ピクニック
エレーヌは首を回した。ゴキリと音が鳴る。きっと昨晩ずっとマチルダを抱っこしていたためだろう。
エレーヌは昨日、マチルダとヤンとエリクをしかった。彼らがエレーヌとの約束を破ったからだ。決してケガをするなと言ったのに、ヤンは足にケガを負ってしまった。
エレーヌは思わず彼らをきつくしかってしまった。次の日マチルダたちはえらくへこんでいた。
結果はどうあれ、エレーヌはマチルダたちのおかげでジラルド王子に出会えたのだ。エレーヌはマチルダたちを元気つけるべく、ピクニックに行く事にした。
マーサに沢山のサンドイッチを作ってもらい、りんごのジュース、スコーンも持って行く。ヤンは力持ちなので、沢山の荷物を軽々持ち上げてくれた。
ピクニックといっても、屋敷にほど近い丘の上に行くだけなのだが、ふさぎ込んでいた子供たちは笑顔ではしゃいでいた。
シートをしいてサンドイッチの入ったバスケットを開けると、歓声があがった。ハムとチーズにレタスが入ったサンドイッチ。ゆで卵とキュウリのサンドイッチ。それに、マーサの得意料理のポテトサラダがたっぷり入ったサンドイッチ。
子供たちは大喜びでサンドイッチをほおばった。エレーヌもポテトサラダのサンドイッチを食べてみる。美味しくて懐かしい。このサンドイッチはエレーヌの大好物なのだ。
エレーヌが小さい頃、よくマーサに作ってくれとねだったものだ。子供たちは食事が終わると野原を駆け回って遊びに行った。
いつもはマチルダは侍女の仕事、ヤンとエリクは下男の仕事があるが、今日はお休みにさせている。
エレーヌは子供たちの遊び回る姿を横目で見ながら本を読んでいた。するとヤンがエレーヌを呼びに来た。
「どうしたのです?ヤン」
「お嬢さま。こちらへ来てください」
エレーヌは、ヤンの小さな手に引かれて行くと、そこには可憐な白い花が咲いていた。エレーヌはヤンに微笑んで言った。
「まぁ、綺麗なお花!ヤン、教えてくれてありがとうね」
エレーヌがお礼を言うと、ヤンは嬉しそうに笑った。それを見ていたマチルダとエリクは口々に騒いで言った。
「あ、ずるい!ヤン。私だって」
「そうだぞ!俺だってお嬢さまに綺麗なお花を教えてあげられるぞ!」
マチルダとエリクは、エレーヌの手を取って、こっちに来てとねだった。エレーヌははいはいと言って、彼らについて行った。
ヤンもマチルダもエリクも、魔力を持っている。人間の手を破壊する事など造作もないだろう。だが彼らの手は、エレーヌの手を優しく握ってくれる。
彼らは魔力を持っているというだけで、人々から恨まれ迫害され、命の危機さらされた。
何故こんなにいい子たちがひどい目にあわなければいけないのだろう。エレーヌはそう考えると、いつも泣き出してしまいそうになる。
だがエレーヌは泣くわけにいかないのだ。エレーヌは彼らの主人なのだ。彼らを守るためにはエレーヌは強くならなければいけないのだ。
三時にはおやつにスコーンを食べた。マーサ特製のいちごジャムをたっぷりぬって食べる。サクサクのスコーンと、甘酸っぱいジャムがとても美味しかった。
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