そこまでは判断がつかない。


「別に、根に持ってるなんて言ってないもん。あ、明莉ちゃんもやってみる?」

「おま」

「……こう?」


 お前余計なことを、そう言いきる前に深玖流とは逆側から体に伝わる感触が増える。

 深玖流のような勢いのよさはなく、むしろそのおかげか女子の柔らかさとでも言えばいいのか腕を包む感触を余計に認識してしまう。


「あの、無透さん?」

「……やったことないからやってみたけど、だめ?」


 そんな言い方をされると拒絶することなんてとてもできない。

 無透さんにとってはゲームやジャンクフードのように今までに経験の少ないことを試していることの一環なのだろうから、俺が拒否するのは申し訳ない。


「ふっふーん。彩人、これでもさっきと同じこと言える?」


 俺の反応を見て弄りどころだと察した深玖流はここぞとばかりに抱きつく力を強めてくる。


「……ノーコメント」


 こんな状況になってしまえば、さっきと同じことが言えるかどうかは別にしても何も意識するなというのは無理がある。


「やった!これで私たちの勝ち!」

「……勝ちなの?」

「うん。あんな失礼なこと言った彩人が反論できてないから。あ、明莉ちゃん。そのままもうちょっとだけこっちに寄れる?」

「……こう?」


 深玖流に言われるがまま、無透さんが俺に抱きつく力がさらに強くなる。


「それで、こう!」


 そして、深玖流が俺に回していた腕が離れたかと思えばその後すぐにより強い密着感となって戻ってくる。

 何をしたのかと確認してみれば、深玖流が俺ごしに無透さんを抱きしめたことでその結果としてより二人との距離が物理的に縮まったようだ。


「あのさ、ほんとにこれでいいのか?」


 深玖流とは友達以上の関係ではあると自覚はしているが、それでも恋人ではない。ましてやそこに無透さんも一緒になってやっているとなれば、俺相手にこんなことをしても二人はいいのかという疑問が浮かんでくる。


「え、私は全然いいよ?」

「……私も大丈夫」


 そのことを暗に問いかけてみるも、言われた当の二人はキョトンとした表情を浮かべていた。


「わかったよ、それならいい」


 二人がそれでいいならと自分を納得させ、今の状況を受け入れる。一応強引に拒絶することもできるがそんなことをすれば怪我をさせてしまう可能性もあるし、せっかく無透さんが楽しんでくれているこの時間を壊してしまうだろう。


「それでさ、彩人」

「ん?どうかしたか?」

「女の子にだけ抱きつかせて自分は何もしてないのどうかと思うんだけど?」

「は?」


 深玖流が何を言いたいのかわからず即座に言葉を返す。ただ、何を言いたいのかはわからないが俺にとってろくでもないことを言いたいのだろうということは経験則からなんとなく予想がついてしまう。


「だーかーら、私たちが抱きついてるんだから彩人も抱きよせるくらいしなきゃダメでしょ」

「お前っ…!ほんとろくでもないことを……」


 俺のなんとなくの予想以上にろくでもないことを言ってのけた深玖流に一瞬だけ声を荒げてしまう。

 それでも、これはこんなことを言い出した深玖流が悪いと思う。


「ほらほら、時間ないんだから早く早く」

「だからってなぁ……」

「私は別に気にしないし……あ、そういえば明莉ちゃんはそれされても大丈夫?」

「……私も大丈夫」

「あーもう!わかったよ!これでいいんだろ!!」


 逃げ道を塞がれ、撮影というタイムリミットも迫ってきて正常な思考ができなくなっていた俺は抱きついてきていた二人の肩に腕を回し、抱きよせる。


「わっ!」

「……すごく力強い」


 その結果さっきまでよりもさらに密着することになってしまうが、すでにまともな判断ができなくなっていた俺の頭ではその感触を楽しんだりする余裕なんてものは全くなかった。


 写真が撮影されるまではほんの数秒のはずだが、その数秒がとても長く感じられる。その一瞬一瞬毎に自分の鼓動の音が大きくなり、それと共鳴するかのように左右からも小さな、それでも確かな振動が伝わってくる。


 誰も言葉を発することなくお互いの息遣いだけが聞こえるような静寂が続きそれがどれくらい続いたのかもわからくなった頃。


 パシャリ、という音がその沈黙を破った。


 その少し後、撮影ができたことを確かめて二人の肩に回していた腕を離す。

 それに合わせるように二人も俺から離れ、全員揃って一息つく。それほどに今の一瞬の時間の密度はすごいものだった。


「ふぅ……心臓に悪すぎるぞこれ」

「自分で言い出しといてあれだけど、すごかったね……」

「……うん」

「頼むから、残りの撮影は軽いやつにしてくれ……」

「安心して、私も思ったより疲れたからそのつもり」


 それからは軽い感じで残り数回の撮影を重ね、全ての回数撮り終わると筐体の外に出て深玖流が先導する形になって撮った写真に落書きをするスペースに向かった。


「それで、あとはここでさっきの写真に落書き……」


 そこまで言ったところで深玖流がちらりと俺の方を見てくる。


「彩人は……いいや。明莉ちゃん、二人でやろっか」

「……いいの?」


 深玖流の少し変な態度を不思議に思った無透さんが俺の方を見てくる。


「俺は見てるだけでいいよ。こういうのは深玖流が慣れてるから任せる。椅子も二人掛けだから並んでやった方が教えやすいだろうし」

「はい決定!時間制限もあるから早くやるよー」


 深玖流の強引さに押されながら無透さんはペンを持って画面の方を向く。


「えっとね、ここを押すとこういうのが色々出て……あとは普通のペンみたいに文字書いたりイラスト描いたりもできるよ」


 後ろから画面を覗き込んでみると深玖流が手早く、かつ要領を抑えながら使い方を説明していた。


「だいたいこんな感じに……はい、ハートを描いたりとか……こんなこともできるよ」

「……猫?」

「うん、こうすれば可愛い……いや、そうでもないかな」


 二人の視線の先には猫の髭を落書きで生やされた俺がいた。生やすなら自分にやってくれとは思うが、説明を任せたし俺はペンを握ってないのでどんな落書きをされても止めることができない。


「あとは好きに描いていけばいいよ」

「……やってみる」

「それじゃ、私も」


 そこから二人は写真への落書きに集中し始めた。

 無透さんはスタンプを試してみたり、星やハートを描いてみたりと初めてのプリクラで色々試しているようだ。


 それに対して深玖流はといえば。


「……お前。いくらなんでも俺で遊びすぎだろ」

「えー、まだいけるからそんなにでしょ」


 さっきの猫の髭が霞みそうになるくらいに俺に落書きを加えて遊んでいた。

 髭だけだった猫要素はいつの間にか深玖流の手書きの猫耳と『にゃー』という文字が足され、それ以外にもよくある加工アプリのように目をキラキラさせたり肌を白くしたりとやりたい放題だ。


「なあ深玖流。一応聞くけど、普通はここまでやるのか?」

「ん?そういうノリならやらなくもない、かな?だからこれは完全に私の悪ふざけだけど?」

「だと思ったよ……」

「見てるだけの彩人に拒否権はないからねー。私にペンを任せた対価だと思えば安いもんでしょ」

「はぁ……わかったよ。もう好きにしろ」


 そしてそれから数分後。


「んー、楽しかった」

「……うん」


 満足そうにペンを置き椅子から降りる二人。

 その少し後にカタン、という音と共に取り出し口に写真が落ちてくる。

 それを拾った深玖流は近くに置かれていたハサミを使ってそれを手際よく三人分に分けていく。


「はい、これが明莉ちゃんの分でこれが私の分。で、これが彩人の分ね。あ、これとっておきだから目立つところに貼ってもいいよ」


 深玖流の言うとっておきは最後に撮影した俺が二人に横から抱きつかれているもので、手書きでハーレムと書かれていたり、ハートも描かれていたりとやりたい放題されていた。


「お前なぁ……そんなことできないってわかってて言ってるだろ?」

「えー、そんなことないけど?」


 いくら一緒に撮った相手の内の一人が深玖流であるとはいえ、こんな状態になっているものをクラスメイトに見つかりでもしたらろくなことにならないのは容易に想像がつく。


「……これは目立ちそう」


 同じものを見ていた無透さんがそんな感想を漏らす。

 無透さんもそんな感想を持っているのに、深玖流がそこに気づいていないわけがない。そうなれば確信犯としてこの提案をしてきていることは間違いない。


「別に私は困らないよ?」

「お前が困らなくても俺が困る。というか、無透さんも困るだろ」

「……たぶん?」


 これが深玖流と二人で同じことをしていればギリギリ普段の関係の延長でやったのかもしれないと思われて流されるかもしれないが、三人でやっているから確実にそんなことにはならない。


「俺はやらないし、お前もやるなよ?」

「はいはーい、私はこれがあるからいいもん」


 深玖流が言っているのがどれかと見てみれば無透さんと二人で映っているものだった。

 カメラに寄って二人が抱きあいながら笑っていて、すごく画になっている。俺が外に出たときに撮ったものがこうなったのなら出た甲斐もある。


「……それじゃあ私もこれにする」

「俺の分はどこかに残しとくか。使い道は思いつかないしな」

「そんなこと言って、こっそり何かに貼るんじゃない?」

「今のところはほんとに思いつかねえよ」


 確実にからかわれるのが目に見えているから言わないが、しばらくはこの写真を見るだけでさっきのことを思い出して恥ずかしくなる自覚がある。

 だから、このプリクラはしばらく目につかないところにしまうと思う。


「とりあえず休ませてくれ。プリクラ撮るだけなのにとんでもなく疲れた」


 俺の提案は満場一致で受け入れられ、甘いものがほしいと言い出した深玖流の言葉に従って少し前に出てきたばかりのフードコートへと戻ることになるのだった。

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