第24話知性の星　水星 - 星をつかまえて（きた）

全く水星ほど、すぐに性質が変わってしまう惑星もありません。

月も水星と同じように変わりやすい惑星ですが、水星のそれは他とは全く異なります。その特性としてあげられることは、何にでもよくなじみ、変わり身が早く、どちらにもなることができるということです。

基本的に水星は男性格です。しかし太陽との位置関係で、男性になったり女性になったりします。ホロスコープ内で太陽から２８度以上離れることはありませんので、いつも太陽の周りをちょこちょこと走り回っています。それゆえ、すぐに逆行と順行を繰り返し、ホロスコープの中を進むスピードも日によってまちまちです。

また、セクトという概念がありますが、昼のセクトと夜のセクト、どちらにもなることのできる唯一の惑星です。

基本的に、水星が太陽のオリエンタルにある時に、男性格となり、昼のセクトの仲間になります。反対に、水星が太陽のオキシデンタルにある時に、女性格となり、夜のセクトの仲間になります。

水星は太陽との位置関係で、どのような性質も持つことのできる、ちょっと特殊な惑星なのです。

水星はコピーを示します。同じ型のものが寄せ集められたものや、商店に並べられた同じような商品を示します。それゆえコインや紙幣、麦や米の穂なども表します。

麦の穂といえば乙女のサインです。そこは水星が支配するサインです。乙女といっても水星は基本男性格ですから、麦の穂を持つ乙女の女神にはなりません。

古来より水星はヘルメスやメルクリウスといった男神と同一視されてきました。彼らは知の神々です。ゆえに水星は知性を示します。

現代の知性といえばコンピューターです。コンピューターは水星が示す領域となります。土星の項目で、土星は携帯電話やスマートフォンを示すと伝えました。それらをコンピューターだととらえると、水星となります。

つい最近、師匠がスマホや携帯は水星だと言っていたのを今になって思い出しましたが、土星の項目の文章を直せずにいます。（土星の冒頭の文書、結構気にいっているのです。またいい案が浮かんだら直すことにしましょう。）

水星は気さくで、雄弁で、相手の懐に飛び込む術（すべ）を知っています。あちこち動き回り、様々なものに変化できるその特性は、水星らしい項目といえます。

水星は文章を示します。それに関連するもの、文筆、演説なども含まれます。それらのネガティブな意味を持つものも含まれます。ゴーストライターや言葉を用いて人を陥れる詐欺師や嘘つきなども水星です。他にも泥棒、すり、競売人も含まれます。

ちなみに我々占星術師も水星で示されます。できれば天の言葉を聞き、文章を使うという意味での占星術師でありたいですね。人の悩みにつけ込むような占星術師にだけはなりたくないものです。

あまり良くない意味合いのものとして、地震もそこに含まれます。他にも大きな風や暴風、大地に吹く風自体を示します。

風のように変化の激しいものも水星です。ラベンダーの精油は、すぐに品質が変化してしまうそうですから水星です。乾燥剤も水星ですが、こちらも湿気を吸って品質が変化します。

変化しやすい金属で言うとアルミニウムです。時に鍋になったり、コインになったり、薄くペラペラな状態になってみたり、用途は様々です。水星の意味らしい金属でしょう。

何かと何かを混ぜ合わせたものも水星の領域です。違う素材同士を混ぜ合わせるカクテルやソース、様々なトッピングをお好みで乗せるピザや、様々な風土の特徴を持つ中国料理も水星です。他にも混ぜて作られるお好み焼きやパンケーキなども含まれるでしょう。

他の食べ物ですと、クルミやピスタチオなどのナッツ類も水星です。水星は脳みそを示しますが、クルミもその形状が脳にとても似ていることから、当てはめて考えられるようになったそうです。他の木の実もクルミ同様に硬い殻に覆われていますので、水星で示されるのでしょう。

ところで、今どきの占星術師は私のように計算能力に秀でていなくとも、パソコンが使えれば仕事が成り立ちます。エフェメリス（天文暦）はネット上に無料で配布されていますので、ダウンロードするだけです。ホロスコープソフトを使えば、星の位置を導きだす面倒な計算はほとんど自動で行ってくれます。パソコンさえ使うことが出来れば、現代の占星術師に必要な作業が出来てしまいます。本当に便利な世の中になりました。文明の利器に感謝です。

そういえば、今どきのパソコンには当たり前のようにＡＩが使えるアプリが搭載されています。最近よく話題になるＡＩは、人の思考作用の擬態をしますので、水星が示すものであるかもしれません。ＡＩの知恵を借りることができれば、比較的誰でもホロスコープを読むことできるようになるかもしれません。そのうちＡＩがホロスコープを作成し、診断までしてしまうような世の中が訪れるかもしれませんね。知性の塊のようなＡＩがそのようなことをしだしたら、占星術師も商売にならなくなるかもしれません。

占星術師の商売が立ち行かなくなったとしても、人の悩みは尽きないものです。いくらＡＩが答えを教えてくれても、実際の物事を行うのはその人自身です。実際に行動するまでもＡＩが行ってくれるということはあまりないと思います。人は自分の頭や心で考えることができます。いざという時に自分の力で考える、ということまで手放してはいけないと思います。その思考すら手放してしまったら、それは既に生きながら屍になっているようなものでしょう。

ちょうどこの文章を書いているときに流れてきたのは、マンウィズアミッションの2045という曲で、シンギュラリティを歌ったものでした。何かの運命かしら。人である以上は、便利なものも上手に使いつつ、ちゃんと自分自身の頭を使って考えるということをしていってほしいなと思います。