貴族の心得
エレーヌはダンスを続けながらジラルドに質問した。
「では、わたくしの論文のどこがご不快でしたか?」
「わかっているだろう。我が国の貴族たちは、我が曽祖父である国王が、大戦の栄誉として爵位を与えたのだぞ?それを、相応しくない者は廃止にしろだと」
「はい。百年前の大戦は歴史で学んでおります。勿論初代ガンドル国王から賜った爵位に相応しいお方たちは賜った爵位に相応しいです。ですが、爵位をふりかざしている者は、その爵位を持つに相応しくないかと」
「つまりどのような者なのだ?」
エレーヌの言葉にジラルドはイライラしながら聞いた。エレーヌは表情を変えずに逆に質問した。
「ジラルドさま。権力とは一体なんでしょうか?」
「権力とは、支配する者たちを守り導く者だ」
「ご明察です。権力を持つ者には大いなる責任がともないます。ですが、権力とは同時に甘い麻薬のようなものにございます。自分より目下の者を支配する優越感は、この上もないものにございます」
「愚かな」
「はい、まことに。ジラルドさま、もし権力をふりかざし、目下の者を理不尽に処罰する者がいたら、いかがいたしますか?」
「勿論、俺が厳しい処罰を与える」
「それを聞いて安どいたしました」
ジラルドの返答に、エレーヌは満足げに微笑んだ。それを見たジラルドは、顔をしかめて言った。
「俺を操れると思うなよ?女狐め」
「最高の褒め言葉にございます」
エレーヌはジラルドのイヤミをものともせずに艶然と笑った。
ダンスをしているジラルドの側に、側近が走り寄って耳打ちをした。どうやらエレーヌたちは曲が終わっても踊り続けていたようだ。ジラルドはおじぎをし、エレーヌはドレスのすそを持ち礼をした。
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