十悪五逆
はじめましてと銃撃戦
十悪五逆 1
「狙われてる気がする」
向かいの椅子に座ってうなだれる
「ねぇ、
「そうなんだ」
「ちゃんと聞いておくれ?」
「ここ1週間は上から物が降ってくる」
「そうなんだ」
「聞いてってば?」
「この穴見てよ。撃たれたんじゃないかと思うんだけど」
言いながら
「撃たれたのわかんなかったの?」
「音しなかったんだよ。けど、フードが揺れた気がしたから見てみたらこれよ」
カジノへ行った帰りのことらしい。
勝ち金を狙った強盗かと思って、その場はサッサと逃げ出し事なきを得たが。
「イチャモンつけられるとか物降ってくるくらいはいいけどさぁ。銃は許容範囲外」
肩を落とす
「とにかく俺は警戒するから。
「わかった。俺も注意しとく」
今日は
「夕方には帰るから。
「おう。行ってらっしゃい。────あ、
何かを思い出した
頭、守るっていってもなぁ…1人になった
無いよりはマシかと思い、仕方無しに穴あきフードをかぶってみた。
無数のパイの欠片が、髪の毛にバサバサと雪のように降り掛かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お土産の
おかげで普段より豪華な月餅が手に入った。あんこも薄皮も高級素材を使った一級品だ。
すると【東風】に近づいたあたりで、下の通路に
もちろん、九龍の住民全てを把握しているわけではないから知らないのは当たり前だ。近所の人ですら正直わからない。
けれどそういう事じゃなく…何か違和感があった。
少しウェーブがかった黒髪のオールバックで、白いシャツに黒い中華服。見た目に何も問題は無い。
違和感があるのは───雰囲気。
それと恐らく、上着の下に銃を隠している。
もしかして…この男か?
そう思った瞬間、乾いた発砲音と共に
「…当たったかな?」
予備動作もなく射撃した黒髪の男は、割れて崩れていく窓ガラスを見ながら呟く。
何かの気配はしていた。しかし人というには野性的で、どちらかといえば動物のような気配。
振り返り様に撃ったが仕留めた手応えはなかった。やっぱり犬か猫だったかな…と結論づけようとしたのも束の間。
コンクリートの塊がついた鉄パイプを振りかぶった少年が、上から飛んできた。
男が銃を撃った刹那、それを察知した
10数メートルをほんの一瞬で詰めてきた
間髪入れずに
が。
「────…!」
入ったと思った一撃が顔の真横に上げた腕でガードされていたからだ。
じゃなかったら喧嘩代行なんてやってない。
ガードされたのは久しぶりでちょっと目を丸くした。というかこの人、どうしてガードした?余裕があるならそもそも避けられたはずだ。
「いったぁ~…」
言いながら黒髪の男は、蹴りを受け止めた腕をヒラヒラさせた。そして柔らかい口調で
「ねぇ、誰に頼まれたの?ちょっと心当たりが多くてアレなんだけど」
それで
思えば何発か撃ってきた銃弾も致命傷を狙っている様子ではなかった。
「そんなにたくさん悪い事してるの?」
「えっ……うん、そうね…」
けれど、どうも敵じゃなさそうに感じる。
「誰にも頼まれてないよ、俺が気になっただけ。
「え、
「
「知ってるもなにも…」
言い終わらないうちに、何者かの影を視界の端に
ドゴッ!という音と共に、コンクリートの壁が少し剥がれ落ちる。
そしてその二人の足の下。尻餅をついたせいでどうやらギリギリで直撃を免れたらしい、冷や汗をかいた見慣れた眼鏡の男が口を開いた。
「ス、ストップ…
言うまでもなく、
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