遺言と放蕩息子・前
一雁高空2
ある日の夜。
フラフラ出歩いていた
「あ?煙草やめたんじゃなかったのか?」
言いながら下駄を脱ぎ部屋に上がる
「ねぇよ。何回聞くんだよ」
「先代がな、俺に【黃刀】を任せるって遺言を残してたんだってさ。本家の人間から通達があった」
「は?」
当主は父親の才を公正に評価していた。本家や分家などは関係なく、最も
本家が財を成しているのは【黃刀】あってこそのもの、それを分家の人間に持っていかれては金も力もごっそり失ってしまう。
だが、
「断ったんだろ」
「そうだけどね」
頷く父親。じゃあいいじゃねぇかと
月が
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いくらかが経ち、跡取り問題は落ち着き、【黃刀】は本家の手中に収まるも…表立って養護することはないにしろ、村人からは父親の派閥に傾く者が出てきた。
そしてそれは、本家の人間にとっては、本当に忌々しいことだった。
「
酒瓶を振りつつ
こんなふうに物パクっててもしょうがねぇんだけどな───
だがそろそろここに居続けるのも限界ではなかろうか?先日の世継ぎ問題でますます居心地が悪くなっていた。
「出てもいいけど」
「えっ?」
予想だにしない父親の返答に、
「あら、貴重な姿」
「うるせぇなクソジジィ。つうか、どういう心境の変化だ」
「んー…俺がずっとここに居たら、お前もここに居ちゃうからね」
「そんな理由かよ」
俺の為ならやめとけと言う
「父さん‘も’?」
「お前もでしょ」
「俺行きたいって言ったことあったか?」
「無いけど、広東語勉強してるよね。しかもけっこう上手いんだって?」
「ぁんだよ、誰から聞いたんだジジィ」
「えー?町の噂。さすが母さんの子だ」
「テメェの子だよ」
父親がちょろちょろと近隣の町をウロついているのは
息子がどう過ごしているか気になるのだ。しかし直接声を掛けてきたり口を出したりしてはこず、好きにやらせてくれている。なので
「お前が話せるなら父さん楽出来ちゃうな」
「
「母さんが
「あっそ…」
フフンと自慢気な顔をする父親に
あの父親がやっと決心をしたのだ。まだ今一歩決め手に欠けるかもわからない、それでもかなりの前進。
こんな
「
「ん?」
「…何でもない。忘れちゃった」
「はぁ?ボケるには
眉間にシワを寄せる
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