魔術師と老豆・後
過日残夜4
次いで、‘誰ですか?’と
立っていたのは作業服の少年、本社の人間にしては
「あの、み、見回り遅くなっちゃって…すみません。今日は社員さん、出勤しない、って勘違いしてて…」
オドオド紡がれた台詞。もしやこの子、俺達を会社の人間と間違えているのか?
────ちょっと、
「ごめん!驚かせて!俺ら、本社のヤツとかじゃあないのよ」
「えっ?」
「ここの労働体制が劣悪ってきいて、こっそり見にきたの。いくら所在が九龍だからって労基違反過ぎるでしょ。組合から調査依頼が出てて」
まぁ嘘ですが、方便方便。起き上がった
「作業場でけっこう大変な目にあってない?見た感じ、寝泊まりしてる場所も良い環境とはいえないし…給料だって満額出てる気がしないんだけど。業務上でも生活面でも、問題があるなら教えてくれないかな」
「えっと…ほんとに社員さんじゃないんですか…?」
「そう見える?」
「良かったぁ。僕、寝過ごして見回りが遅れちゃったの怒られるかと」
安堵する少年の背中を
「ここの作業場がブラックだって証拠が欲しいんだけどさ。言える範囲でいいから話してもらえない?もちろん誰から聞いたかは内緒にしておくから」
「それは…話す、っても…改善難しいんじゃないですか。社長達がどうこうしてくれるとは思えないし」
「他の方面にアプローチしてみるよ、もっと外側。内側からは厳しいだろうしね」
「厳しいなんてもんじゃないです。文句いったら待遇が悪くなっちゃうし、ご飯とか日給抜かれるし、殴られたりもしますよ。僕らの中にも社員さんに色々意見してくれてすごい頼れる感じの人が
「その人って
俯いていた少年はパッと顔をあげる。
「
僕、仕事でも日常生活でもドンくさくって…
「
そう朗らかに言われ、
「
「でも今ここには居ないよな?どこ行っちゃったの?俺達も
「えっと…社員さんに聞いてみたんですけど、‘担当の現場が移動した’って言われて。詳しくはわかんないんです。急だったから、挨拶も出来なくて、僕…」
労働者達は苛酷な環境の割に安月給、けれど改善はされず、逃げ出す訳にもいかず、みな途方に暮れているようだ。しょげこむ少年を
────どうするかな。
「俺ら、城砦に帰って裏取りとかしてみるからさ。なるべく早く良い方向に持っていけるようにするよ。解決したら
微笑む
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