帽子

翌日


 私はスマホの地図を確認しながら住宅街を歩いていた。

 地図を見てみると、勤務先になるその場所、雇用主の家は張り紙があった場所からは少し離れた場所にあった。

 もう少しで着く。



「・・・・・・・」



 ここか。

 目的地に着きその家を見た。外観はいたって普通だが一般的なものよりかは大きな一軒家だった。家の前には、よくある人の背より低い門があり、家の周りには家屋を四方から囲むようにして緑色の芝生が生えた庭があった。ここからでは庭の全貌は見えないが、芝生の状態を保つためのスプリンクラーが見えた。

「・・・・・・・」

 スマホで時間を確認すると、時刻は指定された時間より数分前に目的地に到着していた。


 門を開けて敷地内に入る。


「・・・」

何をすればいいのだろうか。そう思ってもう一度を現在時間を確認するためにスマホを見た。

 そのときスマホに表示された時間が指定の時間になった。


 ポン、と通知が来た。


 見てみると、

『門の近くに黒い作業箱があると思います。その中にある道具を使って庭の雑草を取り除いて

ください』

 というメッセージが送られていた。

 さらにメッセージと一緒にその家を上空から見た間取りのような絵が添付されていた。絵には庭の一部が点線で四角く区切られた箇所があった。ここの雑草を除去するように、ということだろう。

「・・・・・・」

 辺りを見てみると、確かに近くに黒い箱があった。箱の前方に簡単なロックのかかった箱だ。近付いてその作業箱のロックを解除して開けてみると、黒い軍手と、日よけの帽子だろうか、それと丸い円盤状の機械のようなものも入っていた。

「・・・」

 とりあえず軍手を取り出してはめてみた。サイズは問題なかった。次に帽子?のようなものを取り出したが

「?」

 触ってみて帽子ではないことに気が付いた。スイッチのようなものがある。

「・・・・・・」

 押してみた。すると小さい緑のランプのようなものが点灯した。

「(帽子じゃないのかな?)」

 一応被ってみるが、やっぱり帽子ではない気がする。

「・・・」


 手持ち無沙汰になって、「帽子」をなんとなしに空中に投げ、手元でキャッチボールをしようと空に放った時だった。


 バサッ! と帽子がその表面積を広げるように拡張して宙に浮いた。

「!」

 驚いて、自分の上空に浮く帽子のようなものを見た。見て気付いた。

 日陰ができている。

「おー!」

 そしてさらに気付いた。帽子が自分の動きに合わせて揺れている。

「・・・!」

 動いてみると帽子が自分の上空から離れないようにして付いてきた。

「おお~!!」


しばらく走ったりして、帽子が付いてくることで遊んでいた。全力疾走して逃げようとすると帽子は付いてこられなくなって追従をやめ、小さな駆動音と共にその場にとどまった。

 

「(・・・ああ、そうだ。雑草を取らないと。)」

 

 本来の目的を思い出し、取り敢えず帽子を回収しようとした。が、

「・・・ッ」

 手を伸ばしてみたが帽子は手の届かないところにまで上昇して浮いていた。

 あの帽子はおそらくバッテリーで動いているのだろう。

 要するに早く回収しないと、雑草取りの作業を始める前にバッテリーを無駄遣いして、残量が尽きたら途中からは日差しに晒されながら終わるまで作業をすることになる。それはかんべんだ。

「・・・・ッ」

 何度か全力でジャンプしてみたが、やはり届かない。

 そしてもう一度手を伸ばしながらジャンプしたときだった。緑色のランプが点滅していることに気付いた。一瞬バッテリーが切れそうになっているのかと思ったが、

「?」

 もう一度よく見ていると今は点滅していなかった。

「・・・・・・」

 もしかして、と思い至り、帽子に向かって片手を掲げてみた。緑色のランプが点滅した。そして3秒間ほど手を掲げたところで、

 ぼん、と帽子が元の大きなに縮小して落ちてきた。

「・・・!」

 咄嗟に落ちてきた帽子をキャッチした。

「おー!」

 なるほど、使い方はよく分かった。

 



 次は――――、と箱に入っていた道具の使い方を調べようとして、他の道具も取り出したとき、箱の底に白い紙があったことに気付いた。広げてみると、道具の使い方を記した説明書だった。帽子型の日よけの項目もあり、そこには人が帽子に手をかざして帽子の電源を切ることができるということが絵付きで記されていた。

「・・・・・・・・・」

 ・・・・・・・・・


 そんな調子で他の道具の使い方も調べていった。




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