幽暗と生意気
愛月撤灯2
翌週。
「どうぞ」
「
今日は他の店舗でトラブルがあり【酔蝶】へ来るのが遅くなってしまっていた。オーナーに連絡を入れると、‘
金は店の金庫に入れておいてくれれば構わないと答える
「だって、会いたかったんだもの」
開いた扉の先、ベッドに横になったまま
火を点け何口かふかす。
待っていてくれと頼んだ訳じゃない。オーナーにも念をおしておいた。なのに、こう見詰められてはこちらが悪いような気がしてくる。確かに
「悪かったよ。ごめん」
軽いお手上げのポーズで謝罪する
「悪いと思うなら────こっちに来て」
視線が合わさる。
「…俺と寝ても、別に得することないよ?」
ベッドに歩み寄り端に膝をつく。
「あら。失礼ね」
「そんな理由で誘ってるんじゃないわ」
静かに唇が重なった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うふふっ、
「もー…やめてよ…」
幽暗の中、乱れたシーツの上、仰向けで悪戯に笑う
「随分吸うのね。1本貰える?」
「吸うの?」
「ちょっと前からね。貴方いつから?」
「10年前くらいかなぁ」
言いながら
「え、貴方今いくつ?そんなに年上には見えないけど」
髪をかきあげて問い掛ける
「
「17」
「俺14だよ。もうすぐ15」
大きな目をますます大きくする
冗談でしょ?と呟くその表情を見て
「アタシそんな子供に2回も断られたの?」
「子供だから
「なにそれ、生意気。今まで男に断られた試しなんて無かったのよ?」
「煙草も女も…随分早くから知ってるのね」
「ほめてるの?」
「違うわよ」
そら笑いを浮かべる
「妬いてるの」
予想外の台詞。
「
「どうして?」
「みんな本気になるってこと」
魅惑的な外見もさることながら、扇情的な演出や内面でも人を惹きつける。人気があるのは必然だ。
「けど
「んー…いつもはね…」
損か、得か。
近付いてくる人間達は皆マフィアから流れる金が欲しいかこの少しばかり良い顔が欲しいかのどちらかで、例外なんてない。
そう、例外なんてない。が。
「でも、
それを聞いた
「あははっ!貴方この仕事向いてるわね!」
「ほめてるの?」
「そうよ!」
今度は勢いよく肯定。その様子に
「
別れ際、部屋を出る背中に
「またお相手してもらえるかしら?」
「…お誘いいただければ」
扉を閉める直前、満足そうに微笑む
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その夜を境に、
そんな折、時間が空いた
「どうしたんです?」
「
礼を言うその語気は弱々しく、明らかに何か問題が起こったのであろうことを示唆していた。話してくれと促す
「
「え?理由は?」
「それがわかればいいんだが…」
突然の欠勤希望、原因は不明らしい。
店ではキャストごとにランクがついている。
けれどオーナーとしても
「じゃあ…こうしましょう」
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