遺言と放蕩息子・後
一雁高空3
翌週。
今回はちょっぴり、深追い。いくつか山向こうの比較的栄えている町と商人達の物々交換があることを知っていたからだ。
栄えていればもちろん品物の質も良い。新しい門出──いささか気が早いが──の祝いに、普段より高級な酒と煙草が欲しい。
九龍に行ったところで食い
今回も狙いすましてお目当ての品を奪取、すぐさま
暗い。明かりが消えている。
「あれ?
声を張るも返事はなく。かわりに──鉄の臭いが鼻に届いた。
奥へと歩を進める。室内が荒れている。足早に床の間へ。そこに広がっていた光景は。
「
真っ赤な、血の海。横たわる父親の姿。
駆け寄り抱き起こす。その
「
心臓が
「起きろよ!!!!」
怒鳴り声に父親は目を開いて、あぁ、
「誰にやられた!?今すぐブッ殺して…」
「いいんだよ、
「
「な訳ねぇだろ!!!!」
こんな最期で充分もクソもあるか。…最期?最期って何だ?死ぬのか、
─────そんなの決まってる。
「
「違うよ」
「嘘つけよジジィ」
追い出すだけで良かったじゃねぇか、なんならもうすぐ出て行こうとしていた。存在自体が邪魔だっつうのか?どこに居ようと?
くだらねぇ。バカみたいだ。本家も分家も【黃刀】も何もかも────。
割れそうな程に奥歯を噛みしめる
「いいから、
そこで急に言葉が途切れる。毛先をつついていた手はパタリと下に落ち、辺りは静まり返った。
お前は?続きは何だよ?
冷えた夜の風が涼やかに
しばらくして、父親の身体を床におろすと
‘待つ’ことが大事なんだ。沸騰しかけていた血液はその温度を保ったまま、しかし静かに身体を駆け巡っていた。
本家の人間は気にかけていないだろう、居るか居ないかわからないような放蕩息子…だがその印象が今は役にたつ。腰を上げ刀を手に取った。
‘復讐なんてするな’
父親の声が耳に残る。
あぁ、そうだな。だけどよく考えろよ
俺がテメェの言いつけ──────守ったことあったか?
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