煙草と茉莉花茶
十悪五逆2
「───なるほど、
そう言って、九龍ではあまり見掛けない高級な煙草をふかし笑う黒髪の男。
あのあと
テーブルを囲み、
「うん、ごめん。えっと…」
「
男、もとい
「俺は九龍で、まぁ…武器屋やってるんだけど。誰かに撃たれたって
「それで今日来てたんだ」
「そう。ここのところ豆鉄砲がよく売れてるから」
「豆鉄砲?」
「拳銃の中でも、かなり小さいやつのアダ名。
「
「んー俺だけが売ってる訳じゃないから…可能性はあるけどね」
言って、
「ていうかお前、あんなタイミングで出てきちゃ駄目でしょ。蹴り飛ばすとこだったよ」
「俺も死んだと思ったよ」
どうやらあの時、
ところが目に入った光景が、コンクリートのついた鉄パイプをブンブン振り回す
結果2人から蹴りをお見舞いされかけた上、お互いの紹介を
「みんな俺の事もっと大事にしてぇ…?」
言いながら遠い目をする
「
その質問に、二人がハモって答える。
「まぁ、それなりに」
「んーどうかなぁ?」
台詞は全然ハモってなかった。
当然、‘まぁそれなりに’が
顔を見合わせる二人に、
それから各々の話をまとめると、
全てはちょうど九龍に新しい売人グループが現れた時期と一致しているらしい。
九龍に法律は無い、けれど裏社会としてのそれなりのルールは存在する。
水面下での勢力争いは絶えないし
だが、若く血の気の多い世間知らずも勿論居る。手段を選ばず同業をねじ伏せ一気にのし上がろうと画策する奴ら。
「多分最近目立ってるその新しい売人グループなんじゃないかな、
煙を吐き出しながら言う
「なんで
その言葉に暗い顔をする
己が大物でもなんでもないのは重々承知だが、そこではなく、
そんな
「
「そうなんだ。すごいね
その言葉で明るい表情をする
「でも、派手に横取りするのは印象がよくないから。だから豆鉄砲みたいな地味で誰でも買える安い銃でやってるんでしょ」
新参の売人グループは、仕入れた豆鉄砲を客やゴロツキにチマチマ横流しし住人同士を揉めさせる方向に仕向けているようだ。その陰で、めぼしい古参の売人を殺していく。
これといって目立つ特徴の無い安拳銃、誰にだって手に入る。犯人は
「悪くはないやり方だね」
呟いて吸殻を捨てた
減っていく高級煙草を
「そもそも、なんで
「まぁ多分…綺麗なおネェちゃんからでしょうね、どこかのお店の…」
この眼鏡…こと仕事となるとそれなりに慎重なくせして、こと女関係となると急にガバガバだ。
遊びに行ったカジノや風俗で可愛い女性に捕まり、薬のひとつやふたつ
それで風俗店やカジノの帰り道に物が降ってきたり撃たれたりしていたわけだ。幸い、【
「しょーもな…」
呆れ顔をする
「
「え?」
「
いや助けてよ、と
「んー…
「俺?まぁ…そうだね、知らない所で武器を横流しされるのは困るかな」
「そっか。わかった、手伝うよ」
「えっ俺を助ける為じゃないの?」
「
「全員じゃないけどいくらかは」
「じゃあ一緒に探しに行こう」
了解、と言って席を立つ
「また俺ここで1人…?」
「【東風】まではまだ狙われてないんでしょ、外に居るより安全じゃない?」
「そうかもだけど…早く帰ってきてね…」
「え、当たり前じゃん」
その返答に
「月餅食べ終わってないもん」
微塵も
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