路地裏とケチャップ
十悪五逆3
「月餅美味しかったね。
「
夕方の九龍、
このあたりはよくドラッグの取引が行われる場所。探し回るより待ち伏せる方が効率がいいので、適当な箇所でそれらしい人物が来るのを待つことにしてから小一時間。
「わざわざ
「
「知ってる。10年くらい知り合いだよ」
「そうなの?」
聞けば、
当初
だが売り上げがあがり、形態が派遣型から店舗型にかわって、従業員も客も増え、更に売り上げがあがり、ますます従業員と客が増え、他店を買い取り、自店を増築し、あっという間に九龍最大の風俗店【宵城】を建てたということだった。
「
賭場で一文無しになるのは毎度のことだし夜の店で大盤振る舞いするのもお決まりだ。
その日も【宵城】で散々遊んだはいいが、支払いが足りなくなりブチギレた
何度やっても懲りないし、今回の件でもそういった女関係でのダラシなさから飛び火している。
困った男だ…根はいい奴ではあるんだけど。
「
誰かと落ち合う予定なのか、キョロキョロと辺りを
あいつが例のグループの1人?
「ちょっと、話掛けに行ってくるね」
その声のトーンこそ優しかったが、
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「誰か探してるの?」
陽がほとんど差さない路地裏、知り合いに挨拶するくらいの軽い口調で
と、男は答えもせずに、すぐさま銃口を突き付けてきた。
「…いきなりだね」
俺の売ったやつ…か?
消音器がついてる。この
なんにしろ、あっちこっちに好き勝手バラ撒くのはいただけない。
足音が耳に入り
1人は赤シャツ1人は虎柄の派手な衣服。見るからにアウトローな奴らだ。
「ちょっと乱暴じゃない?横流しも、売人殺しも、やり過ぎてるよ」
「うるせぇな。お前から殺っ」
言い終わる直前、パァンと音がして、虎柄は額から大量の
間を置かずグェッという呻き声が聞こえ、チャラ男が地べたに倒れていく。
残された赤シャツは何が起こったかわからなかったようだが、説明する程の事でもない。
「で、話の続きなんだけど」
そう
「あら、逃げた」
「捕まえてくる」
路地を抜け、階段を何階分も登った先、窓から窓へと飛び移ろうとした赤シャツが追ってくる
「あっ」
ガン、ガン、ゴン、グシャッ。
止める間もなく赤シャツは建物の間をぶつかりながら落ちていき…
「ごめん、ケチャップになっちゃった」
「え?死んだってこと?」
‘ケチャップ’という表現で‘内臓をブチ撒けて真っ赤になった死体’と即座に伝わるのもどうかとは思うが、とにかく伝わったので良しとする。
携帯でも見ればわかるでしょと
「あったあった。んー…メール、と…名前…内容的に客用はこっちで仲間用がこっちかな」
呟いて携帯をいじる
「仲間のほう、登録少ないね」
「新しいグループだし数が居ないんじゃない?」
電話帳にあった名前は15人足らず。これがメインのメンバーか。今3人減ったはずなので残りは10人と少しだ。
どれが
「
「【東風】が襲われたりはしないはずだから、ウロウロしてなければ…ん?」
もう一方の死体、つまり虎柄がつけていたウエストポーチから、またひとつ携帯電話が出てきた。画面の明かりがついている。
通話中だ。
「…
他の仲間と電話を繋ぎっぱなしにしていたらしい。意外に用心深かったみたいだ。
多分、一部始終が筒抜けになっていたし、ついでに
「
「んー…駄目かも知れないね」
駄目かも知れなかった。
二人で足早に【東風】へと向かう。今居るこの場所は【東風】の隣の区画のさらに端なので、戻るのにかなりの時間がかかってしまう。
現在の位置関係は定かではないが、場合によってはこっちが着くより向こうの仲間が【東風】の付近に集まる方が早いかもしれない。
襲撃でもされたら、店内がグチャグチャになるのは必至だ。
こんな事なら月餅全部食べてからくればよかった。せっかく高いやつ買ってきたのに…グチャグチャになったらもったいない。
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