偽名とお泊まり会
枯樹生華 4
「呪われてんじゃねーの、そのガキ」
開口一番で現実味のない台詞を吐く
「そうは見えないけど」
小首をかしげる
「今度【
「おー、こいこい。
「なんで俺が死ななきゃなんないのよ!呼ぶのは歓迎だけど」
そう、6人分。
【宵城】で得意客から贈答された高級酒を、金の回収がてら【東風】で呑もう…という事で
「しかしこの唐揚げうめぇな」
「台湾はら新ひく
「ほんま食い
「
煙草をふかしながら
カラッと揚がった大判の唐揚げは、ひとくちかじるとフワッと五香粉が薫り、ザクザクと食感もいい。
九龍内に新店がオープンするたびにこうしてみんなで試食会をするのはもはや恒例だ。
あまり酒を飲まない
その中から果肉のたっぷり入った白桃ティーを手に取った
「あのさ、誰かアンバーって人知ってる?」
「アンバー?」
「知らん。誰なん?」
「
「九龍の人間なのかよそいつ」
「だと思うけど、名前しか聞いてないから」
「手掛かり全然あらへんやん」
「誰か知ってるかなぁと思って」
「聞いたことねぇな」
誰にも心当たりはないようだ。そもそもどうして
そんななか、口々に意見を交わす一同の後ろで黙って聞いていた
「俺のことだね、アンバーって」
皆一斉に
「んだよ、お前
「え?そっち?」
予想外の
偽名というより、香港の人間は通常の名前に加えて別の英語名を持っていたり使用していたりする者が多い。
九龍の日常生活ではあまり使う事はないが、裏社会ではアダ名の方が都合がいい時もあるだろう。
「
「んー
「‘探してる’ってのが引っ掛かるね」
アンバーという名前は基本、顧客しか知らない。ということは
だがそうしない。考えられる可能性は2つ。
ひとつは、顧客のツテはあるが、なんらかの理由で紹介してもらえなかったから。
もうひとつは、顧客のツテは無く、
前者にしろ後者にしろ、あまり良い印象ではない。
武器に用があるのか、金に用があるのか、命に用があるのか…いずれにしろロクな理由ではないはず。
「とりあえず、
「ん?そうね…今は言わないでおいてくれると有り難いかな」
酒を
「とにかく、明日も会うんだろ?【
「え?明日もみんな【
「
「そうなの!?」
ったりめーだろ、俺の荷物見えてねぇのか?その目に張り付いてんのは牛乳瓶か?などと悪態をつき、
ビチィッと音を立てて顔面及び眼鏡にくっついた油まみれの紙に、
「やった、今日泊まりだぁ!」
「俺ベッド1個もーらい」
「おい
はしゃぐ
「2個あんだろ、俺と
「
「じゃあ
「え、いいの
「待って俺のベッドは!?」
「
「家主なのに!?」
そんな調子でギャアギャア騒いでしこたま呑んで、九龍の夜は更けていく。
結局床で睡眠をとる羽目になり首を寝違えたうえ、思いっ切り二日酔いのどうしようもない顔で
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