決意と急上昇・前

 光輝燦然7






 あくる日から3人は、撮影中にはそれとなく時間を分担してヨウを見守ることにした。


 基本的に朝はスケジュールの調整も兼ねて燈瑩トウエイ、昼頃からは眠気が覚めてきたイツキ、夕方以降はお世話係のカムラ

 くだんの事故からあと危ない場面もなく、撮影は順調に進んでいた。



 数日が過ぎ、だんだんと五顏六色カラフルと黒社会の関係が浮き彫りに。カムラが寝る間も惜しんで情報収集にいそしんだ成果でもある。

 それを基盤に燈瑩トウエイはマフィア関係の人物のもとに足を運ぶ機会が多くなり、度々撮影から抜ける事が増えた。


 その日も昼過ぎに姿を消した燈瑩トウエイと交代しイツキヨウの警護をしていたが…夕方、カムラへとかわった際に事件は起こる。







「なにかあったの?」


 廃屋での撮影準備中。わずかにピリついている空気を感じ取ったのか、ヨウカムラの顔を下からジッと覗き込んできた。


「え?な、なんもあらへんよ」

「嘘。また燈瑩トウエイ君居ないし」


 ドキリとしたカムラは若干噛んだ。ヨウは引きさがらず、問い詰めるような顔でカムラを見続ける。


 どうして自分に聞いてくるんだとカムラは思ったが、そこにはヨウなりの理由がある。

 イツキは無表情だし燈瑩トウエイは掴み所のない笑顔、何か隠し事を聞き出そうとしたときに1番わかりやすいのは多分カムラだと判断したからで、そしてそれはおおむね正解だった。


 返答に困るカムラ。なるべくなら、ヨウに余計な心配をかけたくない。


「私だけ蚊帳かやの外ね。何か問題があったら共有するのがチームじゃないの?」


 ヨウはフゥとため息をつく。もっともな言い分。


 しかしカムラとしても隠している訳ではなく、言い出すタイミングを見計らってはいたのだ。

 このままヨウには知られずに、平和に撮影が終わってくれればそれはそれでとの考えもあったけれど…こうなってしまっては難しそうな気配がする。


 窮地に陥り周りを見回すと、マネージャーもイツキも‘カムラに任せる’といった顔をしていた。

 そんな大役任せんといて?カムラは内心で弱音を吐いたが、仕方がないと腹をくくる。


「……わかった、話す。実はな───」


 と、突然ドォン!!という大きな音がし砂埃が舞った。カムラはとっさにヨウを庇うも、身体が軽くなった様な感覚に違和感をおぼえる。


「ん?うわっ!?」


 気が付いた時には重力に任せて落下しておりカムラは叫んだ。

 マズいマズいマズい、ヨウを守らないとヨウを守らないと────…




 ドスンッ!!!!




「きゃぁっ」

「ぐぇっ」


 ヨウカムラの悲鳴が同時に響く。短い静寂。慌てて上半身を起こしたヨウが焦った声を出す。


カムラ君大丈夫!?」

「だ…だいじょぶ…俺はええから…」


 途切れ途切れに答えつつ、仰向けのカムラは自分の上に乗っかっているヨウの姿を確認。怪我は無さそう。ホッと胸を撫で下ろし首を回してあたりを見る。地下の空きスペースか?


 轟音は何かが爆発した音だったようだ。その衝撃からはヨウを守ったが、振動で耐久性の無かったらしい床が抜けてしまいカムラが下敷きになる格好で階下に着地したのだった。

 随分と落ちた気がしたが、見上げた先のもと居た場所はフロアひとつ分、ほんの数メートル上の高さ。


 良かったこんな程度で。上手く庇うことができた、何十メートルもあったら守りきれなかっただろう。そう思いカムラは安堵の息を吐く。


カムラ君、私のせいで…」

「いや…ヨウさんのせいやないよ…」


 横へと身体をズラしたヨウに起き上がるのを手伝ってもらいながらカムラは苦笑いする。

 地上にあがったのち、ヨウは大事を取って一度病院へ。カムラも怪我を診てもらってはどうかとスタッフに聞かれ、イツキと共にヨウに同行する事にした。


「ごめんカムラ、間に合わなかった」


 謝るイツキカムラは首を振り、いつも頼ってばっかやしゃーない、俺も身体張らんとと笑った。

 落ちた際に打った背中が実はめちゃくちゃズキズキしているのは内緒だ。


 爆発の直後イツキは周囲を飛び回り不審な人物がいないか調べたが、それらしき人影は見当たらず。爆弾の残骸は視認出来たので写真を撮って燈瑩トウエイに連絡を入れておいてくれたとのこと。


 病院に着き、気休めの湿布を戴いたカムラヨウの病室へと向かった。今日の撮影は中断し1日休んで明日からまた再開する運びだ。

 カムラが扉をノックするとマネージャーが顔を覗かせ、イツキに手招きされて廊下へと出て行く。入れ替わりに部屋へ入ったカムラはベッドに腰掛けるヨウの傍へと歩み寄った。

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