around the home

楽 日影

応募



 アルバイトの面接はダメだった。

 今はその帰り道。

 もうここら辺一帯のアルバイトの面接はほとんど受けた気がする。




 肩を落として帰っている最中だった。

 その張り紙を見つけた。





























 アルバイトの面接を受けて帰っている最中、私は肩を落としていた。

 面接を受けただけで、まだ採用かどうかは決まっていないが、だいたい分かる。

 すでに別の誰かが受かっていたか、それとも面接中の私の態度でも悪かったのだろうか、知る由もないが・・・。とにかくダメだろう。

 まあ、家の近くにあるアルバイトの面接はほとんど受けてしまっていて、内容もあまり確認していない消去法で選んだバイトだ。面接の途中から、あまり受かりたくないと思ってもいたから、別にいいだろう。

 さあまたここからどうしよう、と考えていた時、

 私はある張り紙を見つけた。


 住宅街の中、コンクリート製の壁に貼ってあった。


 

 求人

屋外の環境管理求む。



 少し手作り感のあるその張り紙には、応募する際の連絡方法、勤務するのは応募した翌日からだということ、もらえるお金についてと、他には、一軒家を表す、手描きだろうか、少し下手なイラストが描かれてあった。


「・・・」


 連絡する手段についての項目は、スマートフォンのメッセンジャーアプリを利用して、張り紙に書いてあるIDにその旨を伝える連絡をする、というものだった。


 他に受けるアルバイトの当てもない。


 もう探すこと自体がすでに辛酸な作業だ。

 

 

 正直あまり応募しようとは思わなかった。応募してみて依頼主が嫌なやつだったら、そこで労役して報酬をもらうその間だけでも重苦だ。



 ・・・・・・とにかく応募だけしておこう


 

 おそらく個人からの求人だ。まあ、応募の張り紙からは予想のつかない突飛な労働をさせられるようであればやめればいい。

 

「・・・」

 

 スマートフォンを出してアプリを開き、連絡先であるIDを入力した。するとそのアプリ内だけで行けるトークルームのような場所にたどり着いた。

 そこには張り紙と同じ内容が書いてあり、応募するかどうか、を選択するボタンがあった。これを押すだけでいいらしい。ボタンを押してアプリを閉じた。

 スマートフォンをポケットに入れ、帰り道を歩き出し、しばらくするとスマートフォンから音が鳴った。


 通知が来たらしい。確認すると、メッセージの欄に住所が書かれてあった。

「・・・・・・・・」



 なんだかトントン拍子で決まったな・・・・・・。

 


 目下の目標であるアルバイトを探すという目的は達成したが、急に用事が出来たことに対する緊張感があった。

 なんにせよ、具体的にどんなことをするかも分かっていないが、心配しても仕方がないので、その日はそのまま帰路についた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る